前週末については、クラリダ・FRB副議長が「世界的な減速を示唆する証拠はある」「現在のところ政策金利はそのレンジ(=中立金利)を下回っているが、そのレンジ近辺に近づきつつある」と述べたことにより、ドル売りが強まりました。これまで、リスク回避が主導するマーケットにおいても継続的な利上げを背景に従え、堅調な推移を維持してきたドルですが、ここにきてドル売り材料が出てきたことはネガティブサプライズとして捉えられそうです。ドル円は112.60円台まで下落しており、112.80-113.20円のサポートとして考えれていた水準が、今後はレジスタンスとして意識される可能性があります。
ブレグジット交渉問題については、25日には英国を含めた28カ国で首脳会合が行われる予定です。最大の注目は英議会におけるEU離脱協定の審議になりますが、その前にメイ英首相の不信任投票が行われるかどうかが焦点となりそうです。早ければ、本日19日に直近で不信任投票が行われるかどうかが公表される見通しです。メイ英首相がEUとの間で合意した離脱協定案を巡り、EU離脱派閣僚の支持を取り付けたことを受けて、ポンドを買い戻す動きが先行しましたが、依然として議会の承認を取り付けるのは難しいと考えられています。
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において、米中の貿易をめぐる意見の対立により、1993年に首脳会議が始まって以来、初めて首脳宣言を断念しました。米中通商協議が近く行われる現状を踏まえると、トランプ大統領から楽観的なTweetがあったとしても、決して油断のできない状況にあると考えられます。また、原油については、来月の石油輸出国機構(OPEC)総会で協調減産幅の拡大検討の期待感が高まり、一時は反発する動きもありましたが、イラクの大規模油田であるキルクーク油田が輸出再開の見通しとの一部報道により、上値が抑えられました。終値は56.46ドルでしたが、60ドルを割れてからは下落基調が強く、資源国通貨の上値も同時に抑えられています。
今後の見通し
クラリダ・FRB副議長の発言後、FRBの利上げ織込み度合いは、 今年残り1回に加え、来年は前週の2回程度から既に1.5回程度に低下しており、これ以上の利上げ期待の後退には何かしらの新しい情報が必要になるとの思惑が、これまで堅調に推移したきたドルの重しになりそうです。こうなるとFRBメンバーによる金利見通し(ドットチャート)への関心が高まりそうですが、次回は12月19日と随分期間が開いてしまうため、今後はFED高官の発言には敏感に反応する可能性があります。パウエル・FRB議長が14日に米国経済が来年逆風に直面する可能性があり、その理由となり得る要因を複数指摘したとの発言をしていましたが、この発言が再度蒸し返されるようであれば、ドル売り材料として見なされそうです。
今週も、ブレグジット交渉がマーケットの中心となり、ポンド主導での動きに変わりはないものと考えらえます。11月25日の臨時EU首脳会合では英国・EU共に署名することになりそうですが、本当の焦点は英国議会にて承認されるかどうかです。ここを通過しない限りは「合意なき離脱」という結末が、急速に近づくことになります。注目点としては、議会採決、メイ英首相の不信任決議、そして内閣不信任決議です。議会採決については、DUPなど保守党以外の全ての主要政党が反対に回ると表明しています。世論調査でも圧倒的にメイ英首相の離脱協議案には反対の声が多く、野党議員の造反期待という非常に危うい状況になっています。
メイ英首相の不信任決議については、現状ではメイ英首相の対抗馬が見当たらず、例え、不信任投票を行ってもメイ英首相の続投はほぼ間違いないでしょう。この点ではそれほどの懸念はありませんが、問題は内閣不信任決議でしょうか。野党が内閣不信任を提出する可能性がありますが、ブレグジットまで日程がないため、総選挙という動きにはならないでしょう。ただ、そういった状況下になってしまうと、とてもではないですが議会承認を得るという可能性はグッと低下するでしょうし、市場も「合意なき離脱」を徐々に織り込む動きになりそうです。
ポンドを積極的に買い進める材料は、さすがに出てこない公算
EU離脱派閣僚の支持を取り付けたとの報道により、ポンドが一時上昇したことでポンドドル1.2850ドルのショートは無事成立。今週もポンドについては、話題に事欠かないでしょうし、ポジティブサプライズが出る可能性も低いと考えています。損切りについては、1.2920ドル、利食いについては1.2650ドル付近と、戦略に変更はありません。
海外時間からの流れ
ポンドばかりに注目が集まっていましたが、ここにきてクラリダ・FRB副議長発言により、ドルが久々にフォーカスされています。ただ、ドル売り材料を提供した形になっており、ショートに偏りがちなポジション状況を考えると、ドル売りにバイアスがかかるということは、一層のマーケットの膠着化を招くかもしれません。売りたい通貨が多いことを考えると、買いたい通貨がないとマーケットの活性化には繋がらないでしょう。年末前のマーケットの動意は、ドル買い材料にかかっていると考えられます。
今日の予定
本日の経済指標としては、ユーロ圏・9月経常収支(季調前)などが予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。