<勤労世代でストレスが増加>

 ストレスが健康に悪影響を及ぼすことは、改めて指摘するまでもないことである。過度のストレスは、身体の免疫機能を低下させたり、動脈硬化や性ホルモンの低下をはじめとする各種の疾患を引き起こす原因となることが指摘されている。本稿では、男性のストレスをめぐる状況を紹介したい。

 現在、勤労世代の男性ではストレスが高くなっている。厚生労働省の「保健福祉動向調査」をもとに、男性でストレスを感じている者の割合を示したものが図表1である。2000年の結果をみると、ストレスを感じている者は、25~54歳の勤労世代では約6割で他の年齢層よりも高く、なおかつ過去12年の間にこの年代のストレスは増加してきている。勤労世代の心身の健康状態の悪化が危惧される。

<過度の仕事量がストレスの原因>

 彼らのストレスの多くは、仕事にかかわることから生じている。その内訳をみると、「仕事量が多すぎる」「残業、休日出勤等の長い労働時間」「職場の人間関係」が主要なストレス源となっていることがわかる(図表2)。働き盛りである30~40代では「仕事量が多すぎる」をあげた割合が多く、20代では「残業、休日出勤等の長い労働時間」をあげた割合が多い。労働時間も仕事量の多さから生じたものであると推測すれば、勤労世代のストレスの多くが過度の<仕事量>からもたらされているとみられる。

 だが、12年前といえば、バブル真っただ中で仕事が山のようにあった時代である。その後長い不況のトンネルから抜け出せず、現在は多くの会社が仕事量が減って苦しんでいる時代である。それなのに何故、勤労世代の男性たちは、過度の仕事量にストレスを感じているのであろうか。

<会社の仕事は減るのに、勤労者の労働時間は延びるというパラドックス>

 この問いの答えは、彼らの労働時間の変化に隠されている。NHKの国民生活時間調査によると、不況と言われる近年において、勤め人の労働時間はむしろ長くなっている(図表3)。

 この背景には、新卒採用の抑制やリストラの影響があるのではないだろうか。「不況による仕事の減少以上に人が減っているとすれば、1人あたりの時間量は増加する」からである。すなわち、会社全体でみると<仕事量>は減っているが、そこで働いている社員1人当たりでみると<仕事量>は増えている。その結果、社員に過度の負荷がかかってストレスが増大するというメカニズムである。

 昨今の経済不況下において、かつグローバリゼーションによって激しくなる競争下において、企業が勝ち残っていくためには、少ない社員数で高い生産性を達成することが不可欠であろう。だがそれと同時に、社員の健康状態にも一層配慮が必要である。(提供:第一生命経済研究所

高まる仕事のストレス
(画像=第一生命経済研究所)
高まる仕事のストレス
(画像=第一生命経済研究所)
高まる仕事のストレス
(画像=第一生命経済研究所)

研究開発部 松田茂樹