<経済のソフト化・サービス化>
経済のソフト化・サービス化がいわれてから久しい。この動きは、モノからサービスへという家計消費の動きから読みとれるし、また価値観にしても、「ものの豊かさ」よりも「こころの豊かさ」を求める人が圧倒的に多くなっている点からも示唆されている。これを産業の面から示したものが図表1である。ここでは1981年から2001年までの20年間で各産業で働く従業員の構成比を表している。これでみると、サービス業で働く従業者割合がこの20年間に8.8ポイントも増加したことがわかる。反対に、減少した産業が製造業である。
製造業は経済のグローバル化の動きの中で、国内で生産するよりも効率的ということで生産拠点が海外にシフトしている。現象としては製造業の雇用の減少分をサービス業が吸収していることになる。
<「その他」産業の増加>
これをより細かい産業小分類でその変化をみると興味深い動きが生じている。図表2は1996年から2001年までの5年間で、就業者が増加したものを上位10位まで示したものである。ここでみられる特徴は製造業に分類されるものが皆無であり、「電気通信に付帯するサービス業」(産業中分類では電気通信業)と「焼肉店」以外はすべてサービス業によって占められている点と、「その他の…」、あるいは「他に分類されない…」というくくられ方の産業が上位を占めている点である。後者については、従来の定義から漏れる産業の成長が著しいことを示している。ある意味で、新しい産業が雇用を創出しているといえるかもしれない。
この中で第1位を占めた「その他の医療業」の具体例をみると「看護業、派出看護婦業、介護老人保健施設等」があげられているが、第5位にも「老人福祉事業」があげられている。これらは介護保険制度に関連した業種と考えられる。介護保険制度は2000年4月にスタートしたが、看護師やホームヘルパー、ケアマネジャーといった職種が新たな雇用を生み出したといえる。
<訪問介護事業における就業形態の多様性>
この労働市場の中で、訪問介護事業について就業者の働き方とその意識をみてみよう。図表3は雇用形態別にみた介護労働の仕事を選んだ理由を表したものである。まず、対象者数の分布をみると、正社員は全体のわずか33.7%であり、他は非正社員であったり、登録型ヘルパーであったりする。つまり、働き方が多様であることを示している。その仕事を選んだ理由をみると、「介護や福祉の仕事に関心があったから」が最も高い割合であることは当然として、非正社員や登録型ヘルパーでは「介護の知識や技能を身につけたかったから」や「家事や介護の経験を活かしてできるから」などが相対的に高い割合を占めている。また、登録型ヘルパーでは「自分の都合のよい時間(日)に働けるから」が5割近くの人に選択されており、それぞれのニーズに応じて働き方を選択していることが分かる。柔軟な雇用形態が働く側のニーズに応えていると考えられる。しかし、一方では、賃金・収入、身分・雇用形態について不満と感じている人も多いという結果も得られており、産業として確立するためには、いくつかの問題点をクリアしていくことが必要なのかもしれない。(提供:第一生命経済研究所)
研究開発室 鈴木 征男