<子どもの出生で母親退職>
わが国の女性の労働力率は、20 代後半と30 代前半で大きく落ち込み、その後回復していくという、いわゆるM字型カーブを描いていた。しかし最近は変化が見られる。その背景として、結婚しても仕事を辞めない女性や、あるいはそもそも結婚しないで就業を続けていく女性が増えたからだと考えられている。
確かに、結婚を理由に退職する女性は減少したといえる。しかし出産となると、やはり退職していく女性がまだ多いことも事実である。図表1は子どもの出産によって、就業状況がどのように変わったかを表すものである。これは、出産した母親の1年前の就業状況と、出産後の現在の就業状況を比較したものであるが、第1子が生まれる前の女性の47.2%は常勤の就業者であったものが、出産後には17.8%に激減している。1年前に常勤であった女性は出産後59.5%と6割が無職になっている。アルバイト・パートであった女性は9割が無職となった。第2子以降の場合は、子どもがいるために、出産1年前まで常勤であった人は16.9%であり、第1子出産後の常勤の割合とほぼ同じである。要するに、常勤に復帰することは困難であることを示している。
<育児休業は取れるか>
出産後も常勤で働いている母親が育児休業を取っているかについては、80.2%が取得済み、もしくは取得中・取得予定と答えている。育児休業が取れるから常勤でいられると考えられる。しかし、これは勤めている企業規模によって大きく異なっており、1~4人の零細企業ではわずか47.8%しか育児休業を取っていない。これに対して500 人以上の企業では85.8%、官公庁では94.9%と極めて高い取得率である。育児休業を取れる人は恵まれていると考えられよう。
<施策は山ほど>
1999 年末に、政府は中長期的かつ総合的な少子化対策の指針として「少子化対策推進基本方針」を策定した。これは厚生労働省を始めとして文部科学省、農林水産省等関係する省庁の施策をすべて体系化したものである。それは6つの基本方針からなり、施策数で言うと実に317 本という膨大な数にのぼっている。さらに、この中から数値目標を設定し、具体的な実施計画とされた施策が「新エンゼルプラン」である。この施策数は98 本にわたっている。これらは、働く母親にとって直接的に役立つ施策から、間接的に子育てを支援する施策など多彩である。一方、厳しいわが国の経営環境の中で、働く母親が企業の中にどれだけ受け入れられるかどうかはなかなか難しい問題ではある。政府がいくら政策を実行しても企業がそれに乗ろうとしない可能性があるからである。そういった意味で、これらの膨大な数の施策が本当に効果を持ちうるかどうかをチェックしていく必要もあるのではないだろうか。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発室 鈴木 征男