「史上最高値を更新し続ける米国株に続けとばかりに、日経平均株価は2017年11月に約26年ぶりの高値を更新しました。一部証券会社では「日経平均株価3万円乗せも」の声が上がるなど、さらなる株価上昇に期待が高まっています。
日本株の上昇をここまでけん引してきたのが、半導体製造装置の東京エレクトロンやSCREENホールディングスといった半導体関連企業の株といわれています。2017年の年初に1万1,180円だった東京エレクトロンの株価は11月初旬に2万3,875円の高値をつけ、2倍以上となりました。その背景には最新半導体メモリの爆発的な普及があります。2018年の日本株を占ううえでも、世界の半導体市況から目が離せません。
ハイテク株急騰の背景にある半導体メモリの巨大需要
半導体には「シリコンサイクル」と呼ばれる約4年周期の景気循環の波があるといわれます(上図参照)。ここ数年の半導体ブームをけん引してきたのは中国のスマートフォン産業でしたが、中国でのスマホ普及がある程度進んだことで、「いつピークアウトするか」に株式市場関係者の関心が集まっています。
とはいえ、「FANG」(ファング)という造語で呼ばれるようになったFacebook、Amazon、Netflix、Google(親会社はAlphabet)など、巨大ネット産業の旺盛なITインフラ投資は今後も終わりそうにありません。中でも、クラウドサーバーやデータセンター、企業用インフラに使われる記憶媒体が、従来のハードディスクから「フラッシュストレージ」と呼ばれる半導体メモリに置き換わるという変化が世界的に広がっています。
USBメモリやSDカードにも使われるフラッシュストレージの特徴は、ハードディスクに比べて書き換えスピードが速く、消費電力も少なく、軽量で故障が少ないことです。より高速な処理が求められる人工知能系デバイスや、モノをインターネットにつなぐIoT関連のネットワーク機器への需要も爆発的に増えています。
危機的状況の東芝を救ったのも半導体事業
経営危機に揺れた東芝も2017年度上半期の決算で営業利益2,318億円を出すことができました。その営業利益のほぼすべてを稼いだといってもいいのが、韓国サムスン電子に続き、NAND型メモリ分野で世界的なシェアを誇るストレージ&デバイスソリューション部門です。
NAND型メモリの分野では今、シリコンチップに半導体回路を立体描画していく非常に高度な3D化が進んでおり、サーバー向け製品では価格がいくら高騰しても需要が全く減らない好循環が続いています。
キーワードは「3Dメモリ、3ナノ半導体」業
メモリ3D化とともに期待されているのが、半導体回路の線幅が従来の10ナノ幅(ナノは1ミリの100万分の1)から7ナノ幅、さらには、より微細な3ナノ幅に置き換わる技術革新です。2017年12月には、台湾積体電路製造(TSMC)が3ナノ半導体の開発に2兆円もの巨額資金を投じることが報じられました。
3Dメモリ、3ナノ半導体へ大規模投資はまだ始まったばかりです。業界では新たな技術革新によって、半導体市場に従来のシリコンサイクルをはるかに上回る「スーパーサイクル」が起こっているという指摘もあります。
半導体製造装置の販売動向は株価予測に欠かせない
現在の日経平均株価がハイテク株の影響力が高い構成となっている以上、2018年は株価動向を読むうえでも半導体の市況動向からは目が離せません。
半導体関連の指標としては、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が毎月発表する半導体製造装置の販売高動向が有名です。それによると、10月度の速報値は前年比18.3%の伸びでしたが、前月比では2ヵ月連続のマイナスを記録しています。販売額自体も5月の1,707億円からジワジワと減少しているのが少し気がかりといえるでしょう。
ただ、SEAJによると、世界の半導体製造装置の17年第3四半期の販売高は143億3,000万ドルと、前期比2%増、前年同期比30%増の過去最高額を3期連続で更新しています。今後、3Dメモリや3ナノ幅の半導体製造に向けた設備投資需要が本格化することを考えると、まだまだ半導体製造装置需要の高まりに期待できそうです。そのため今後、世界的な株式市場動向のカギを握るのは、半導体関連企業だといえそうです。
(注)コラム内に記載されている個別銘柄・企業名については、あくまで参考としてあげたものであり、その銘柄または企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
(提供:フィデリティ投信)