高齢社会の到来というと医療や介護の問題ばかりに目がいきがちであるが、日本の人口構成を考えると、その前に団塊世代前後の層が60代に入ってくる。

 今後の10年くらいはまだまだ若く元気なこの世代がどう生きるかによって、日本の高齢社会のイメージが大きく変わってくるのではないか。

 かく言う私もそのはしりの世代であり、来年には60歳になる。この齢になると、会社の先輩、同期だけでなく最近とみに多くなった小学~大学の同窓会やら仲間の集まりがあって、いろいろな生きざまを見聞きすることになる。

 60代になった人の生きかたは、いくつかのパターンに分けられる。

 一つはまだまだ仕事という人たち。もちろん60歳になっても定年が延びていたり、関連会社で働いているという人もいるのだが、一番多いのは今までの経験を生かして新しいところで働くというパターンである。先日あった仲間の集まりでは事務経験を生かして病院の事務長とか、同業メーカーの営業担当役員に就任したという話を聞いた。なかにはエジプトへの輸出の手助けを頼まれ、カイロに渡った人もいる。就職難の時代というが、皆それぞれにがんばっている。

 第二は趣味にいそしむタイプ。この中にはあくせくせず楽しく働く、というのも入るであろう。趣味はゴルフ、山歩き、寺巡り、オペラ、旅行、囲碁、園芸等々、多彩なパターンだが、野菜づくりが高じて会社をつくる人もいる。ボランティア活動への参加も活発だ。「シニアネット」「新現役ネット」「いいコミュニティ」などいろいろなNPOに積極的に参加している人が多い。市から、ベンチャー企業を支援する経営相談員の委嘱を受け活動している人もいる。勉強しようという人も多く大学院に通う人もいる。筆者はある学会に入っているが、何とも勉強好き、議論好きの人が多いのにおどろかされる。ここは百花繚乱である。

  第三は親の介護を中心にする、という人たち。ちょうど親が80代~90代で、介護を必要とするケースが多い。これまで仕事にかまけ妻まかせだったので今後は自分が、というケースが結構多い。

 いずれにしろ、今後10年は日本に初めて「私・生活者」(暮らしがいを求める)の集団が出現するということではないか。団塊世代は人数の多さ故、これまでも社会に大きな影響を与えてきた。これら世代の人たちがいままでの高齢者と同じパターンの行動をとるとは思えず、消費、貯蓄動向等大きく変わるのではないかという気がする。

 「老後」とか「余生」ではなく、まさに第二の人生を謳歌する時期だという集団の出現は、今後の企業のあり方、経済の動向をも左右することになるであろう。

 年金やら、医療やら、将来へのリスク要因は多々あるのだが、それでも生活経済面からみると案外と活発な時代がくると思うのだがいかがであろう。

 さて今月の論文は野呂副主任研究員の「外国人犯罪に関する統計的分析と共生への課題」と宮垣研究員の「福祉サービスNPOにおける相互性の再検証」の2本。いずれも今日の問題であり、また今後10年の社会を展望したとき、重要な課題となるテーマで、まさに時宜を得た論文である。

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 なお、先にお知らせの通り、ライフデザイン研究所は10月1日付で第一生命経済研究所と統合し、新社名が第一生命経済研究所となりました。

 経済関連の研究所と生活関連の研究所の統合により、広角な視点による研究の幅、奥行きの拡大、切り口の多様化等のシナジー効果を発揮し、皆様にこれまで以上の高度で良質な情報を提供してまいりたいと存じておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 代表取締役社長
石嶺 幸男