目次

はじめに
1.調査の概要
2.調査結果
(1) 住居と住居費の実態
(2) 単身生活で不便を感じていること
(3) 単身生活のメリット・デメリット
(4) トラブルの経験と不安
(5) 関心のある商品やサービス
3.まとめ
(1) 単身未婚者の居住福祉
(2) 単身未婚者と地域
(3) 単身者のライフスタイルや生活リスクに応じたサービス・商品への視点

要旨

①本稿では、20~30代の単身成人未婚者における親子関係と生活問題を探るために実施した「シングルのライフスタイルに関するアンケート調査」から、単身成人未婚者が抱える生活問題についての調査結果を報告する。

②回答者の大半は、民間賃貸住宅か、勤め先の給与住宅に住んでいる。住居費の実質的な負担額や月収に占める割合は、寮や社宅を含めて、勤め先から住居費関連の補助を受けているかどうかで大きく異なっており、補助制度を利用していない(できない)者では利用者に比べて住居費の負担が重い。

③勤め先の住居関連補助制度利用者の中には、社宅使用料や寮費負担額の値上げ、寮の売却・閉鎖などの変更があったり、変更の見込みがあると答えた者がみられた。経済不況による企業の業績悪化や、住居関連補助を含めた福利厚生制度全般に対する企業の姿勢の変化によって、単身未婚者に対する企業の住居関連補助制度にも変化が生じていると考えられる。

④回答者の多くは、1人暮らしというライフスタイルにさまざまなメリットを感じている一方で、何かあった場合の不安などデメリットも感じている。実際、病気などで寝込んで食事や身の回りの世話に困ったり、外出中鍵を紛失して家に入れなくなった経験を持つ人は少なくない。こうしたトラブルを経験したことのない人も、さまざまな不安を感じている。

⑤単身高齢者と同様に、単身未婚者にも、いざというときに頼ることのできる同居者がいない。いざというときのサポート源に乏しいという点で、単身者は生活上さまざまなリスクを抱えているといえる。未既婚や年齢層にかかわらず、単身世帯は今後増加が見込まれる層である。行政や企業は、未婚者を含めた単身生活者が抱えるさまざまな生活問題について認識し、そのライフスタイルや生活リスクに応じたサービス・商品を提供することが必要である。

キーワード:単身未婚者、生活問題、1人暮らし

はじめに

 今年1月に発表された『日本の将来推計人口(平成14年1月)』の中位推計によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)割合は2000年の68.1%から今後減少を続け、2020年には60.0%、2050年には53.6%にまで低下するという(国立社会保障・人口問題研究所:2002)。この推計によれば、これまで緩やかな増加を続けてきた日本の総人口は、2006年を境に減少し始めると見込まれている。

 このような日本全体の人口変動を大きく左右するのが、将来の出生率である。2001年における日本の合計特殊出生率は1.33(概数)であり、人口を維持するために必要な水準(人口置換水準)とされる2.08を大きく下回る状態が続いている(厚生労働省:2002)。少子化の進行が社会に与える影響は、社会の仕組みによっても左右されるため、少子化が問題であるとは一概にはいえない。しかし、少なくとも中長期を見据えた社会政策の方向性を考えていく上で、少子化という現象が与える影響を考慮することは、われわれにとって重要な課題の1つといえるだろう。

 少子化が進行している背景には、若年層における著しい晩婚化・非婚化傾向がある。近年の少子化には既婚カップルにおける出生率低下の影響も出始めているが(例えば廣嶋:1999など)、一般的には若年層の晩婚化が少子化の主な要因であるという見方がされている(厚生労働省:2001)。2000年の国勢調査によれば、20代後半の未婚率は男女とも5割を超え(男性:69.5%、女性:54.0%)、30代前半、後半と合わせていずれも5年前に比べて大幅に上昇している(総務省:2001)。

 宮本ら(1997)は現代の若者について、最終学校を卒業する時期が遅くなっただけでなく、結婚する時期が遅くなっていくことによって、青年期と成人期の間に、「ポスト青年期」という未婚期の新しい段階が出現したと指摘している。若者たちに子どもから大人への移行期ともいえるこのような新しい期間が生じたことは、生きる上での選択肢が多様化したという正の側面と同時に、イギリスなどでは教育や雇用、生活自立、各種情報へのアクセスなどの点で不利な立場に立たされる若者が増加し、同世代間での不平等が拡大しているという負の側面が懸念されてもいる(G.ジョーンズ&C.ウォーレス:1996)。

 若年層における失業率の上昇や非正規就労者の大幅増加など、日本の若者をとりまく経済的・社会的状況は、特に1990年代以降、大きく変化している。日本では最終学校を卒業して以降も未婚のまま親元に同居する若者が多く、近年では彼らのライフスタイルや親子関係について、成人して以降も家事や経済の面で親に依存しているという社会的批判も高まっている。しかし、若者の多くが親元にとどまっている背景には、若者が親元から独立できるだけの収入や安定的雇用を手にしにくいという雇用情勢の問題や、住宅などの受け皿の問題が深くかかわっている。実際、筆者が実施したアンケート調査によれば、親元に同居する若年未婚者の多くは親元を離れたいという意向をもっており、意向をもちながらも別居を実行しない背景には経済的理由が大きいことなどが明らかになっている(北村:2001)。親と同居する若年未婚者には、独立・別居が可能でありながらも選択的に親元にとどまっている層と、独立・別居を望んでいても、経済的条件が整わないために結果的に親元にとどまっている者があり、両者の生活実態や将来設計は大きく異なっていると考えられる。

 ところで、これまで親と同居する若者の存在が注目されてきた一方で、親元を離れて暮らす成人未婚者のライフスタイルや親子関係にはあまり目が向けられてこなかった(北村:2002)。近年の経済不況は、親元を離れたいという若者の独立を阻んでいる可能性があるだけでなく、親元を離れた若者たちの日常生活や経済生活にも何らかの影響を与えていると考えられる。本稿では、単身成人未婚者の親子関係と生活問題の実態を探るために実施した「シングルのライフスタイルに関するアンケート調査」から、住宅や日常生活に関する単身成人未婚者の生活問題についての調査結果を報告する。なお、この調査は若年未婚者の親元からの独立をめぐる問題を考えるために実施されたものでもある。単身成人未婚者の親子関係に関する調査結果については、北村(2002)を参照されたい。

1.調査の概要

 調査の概要は、次の通りである。なお、回答者の平均年齢は29.9歳(男性:30.5歳、女性:29.5歳)であり、主な属性は図表1に示す。

①調査対象者
 全国に居住する20~39歳の単身未婚男女260名(当社の生活調査モニター及びその知人。学生は除く)

②調査実施方法 郵送調査法

③調査実施時期 2002年1月

④有効回収数 202票(有効回収率:77.7%)

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

2.調査結果

(1) 住居と住居費の実態

 1人暮らしの若年未婚者といっても、住んでいる住居の種類や住居費の状況は、勤め先の住宅関連補助制度を利用しているかどうかで大きく異なっている。ここでは若年単身未婚者の生活問題の1つとして住居を取り上げ、その実態を考察する。

①住居の種類
 図表2は回答者が居住する住居の種類を示したものである。男女とも半数以上は「民間の賃貸住宅」に居住しており、「勤め先の給与住宅」がこれに続いている。公営賃貸住宅や持ち家に居住する者は、男女とも2割に満たない。

 年代別、就労形態別に住居の種類を比較してみると、男女とも20代より30代の方が、正社員・正職員の者より正社員・正職員以外の者の方が「民間の賃貸住宅」に居住する者が多く、「勤め先の給与住宅」に居住する者が少ない。ただし、女性では正社員・正職員の者でも、約7割が「民間の賃貸住宅」に居住している。

②住居費
 住居費の月額平均は男性が37,222円、女性が50,787円であり、女性の方が高くなっている。これは、女性に比べて男性では、住居費に関する勤め先の補助制度を利用している者の割合が高いことによるものと考えられる。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

③勤め先の住居費関連補助制度
<利用状況>
 図表3は、勤め先の住居関連補助制度の利用状況を示している。これをみると、男性では62.2%が何らかの補助制度を利用しているのに対し、女性では37.5%にとどまっている。これは、女性では正社員・正職員として就労する者の割合が男性より低いことにもよるが、正社員・正職員として就労している人だけを取り出してみても、制度の利用状況には明らかな男女差がみられる(男性82.4%、女性60.5%)。

 また、住居費や月収に占める住居費の割合は、補助制度を利用しているかどうかで男女とも大きく異なっている。非利用者の場合、月収に占める住居費の割合は男女とも3割前後を占めるのに対し、利用者では男性が12.4%、女性が19.4%にとどまっている。住居費の月平均額をみても、男性では19,156円、女性では17,463円の差がみられ、非利用者の方が負担は大きい。

<制度に関する状況変化>
 図表4は、正社員・正職員またはパート・アルバイトの者を対象に、ここ数年間で勤め先の住居関連補助制度に何らかの変化があったかどうかをたずねた結果である。男女とももっとも多いのは「特に変更はないし、変更される見込みもない」という回答で、男性の56.9%、女性の45.3%を占めている。ただし、女性の場合、「勤め先に住居関連の補助制度はない」と答えた人も42.7%を占めており、その割合は男性に比べて20ポイント以上も多くなっている。これは、女性の場合、男性に比べて正社員・正職員として就労する者が少なく、パート・アルバイトの者が多いこととも関連している。ただし、正社員・正職員に関して男女を比較しても、「勤め先に住居関連の補助制度はない」と答えた者は、男性が9.8%であるのに対し、女性では23.7%で、男性に比べて多くなっている。先にみた制度の利用状況と合わせてみると、男性に比べて女性では利用者が少ないだけでなく、勤め先に制度そのものがない者が多い傾向にあることがわかる。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 また、もう1つ注目される点は、少数ではあるが、男女とも「今のところ変更はないが、いずれ変更があるかもしれない」あるいは「変更があった」と答えた者が1~2割程度みられることである。「変更があった」と答えた人の具体的な回答内容をみると、社宅使用料や寮費負担額の値上げ、寮の閉鎖・売却などの記述がみられる。一方、「今のところ変更はないが、いずれ変更があるかもしれない」と答えた人では、その理由として、勤め先の業績悪化により給料・賞与の減額や各種手当のカットがすでに行われているから、他社との合併により福利厚生制度の変更が見込まれるから、などの回答があげられている。

 近年の経済不況の影響もあって、多くの企業では経費削減のため各種福利厚生制度の大幅な見直しを行っている。各種制度の中でも、住居関連の補助制度は多くの企業がもっとも見直しを進めようと考えている部分でもあり(生命保険文化センター:1999)、単身者向けの住居関連補助制度もその例外ではない。これらの回答は、そのような一部の企業の動きを反映するものであり、若年単身者の居住福祉に関する今後の動向を考える上で注目される結果といえるだろう。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

(2) 単身生活で不便を感じていること

 続いて、単身成人未婚者の生活問題を探るために、彼らが日常生活のどのような場面で不自由や不便さを感じているかについて考察する。

 図表5は、単身成人未婚者が日頃の生活で不便を感じていると思われる13項目をあげ、複数回答でたずねた結果である。

 図表のように、男女とももっとも多かったのは「宅配便の依頼や受け取り」であり、男性の60.8%、女性の69.5%がこの点をあげている。また、「自治体(役所)の手続きの時間帯が限られていること」「平日に洗濯物やふとんを干せないこと」「郵便局や銀行の手続きの時間帯が限られていること」などの点についても、ほとんどで半数を超えている。

 男女の差がもっとも大きい項目は「近所の人とつきあうきっかけや時間がないこと」であり、男性では24.3%があげているのに対し、女性では10.2%となっている。男性ではこの他、「ゴミ出しルールなど、地域に関する情報を得にくいこと」「地域の行事や作業に参加しにくいこと」などの点についても、女性より不便を感じている人が多い傾向にある。これら3項目のうち、「近所の人とつきあうきっかけや時間がないこと」「地域の行事や作業に参加しにくいこと」の2項目に関しては、1人暮らしの経験年数が10年以上の男性で特に多くなっており、10年未満の男性に比べていずれも20ポイント以上も高くなっている。男性の場合、周囲の人々との交流や地域行事等に関心をもちながらも、1人暮らし歴が長くなるにつれ、参加しにくくなる傾向があるのかもしれない。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 実際に、近所づきあいの状況についてたずねた結果をみると、男性では女性より近所との交流が少ない傾向にあり、なかでも1人暮らしの経験が長い男性では、その傾向がいっそう顕著である(図表6)。一方、女性の場合、1人暮らし歴が長い者の方が近所づきあいが活発であり、男性とは対照的な傾向がみられる。

(3) 単身生活のメリット・デメリット

 次に、若年単身未婚者が、1人暮らしというライフスタイルについて、どのようなメリットとデメリットを感じているのかについて考察する。

①1人暮らしのメリット
 図表7は、若年単身未婚者に、1人暮らしのメリットについて複数回答でたずねた結果である。もっとも多かったのは「時間を自由に使える」という点で、男女とも9割以上の者が支持している。若年単身未婚者にとって、1人暮らしの最大のメリットは時間の自由ということになる。また、続いて多いのは、「親に干渉されない」という点であり、男女とも7割以上の者がこの点を支持している。

 これら上位2項目の順序は男女に共通しているが、3位以下は異なっている。男性の場合、「収入を自由に使える」という点が第2位の「親に干渉されない」と並んで高く支持されている。男性でこの点を支持する者は70.3%を占め、女性に比べて20ポイント以上も多い。男性のうち、「収入を自由に使える」という点を支持している者は、1人暮らしの経験年数が長い者で特に多くなっており、経験年数が10年以上の男性では「時間を自由に使える」に次いで第2位にあげられている。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

②1人暮らしのデメリット
 一方、図表8は1人暮らしのデメリットについて、複数回答でたずねた結果である。図表のように、男女に共通してもっとも多かったのは「何かあった場合に不安である」という点で男性の63.5%、女性の74.2%を占めている。第2位は男女とも「生活費がかかる」であり、男性では55.4%、女性では66.4%があげている。男性ではこれらに加えて「家事が面倒」「親に何かあった場合のことが心配」「時間の使い方がルーズになる」の3項目で半数を超えている。

 これに対して女性の場合、上位2項目に加えて「家賃の負担が重い」という点をあげる者が半数以上を占めている。先にもみたように、男性と女性では勤め先の住宅関連補助制度の利用状況が大きく異なっており、女性では勤め先からの補助なしで民間賃貸住宅に居住する者の割合が高くなっている。生活費や家賃に負担を感じている者の割合が女性で高いことには、このような点が関連しているとみられる。なお、男性でも民間賃貸住宅に居住する者では家賃に対する負担感を感じている者が多い。民間賃貸住宅に居住する者では、男性の62.2%、女性の68.5%が「家賃の負担が重い」という点を1人暮らしのデメリットとしてあげている。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 また、男女の差がもっとも大きかった項目は「他人と生活できなくなる」であり、男性の12.2%に対し、女性では37.5%と25ポイント以上の大差がみられる。1人暮らしの経験年数別にみると、経験年数が10年以上の女性ではこの点をあげる人が特に多く、半数以上を占めている。これらの女性では、約4割が「結婚する気がしなくなる」という点をあげてもいる。加齢による影響も考えられるが、女性の場合、1人暮らしの経験が長くなると、結婚や他者との生活に対する意識が大きく変わっていくのかもしれない。

(4) トラブルの経験と不安

 続いて、対象者が単身生活を送るなかで、これまで実際にどのようなトラブルを経験したのか、あるいは日常生活においてどのようなトラブルに不安を感じているのか、などについて考察する。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

①トラブルの経験
 図表9は、1人暮らしの生活を通じて、これまでにどのようなトラブルを経験したかをたずねた結果である。男女とも経験者がもっとも多いのは「病気やけがで寝込み、食事や身のまわりの世話に困ること」であり、半数以上の男女が実際にこのような経験をしている。

 また、「戸締まりや火の始末を忘れて、外出すること」を経験した人は男性の8.1%、女性の18.8%であるが、「戸締まりや火の始末をしたかどうか、不安になって家に戻ること」については男性の43.2%、女性の45.3%が経験している。実際に戸締まりや火の始末を忘れて外出した経験をもつ人はそれほど多くはないものの、忘れたかどうか気になって確かめに戻るという経験はかなりの人に共通するものといえる。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 この他、「自宅に鍵をかけて外出し、鍵をなくして家に入れなくなること」も、2割前後の男女が実際に経験している。また、女性では「自宅にいたずら電話がかかること」を半数近くが経験しているほか、「自宅に押し売りやストーカーが来ること」「自宅までの帰り道で誰かに襲われたり、つきまとわれたりすること」「のぞきや洗濯物の盗難などの被害を受けること」などの危険な経験をした者も1~2割程度を占めている。このようなトラブルの経験者は、いずれも1人暮らしの経験年数が長い女性で多くなっている。女性の場合、1人暮らしの経験年数が長くなると、危険なトラブルに遭遇する可能性も高くなるとみられる。

②トラブルへの不安
 図表10は、さきに図表9で示したトラブルについて、「経験はないが、不安を感じている」と答えた者の割合を示している。図表のように、男女に共通して多くが不安を感じている項目と、女性で特に不安を感じている者が多い項目に分かれる結果となった。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 まず、男女に共通して不安感が高い項目は、「空き巣やピッキング、強盗などの被害を受けること」「突然の病気やけがで自宅で倒れても、誰にも気がつかれないこと」「事故や災害などの緊急時に、家族が自分の安否をなかなか確認できないこと」「戸締まりや火の始末を忘れて、外出すること」「外で財布や定期などをなくして、家に帰れなくなること」「自宅に鍵をかけて外出し、鍵をなくして家に入れなくなること」などの項目である。これら6項目では、いずれも半数以上の男女が不安を感じていると答えている。

単身成人未婚者の生活問題
(画像=第一生命経済研究所)

 これに対して、「のぞきや洗濯物の盗難などの被害を受けること」「自宅までの帰り道で誰かに襲われたり、つきまとわれたりすること」「自宅に押し売りやストーカーなどが来ること」「自宅にいたずら電話がかかること」といった項目では、不安を感じている人が女性において著しく多く、男性との差は20~50ポイント以上に達している。

(5) 関心のあるサービスや商品

 最後に、単身成人未婚者たちがどのようなサービスや商品に関心をもっているかを探るため、各種サービス・商品への関心度をみてみよう。

 図表11は、単身未婚者にとって関心が高いと思われる各種サービスをあげ、それぞれに対する関心の度合いをたずねた結果である。図をみると、①男女に共通して関心が高い項目、②女性で関心が高い項目、③男性で関心が高い項目、の大きく3つに分かれていることがわかる。

 まず、①男女に共通して関心が高い項目は、「24時間営業のスーパーマーケット」「コンビニで役所手続きができるサービス」「インターネットや電話で銀行の手続きができるサービス」「荷物預かりボックス付きの賃貸住宅」「コンビニでの宅配受け取り・預かりサービス」「コンビニでのクリーニングの受け取り・預かりサービス」などの項目である。これらのサービスや商品には、男女とも半数以上が関心をもっている。

 次に、②女性で関心が高い項目は、「空き巣・ピッキング防止のための防犯グッズ」「緊急時に警備員が駆けつける通報ベルサービス」「生存確認のための定期的な電話コールサービス」の3項目である。防犯や緊急時対策に関するこれらのサービス・商品に対しては、男性より女性の方が20~30ポイント以上も関心をもつ者が多くなっている。

 これに対して③男性で関心が高い項目は、「食堂・食事サービス付きの賃貸住宅」「洗濯・掃除サービス付きの賃貸住宅」「食事・洗濯・掃除などの家事代行サービス」の3項目である。男性単身者の場合、家事に関するサービスや商品に対する関心が高くなっており、このような傾向は1人暮らしの経験が長い男性においてより顕著である。

3.まとめ

(1) 単身未婚者の居住福祉

 調査結果からもみえてくるように、1人暮らしの若年未婚者といっても、その住生活や住居費をめぐる状況は、勤め先から住居に関する補助を受けているかどうかで大きく異なっている。単身者の家計や住居に関する統計にはいくつかの資料があるが、勤め先などから住居関連の補助を受けているかどうかに留意して分析を行っているものはあまりみられない。

 未婚者にかぎらず、単身生活にかかる諸経費を考える上で、住居費は非常に大きな比重を占める。日本の場合、単身未婚者の住居に関しては、従業員に対する福利厚生の1つとして主に企業によって賄われてきた。しかし、近年の経済不況の影響もあって、一部の企業では住居関連の補助制度のあり方を見直す動きも出てきている。少し前のデータになるが、生命保険文化センターの『平成10年度企業の福利厚生制度に関する調査』によれば、企業が見直しを進めたいと考えている福利厚生制度として「社宅・独身寮等」はもっとも多くあげられている。今回の回答者の中にも、寮や社宅の廃止、あるいは負担額の増額などの形で実際に制度が変更されたり、あるいは今後変更が見込まれると答えている者がみられた。

 従業員への福利厚生に対する企業の姿勢が変化しつつある上、若年者の雇用情勢が厳しさを増している近年の状況は、若年単身未婚者の居住福祉にもきわめて重大な影響を与えていると考えられる。仕事を得られない若者が増加している上に、勤め先の福利厚生制度の恩恵を受けやすい正規従業員という安定した職を得られる可能性が低下している。これは、若者たちが、親元から独立するための経済的基盤を得にくくなっていることを示してもいる。将来的に社会を支える若者たちが、自立して生活を営んでいくことができるような居住福祉のあり方について、議論することが必要ではないだろう か。

(2) 単身未婚者と地域

 これまで、1人暮らし高齢者の生活問題は、福祉の観点から常に検討されてきたが、若年単身未婚者の生活問題についてはそれほど問題にされてこなかった。単身成人未婚者は、親と同居する成人未婚者に比べれば少ないものの、未婚期の長期化にともなって社会全体の中ですでに一定の層を形成するだけの実数を占めている。また、若年層の未婚率が現在の水準を維持していけば、将来的には一定の割合で生涯未婚者が生じることになり、その存在が社会全体において無視できない割合を占めることになる可能性もある。

 1人暮らしというライフスタイルは、さまざまなメリットと同時に、数多くのデメリットをともなう居住形態でもある。今回の調査結果でも、時間の自由や親の干渉からの自由をはじめ、数多くのメリットがあげられた一方で、何かあった場合の不安や生活費の問題などデメリットも多くあげられていた。また、日常生活を営む上で、単身生活ゆえの不便さを感じたり、トラブルを経験したという人も少なくなかった。

 例えば、回答者のうち、男性の半数弱、女性の4割弱は近隣の人々とのつきあいがまったくない状況にあった。また、つきあいがあるといっても、その多くはあいさつをかわす程度であり、お互いに訪問しあったり、立ち話をするという関係をもつ人はきわめて少ない。女性の場合、1人暮らしの経験年数が長い人の方が近所づきあいが活発な傾向がみられるのに対し、男性の場合には、1人暮らしが長い人において、近所づきあいが乏しい傾向がより顕著であった。男性の場合、未婚期の1人暮らし生活が長期間にわたるようになると、地域から孤立し、周囲との交流をもちにくくなる傾向があるのかもしれない。

 1人暮らしの経験年数が長い男性の中には、近所とのつきあいや地域の行事に関心をもっているものの、参加するきっかけや時間がないことに不便を感じている人もみられる。今後は、地域への参入意欲をもつ若い単身未婚者が、地域情報や地域のネットワークにアクセスしやすくなるような社会環境を整えていく、という視点がもっと重視されてもよいだろう。

(3) 単身者のライフスタイルや生活リスクに応じたサービス・商品への視点

 健康、経済、犯罪などトラブルに直面するリスクは、年齢や性別による違いはあるが、すべての単身者に共通する生活問題だといえる。単身高齢者と同様に、単身未婚者にも、いざというときに頼りにできる同居者がいない。いざというときのサポート源に乏しいという点で生活上さまざまなリスクを抱えているにもかかわらず、単身未婚者に関しては、その生活リスクを補うような公的サポートがほとんど提供されていないのが現状である。

 未既婚や年齢層にかかわらず、単身世帯は今後増加が見込まれる層である。行政や企業は、未婚者を含めた単身生活者が抱えるさまざまな生活問題について認識し、そのライフスタイルや生活リスクに応じたサービス・商品を提供することが必要であろう。例えば、すでに提供されている単身高齢者向けの各種サービスを、一定の費用を負担することによって、単身未婚者も利用できるようにする、という視点などがあってもよいのではないだろうか。

 日本ではこれまで、若者世代の生活全般に対する公的支援の必要性についてあまり議論されてこなかった。しかし、少子化や非婚・晩婚化などの社会現象は、若者世代のライフスタイルの変化だけでなく、若者をとりまく社会的・経済的構造と深くかかわっている。その行方は、若年世代に対する福祉社会のあり方によっても大きく変わっていくだろう。1人暮らしの未婚の若者というと、気楽で自由な生活を楽しんでいるというイメージをもたれる場合も少なくない。また、単身未婚者の生活を社会的にサポートすることは、若者の非婚・晩婚化を助長し、少子化に拍車をかけるのではないかという見方もあるだろう。しかし、近年の経済不況や未婚期の長期化にともなって、若者たちをとりまく経済的・社会的状況は大きく変化している。単身未婚者を含めた若者たちが、現在の日常生活や、将来的な生活設計を考える上で抱えているさまざまな生活不安を取り除くような支援のあり方について、若年世代への生活福祉という視座から議論してみることも必要ではないか。(提供:第一生命経済研究所

【引用文献】
・廣嶋清志,1999,「結婚と出生の社会人口学」目黒依子・渡辺秀樹編『講座社会学2 家族』東京大学出版会,pp.21-57
・北村安樹子,2002,「成人未婚者の離家と親子関係(2)-若年単身未婚者の親子関係-」『LDIレポート』7月号
・北村安樹子,2001,「成人未婚者の離家と親子関係-親元に同居する成人未婚者のライフスタイルと親子の規範-」『LDIレポート』7月号
・国立社会保障・人口問題研究所,2002,『日本の将来推計人口(平成14年1月)』
・厚生労働省,2001,『平成13年版 厚生白書』
・ライフデザイン研究所 研究開発部,1998,「未婚単身者の人付き合い・生活満足感・結婚観」『LDIレポート』1月号
・宮本みち子・岩上真珠・山田昌弘,1997,『未婚化社会の親子関係』有斐閣
・生命保険文化センター,1999,『平成10年度 企業の福利厚生に関する調査』
・総務省,2001,『平成12年国勢調査 第一次基本集計結果(全国結果)統計表』
・Jones, G and Wallace,C.,1992,Youth ,Family and Citizenship, Open University Press.(宮本みち子監訳,徳本登訳,1996,『若者はなぜ大人になれないのか』新評論)

研究開発室   研究員 北村安樹子