<注目される私的利用の問題>

 職場におけるインターネット(WEB 閲覧、Eメール)の私的利用に対する、企業の問題関心が高まっている。日本労働研究機構が、上場企業と店頭登録企業に対して実施した調査では、社内で私的利用が「大きな問題となっている」と答えた割合は3.4%だが、「関心が高まりつつある」と答えた割合は31.9%に達する。私的利用を制限する規則やルールを定めている企業は40.7%であり、今後定める予定の企業は37.9%である。このように、社内でのインターネット利用は仕事目的に制限される方向にある。

 企業が私的利用を問題にするのは、主としてセキュリティー面と仕事の効率面である。私的利用による問題としてあげられた割合が高いのは、「ウイルス感染」「企業の有する情報の流出・漏洩」「仕事の効率の低下」である(図表1)。

<職場環境や仕事時間面ではそれほど問題にならないという結果も>

 だが一方で、コミュニケーションや仕事時間の面についてみると、社内におけるインターネットの私的利用がそれほど問題にならないという結果も出されている。マルチメディア振興センターがインターネットを利用している個人と企業を対象に“職場におけるインターネットの私的利用が職場環境に与える影響”を調査したところ、私的利用が職場の士気や人間関係にマイナスの影響を及ぼすことはないという結果が出ている(図表2)。さらに社員の25%、企業のインターネット管理者の15%は、むしろ職場のコミュニケーションは高まる効果があったと回答している。また、インターネット超先進国の米国における調査では、自宅と職場の両方でインターネットを利用している人は、職場で私的利用に費やす時間が週3.7 時間なのに対して、自宅で仕事のためのインターネットを利用する時間はその分を上回る週5.9 時間であった(図表3)。職場(公)における私的利用を、むしろ自宅(私)における公的利用(仕事目的でのインターネット利用)が補っていることを示している。

<一律の解のない難題>

 職場におけるインターネットの私的利用は、確かにセキュリティー面の問題を発生させる。だが一方で、私的利用が社内外のコミュニケーションを活性化させている面もみられる。仕事時間をみると、職場で私的利用している人も、それ以上の時間を自宅で仕事目的にインターネットを利用している。私的利用が結局はトータルな仕事量を増大させているという背景には、「仕事は会社でやるもの」というワークスタイル自体が変容してきていることがあるのかもしれない。インターネットの私的利用の問題は、自社の何を大切にするかによって、企業ごとに異なる対応が求められる課題のようである。(提供:第一生命経済研究所

職場におけるインターネットの私的利用
(画像=第一生命経済研究所)
職場におけるインターネットの私的利用
(画像=第一生命経済研究所)
職場におけるインターネットの私的利用
(画像=第一生命経済研究所)

研究開発室 松田 茂樹