4月、新年度スタートの月である。皆さんの職場には、新入社員の配属はあったであろうか。
毎年「新人類」等の修飾語で旧世代とのギャップが語られてきた新入社員であるが、昨今その種の話題が少なくなってきた。労働市場厳しい折、新入社員も変わってきたのであろうか。
<新卒就職状況は底ばい>
図表1は、大学と高校の新卒者の求人倍率を示したものである。大卒でみると、2000 年の0.99 倍からこの3 年回復傾向にはあるが、2003 年は1.30 倍とピーク1991 年の2.86 倍の半分以下の水準である。また、従業員1,000 人以上の大企業では、0.52 倍と厳しい状況は変わっていない。高卒に至っては、求人倍率の低下傾向が継続しており、昨年に引き続き今年も0.90 倍と1倍割れの状況となっている。ピーク1992 年の3.30 倍の3分の1以下の水準だ。このように、厳しい就職環境は底ばいしている。皆さんの職場に配属された新入社員は、厳しい就職戦線をくぐりぬけた「選ばれた人」なのである。
<厳しい就労環境>
就職環境の厳しさは、現下のデフレ不況に対応した企業のリストラ等による人員削減にある。
図表2は、リクルート・ワークス研究所が行った調査に基づく正規社員の人材フロー図である。これによると、2000 年度の入職率・離職率(在職者数に対するその年度の入職者・離職者の割合)はそれぞれ5.0%、7.7%。2001 年度は、5.2%、8.5%である。それぞれの差である2.7%、3.3%が各年度における人員減少率であり、その拡大がみてとれる。さらに、離職の大半(2001 年度でみると8.5%のうちの6.5%)が定年退職以外の離職者であり、リストラによる離職の多さがうかがえる。それに対応して入職者の半数以上は中途採用者であるが、離職者に比べて非常に少ない。新卒入職率の横ばい(底ばい)は、このように多くの中途退職者によってやっと維持されているともいえる状況なのである。
<新入社員の意識>
それでは、厳しい就職戦線をくぐりぬけた新入社員の意識はどうであろうか。
図表3は、社会経済生産性本部が実施した「新入社員半年間の意識変化調査」で、「条件の良い会社があれば、さっさと移るほうが得だ」と回答した割合の推移である。入社直後の春と半年経過した秋に同じ内容を聞いたものであるが、秋のほうが5%ないし10%程度高い回答比率になっている。しかも、半数近い回答割合だ。わずか半年の間に、苦労して入社した会社に失望したということであろうか。すでに中途退職者予備軍となっている。
雇用の流動化は、今後、より進展していくであろう。しかし、企業としてはリストラだけでなく、「選ばれた人」である新入社員が夢と希望をもてる会社を目指してもらいたいものである。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発室 荒川 匡史