目次

はじめに
I. 働く女性のゆとりと就労継続意欲―個人調査データを使用して
II. 組合の両立支援への取り組みー組合幹部調査データを使用して
(以下次号)
III. ファミリーフレンドリー得点
IV. ファミリーフレンドリー得点と組合の取り組み
V. 組合の取り組みやファミリーフレンドリー得点が個人に及ぼす影響
おわりに

要旨 ①少子化が進展している中で、育児と両立しやすい職場が求められている。両立しやすい職場のことをファミリーフレンドリーな職場と呼ぶが、そういった職場作りがなかなか進展していないのが実情である。そこで本稿では、ファミリーフレンドリーな職場作りの一助とするために、働く女性のゆとりを左右する制度や組合活動の両立しやすい職場作りへの効果を見るとともに、各職場でのファミリーフレンドリー制度の実態を把握することとした。

②今回の分析の対象としたのは、1.女性組合員の個人調査、2.各組合の両立支援への取り組み調査、3.各組合企業のファミリーフレンドリー調査の3つである。

③組合員個人への調査では、特に仕事と家庭の両立において「精神的ゆとり」と「時間的ゆとり」に焦点を当てて調査した。「精神的ゆとり」がある人は働く女性合計では2割前後しかいない。また、働く既婚女性の「精神的ゆとり」や「時間的ゆとり」を最も左右するものは、「家族や子どもが病気のときに仕事を休みやすいか」どうかである。

④「育児休業制度があるか」ないかでは効果が見られないが、「育児休業制度を利用しやすい」、「妊娠中は軽易業務に転換しやすい」職場であると「育児をしながら仕事を続けるつもり」という女性の就労継続意欲が増す。

⑤149の組合について分析したが、組合においての重要課題は「労働条件の向上」や「雇用延長」であり、「子育てとの両立条件の整備」や「改正均等法対応」などは優先順位が低い。しかし、その中でも両立条件の整備や改正均等法対応を重要課題と認識している組合ほど取り組みも盛んである。⑥組合の取り組みを最も左右するのは「組合に女性問題担当者がいるか」どうかであり、いると取り組みが熱心になる。女性問題担当者がいるのは、組合全体の4割強である。

■キーワード:ファミリーフレンドリー、両立支援、組合

はじめに

 少子化高齢化が進展しているなかで、「職業と家庭生活」の両立が大きな課題となっている。1992年に育児休業法が制定されて以来、少しずつ「職業と家庭生活」の両立の条件は整備されてきた。さらに、2001年には育児・介護休業法の改正によって、「育児のための短時間勤務制度」などの対象年齢の拡大や「子どもの看護休暇」を努力義務として取り入れようという動きもある。

 この中で特に職業と家庭生活の両立条件が整っている企業はファミリーフレンドリー企業*1と言われ、厚生労働省が表彰制度なども始めている。しかし、このような流れとは逆に、不況によって業務ノルマが増し、総務庁統計局の『就業構造基本調査』によると、週60時間以上働く30代が増加している。

 女性労働力の活躍が期待される中で、両立条件を整えることの必要性は多くの人が理解しているものの、不況下でもあり、条件整備がコスト増を招くと及び腰の企業も少なくない。また、子育て中の社員を優遇する制度を導入するほど企業の負担が増えるため、女性を企業は雇わなくなるとの議論もある。さらに、様々な両立支援制度があっても、実際はサービス残業が常態化し、制度の利用を申し出ることすら難しい職場もある。だが、少子化は社会の将来を左右する問題であり、日本的な長時間労働・滅私奉公的な職場のあり方が少子化をもたらす要因だと分析されている。長期的な視野に立った働き方の改革が社会的にも必要なのである。

 そこで、全国組織の労働組合であるゼンセン同盟*2の協力を得て、両立を支援する職場作りの一助とするために、

①実際の職場での両立支援制度の利用のしやすさと、仕事と家庭の両立の上での「ゆとり」や就労継続意欲がどう関係しているか

②組合の両立支援への取り組みの実態把握と、組合を女性の活用や両立支援活動に積極的にかかわらせている要因は何であるか

③各企業でのファミリーフレンドリー制度の実態はどうなっているのか

④ファミリーフレンドリー制度の充実や制度の利用しやすさに組合の取り組みは影響をもたらすかなどを探るために調査・分析を行った。

 まず今回の稿ではレポート(上)として、前半の①と②の問題を扱う。

I.働く女性のゆとりと就労継続意欲-個人調査データを使用して

1.働く女性のゆとり

 それでは、まず最初にゼンセン同盟の組合員個人への調査データを使用して、働く女性のゆとりや就労継続意欲の実態とともに、それらを左右する制度について探ってみよう。

(1)データ
①調査の概要
 この分析で使用する調査の実施概要は以下の通りである。

②回答者属性
 上記の回答者から女性1725人を抽出して分析した。この女性の属性に関しては図表1のようになっている。

(2)働く女性のゆとり
 今回の調査では特に、働いていく上で「精神的ゆとり」と「時間的ゆとり」があるかどうかについて聞いている。そこで、まず働く女性のゆとりの状況について見てみよう。

①精神的ゆとり
 まず図表2に「毎日仕事をしていく上で精神的にゆとりがありますか?」という質問への回答を未既婚別にまとめてみた。これをみると、「精神的ゆとりがある」人が未既婚者共に2割前後であり、逆に「精神的ゆとりがない」人が4割近くを占めていることが分 かる。

 さらに、「ゆとりがない」と答えた人のみにその理由を聞いている。結果は図表3にまとめた。これを見ると未婚女性と既婚女性ではその理由が大きく異なっていることが分かる。例えば「仕事量が多い」という回答は未婚女性が54.9%、既婚女性が31.0%であるが、一方「個人的な不安を抱えている」は未婚者ではわずか3.4%に過ぎないのに、既婚者では44.9%にも上っている。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)
ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

②時間的ゆとり
 次に時間的ゆとりについて図表4にまとめてみた。こんどは先に見た図表2の精神的ゆとりとは違って、未既婚で大きな差が出ていることが分かる。「時間的ゆとりがある」は未婚では3割近いが、既婚では2割を切っており、一方「時間的ゆとりがない」は未婚で3割弱だが、既婚では4割強となっている。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)
ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)
ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

 それでは、この「時間的ゆとり」がない理由を見てみよう。結果は図表5にまとめた。これを見ると、理由でも未既婚では大きく理由が異なっている。既婚女性の最も多い理由は「家事・育児にかかる時間が多い」で44.7%となっているが、未婚ではこの理由はわずか3.0%にすぎない。また未婚者で最も多い理由は「残業が多い」の54.7%であるが、既婚者では30.9%となっている。ここからも家事・育児の負担が既婚女性に重くかかっている状況が分かる。

2.働く女性のゆとりを左右するもの

(1)各種制度の利用のしやすさ
 まず「育児休業制度が利用しやすいか」どうかなど、女性のゆとりや就労継続意欲を左右する職場状況について未既婚別に図表6にまとめてみた。例えば、育児休業制度の「利用しやすい」職場は、既婚者で見ると28.3%で、「利用しにくい」が23.0%と、まだこの制度の定着には努力が必要なことが分かる。

(2)クロス集計
 先に見たように、未婚女性に比べ既婚女性の方がゆとりがない状況になっているが、それではどのような制度がゆとりを左右するのだろうか。そこで、特に既婚女性を取り上げ、様々なクロス集計を行い、ゆとりを左右する要因を探ったところ、「家族や子どもが病気の時に休みやすいか」どうかが、ゆとりに大きな差をもたらしていることが分かった。図表7に「家族や子どもが病気の時に休みやすいか」どうかで、既婚女性の「ゆとり」に差があるかどうかをまとめてみた。

 これをみると「休みにくい」場合に比べ、「休みやすい」ケースでは、「精神的ゆとり」がある人は15.2%から25.3%へ、「時間的ゆとり」のある人は13.5%から24.5%へと上昇することが分かる。

(3)要因分析
 このように「家族や子どもが病気のときに休みやすいか」どうかで、働く既婚女性の「精神的ゆとり」や「時間的ゆとり」が大きく異なっていることが分かったが、ゆとりを左右する要因にはこのほかにも様々なものがあると考えられる。そこで、ここではさらに詳しく、ゆとりを左右する要因を見ていくこととする。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

①被説明変数
 ゆとりがある場合を1、ない場合を0として、これを被説明変数としてプロビット分析を行い、既婚女性のゆとりを左右する要因を探ることとした。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)
ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

②説明変数
 ここでは、説明変数を6つ選んで分析してみた。説明変数は「子ども数」、「妊娠中は軽易作業に転換しやすい」、「育児休業が取りやすい」、「家族や子どもが病気のとき休みやすい」、「家事は主に妻の分担」、「育児は主に妻の分担」の6つである。

 これらの変数の影響は次のように考えられる。子ども数が多ければ、それだけ育児の手間もかかり、ゆとりはなくなるだろう。また妊娠中に軽易作業へ転換しやすい職場や育児休業の取りやすい職場であれば、それだけ子育て中の社員に配慮のある職場と考えられ、ゆとりが増すだろう。また子どもが病気の時には保育園にも預けられないため、その時に子どもの面倒をだれに頼むかが働く親にとっての大きな問題である。よって、休みやすい職場であれば、ゆとりをもって両立できるだろう。さらに、職場だけでなく家事や育児をほかに手伝ってくれる人がおらず、働く女性にのみ負担がかかれば、それだけゆとりがなくなると考えられる。

(3)分析結果
 分析の結果は図表8に示した。図表中の数値はその条件がある場合、どの程度ゆとりのある確率が増すかという数値である*3。そうすると、「家族や子どもが病気のとき休みやすい」と、精神的にゆとりのある確率が約9%増す。さらに、「妊娠中は軽易作業に転換しやすい」と精神的にゆとりのある確率が約12%増す。また既婚者では子どもの数が多いほど精神的にも時間的にもゆとりがない。また、「育児は主に妻の分担」ということで、育児の負担が重いと、精神的にゆとりのある確率が約7%減少することが示されている。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

 ここから分かることは、やはり「家族や子どもが病気のとき休みやすい」職場であると、働く既婚女性の精神的・時間的ゆとりがともに大きく増すことである。既婚女性全体で見た場合、「休みやすい職場」で働いている人は全体の34.8%と3人に1人しかいない(図表6参照)。2001年の春の国会での育児・介護休業法の改正案では、就学前の子どもが病気の際には両親のいずれかが看護休暇を取れるようにしようという「子ども看護休暇」の導入が検討されたが、この制度が働く女性にとって重要な制度であることが分かる。

3.働く女性の就労継続意欲を左右するもの

(1)クロス集計
 次に、働く女性の就労継続意欲を左右する要因について見てみた。この調査では「育児のために仕事を辞めたいですか」という質問をしている。そこで、この質問に対して「いいえ」と答えるかどうかがどのような要因で左右されるかを見てみた。これも様々なクロス集計を取ってみると、「育児休業を取りやすいか」どうかで差が出ることが分かった(育児休業制度があるかないかでは差は出ない)。そこで、「育児のために仕事を辞めたいですか」という質問に対して「いいえ」と答える人、つまり育児をしながら就労を継続する意欲のある人の比率を「育児休業を取りにくい」と「育児休業と取りやすい」場合にわけて比較してみた。そうすると、「育児休業を取りにくい」場合と「育児休業を取りやすい」場合の比較では、「いいえ」と答える人の比率は、未婚者で37.5%から57.6%に、既婚者の場合で53.9%から67.8%へと上がっている。結果は図表9に示した。

(2)要因分析
 次に、この就労継続意欲を左右する要因を詳しく分析することとした。

①被説明変数
 「育児のために仕事を辞めたいですか」という質問に対して「いいえ」と答えた場合を1、「はい」を0として、プロビット分析を行った。分析対象は女性全員である。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

②説明変数
 説明変数は「結婚している」、「精神的ゆとりがある」、「妊娠中は軽易作業に転換しやすい」、「育児休業が取りやすい」、「子どもが病気のとき休みやすい」の5つである。

 この変数の影響は次のように考えられる。結婚しながら仕事を継続しているのであれば、それだけ就労継続意欲が高いと考えられる。また精神的にゆとりのある働き方をしていれば、それだけ就労を継続する意欲も増すであろうし、「妊娠中は軽易作業に転換しやすい」「育児休業が取りやすい」のであれば、出産を乗り越えて働き続ける見込みも立つ。さらに、子どもが病気の時に休みやすい職場であれば、それだけ両立しやすく就労意欲も増すであろう。

(3)分析結果
 結果は図表10に示した。まず、既婚者と未婚者を比べると、既婚者の方が「仕事を辞めるつもりはない」確率が15%以上高い。これは育児で仕事を辞めるつもりの人は、結婚ですでに退職しているか、一方、結婚と両立するような職場ではない(育児と両立するような職場ではない)場合は、結婚で辞めている可能性もある。

 「育児休業が取りやすい」と、「育児で仕事を辞めるつもりはない」確率が約13%上がる。さらに、「妊娠中は軽易業務に転換しやすい」と仕事を継続する確率が約12%増す。このことから、育児休業制度や妊娠中の軽易業務への転換制度など、妊娠・出産前後の制度が充実して利用しやすいと、妊娠・出産で仕事を辞めずに継続する意欲が増すことが分かる。逆に言えば、育児休業が利用しにくく、妊娠中の配慮のない職場では、妊娠・出産をしながら働き続けることはできないと、働く女性が考えていることが分かる。よって、女性の就労継続意欲を高めるためにも、育児休業制度への理解、取得の奨励を職場全体で進めることが重要であると考えられる。さらに、「精神的にゆとりがある」ことが就労継続意欲に結びついていることは興味深い。「ゆとり」のある働き方が、就労意欲を高めているのであろう。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

II. 組合の両立支援への取り組み―組合幹部調査データを使用して

1.組合の両立支援への取り組み

 先に見たように、働く女性にとっては育児休業制度の利用のしやすさなどが就労継続意欲に密接に関連していることが分かった。それでは次に、職場での両立支援に組合はどのように取り組んでいるか、その実態について見てみよう。

(1)データ
 今回使用する調査データは次のとおりである。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)
ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

(2)組合の属性
 回答した組合の属性については図表11にまとめた。ゼンセン同盟は総合繊維産業、総合・化学繊維産業、衣料産業(アパレル)、流通・サービス(スーパーなど)、専門店、フード・サービス(レストランなど)、地方産業の7つの部会にわけられており、この部会別にもデータをまとめた。

 このほかに今回の調査では、組合の執行委員以上に占める女性の人数を聞いている。各組合の執行委員以上の幹部数は、最も少ない組合で3人、多いところで271人であるが、うち女性のまったくいない組合が53で全体の35.8%を占めている。

(3)組合の重点課題
 この調査では、組合の現在の重点課題について聞いた。選択肢は7つであり、それを優先順位をつけて第1位から第5位まで選んでもらった。選択肢の内容は「賃金・労働時間などの労働条件の向上」、「60歳以上の雇用延長」、「退職金制度など福利厚生の見直し」、「子育てや介護など家庭との両立を容易にする職場条件の実現」、「改正均等法などに対応した職場作り」、「パート・派遣社員などの正規従業員以外の労働条件の向上」、「その他」となっている。そして、第1位に選ばれた選択肢に5点、第2位に4点、第3位に3点、第4位に2点、第5位に1点を与え、それぞれの得点を積算して重要度得点とした。結果は図表12にまとめたが、「労働条件の向上」が674点で最も重要であり「子育てとの両立条件の整備」は246点、「改正均等法対応」が218点となっている。つまり、両立や活用支援については、優先順位は低いことが分かる。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

(4)組合側の詳しい取り組み状況
 次に組合の女性の活用や両立支援への詳しい取り組み状況について聞いた。これは11項目あり、まず質問①~④は組合が女性のニーズをくみ取る努力をしているかということ、⑤から⑦までは女性の活用への取り組み、⑧から⑪は両立支援への取り組みについて聞いている。結果は図表13のようになった。

 例えば、女性のニーズをくみ取る活動であるが、「②組合活動への女性の参加の推進活動」は「以前から取り組んできた」は72%と高いが、「④女性のニーズ調査」になると「以前から取り組んできた」のは24%に減り、「取り組む予定はない」が14%にもなる。さらに「①組合の女性執行委員の特別枠設定や女性代議員比率などの数値目標設定」になると、「取り組む予定はない」が19%と増える。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

(5)組合幹部の両立支援施策への評価
 ここでは、組合幹部がどのように両立支援施策を評価しているかを聞いてみた。

 選択肢は6つで、(両立支援策を充実させることは)「①育児や介護を担わない他の従業員の負担が増す」という否定的な意見や、逆に「⑤従業員全体にとって多様な働き方の選択肢を増やす」という肯定的な意見に対して、「そう思う」から「そう思わない」までの4段階で答えてもらった。結果は図表14のようになっており、例えば、「①育児や介護を担わない他の従業員の負担が増す」に対しては、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が合わせて6割近くある一方で、「⑤従業員全体にとって多様な働き方の選択肢を増やす」にも合わせて9割の支持がある。これをみると一人の組合幹部の中でも、両立支援策への賛否両論が入り混じっていることが分かる。

2.組合の取り組みを左右する要因分析

 このように組合の両立支援への取り組みだけでなく、幹部の両立支援制度の充実に対する評価も肯定的なものと否定的なものがあるなど様々である。それでは、どのような要因があれば組合の取り組みが熱心になるのかを探るために、組合の取り組みを左右する要因を分析してみよう。

(1)被説明変数
 組合の取り組み状況の数値化を試みた。図表13でみた11項目の組合の取り組みについて、「以前から取り組んできた」を4点、「最近取り組み始めた」を3点、「今後取り組む予定」を2点、「取り組むかどうかを検討中」を1点、「取り組む予定はない」を0点にして、それぞれの組合ごとに11項目の点数を加算した。そうすると満点では44点となり、得点は図表15のように平均値は27.67点となる。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

(2)説明変数
 説明変数として以下の6つを投入した。

①「女性問題担当者が(組合に)いるか」どうかの変数であり、いれば1、いなければ0のダミー変数として加工して投入した。

②組合の両立・活用重要課題得点。これは、先のII-(3)でみた、組合の重点課題の中から「子育てとの両立条件の整備」と「改正均等法対応」の課題を何位に選んでいるかで各組合の点数を試算したものである。先と同じように、これらの選択肢を1位に選んでいれば5点、第2位なら4点、第3位なら3点と順位が下がるに応じて得点配分を小さくして、2つの回答の点数を足したものである。

③企業規模でこれは5段階に分かれており、「100人未満=1」、「100人~500人未満=2」、「500人~1000人未満=3」、「1000人~5000人未満=4」、「5000人以上=5」と5つの数値を当てはめた。

④女性管理職比率は「1.女性管理職はいない」「2.女性管理職比率5%未満」「3.女性管理職比率5%以上」の3段階に分かれており、数値が多いほど比率が高い。

⑤女性組合員比率で、これは6段階に分かれている。「1割未満=1」、「1割~2割未満=2」、「2割~3割未満=3」、「3割~4割未満=4」、「4割~5割未満=5」、「5割以上=6」とした。

⑥幹部の両立支援への意識得点。これは両立支援に対して幹部がどのように評価しているかを得点化した。得点化は次のように行った。まず「育児や介護を担わない他の従業員の負担が増す」といった否定的な選択肢に関しては、「そう思う」を0点、「どちらかといえばそう思う」を1点、「どちらかといえばそう思わない」を2点、「そう思わない」を3点として、それを積算した。逆に肯定的な選択肢である「将来の労働者不足への対応として不可欠」といったものに関しては、「そう思う」を3点、「どちらかといえばそう思う」を2点、「どちらかといえばそう思わない」を1点、「そう思わない」を0点として積算した。つまり、肯定的な評価をしている人ほど得点が高くなるようになっている。18点満点であり、点数が高いほど両立支援政策を肯定的に評価しているということになる。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

 これらの変数の及ぼす影響は次のように考えることができる。女性問題担当者が(組合に)いれば取り組みも盛んになるであろうし、両立条件の整備を重要ととらえている組合であれば、それだけ両立条件の整備に取り組むだろう。企業規模が大きいほど、両立支援に取り組む余裕があると考えられる。一方、女性管理職比率が高いということは女性が重要な地位を占めているということであり、また女性組合員比率が高いということは組合においてそれだけ女性が重視されるであろうから、両立支援への取り組みが強まると考えられる。さらに組合幹部が両立支援制度の充実を積極的に評価していれば、それだけ組合の両立支援への取り組みも強まると考えられる。

 また、今回の分析に使用した変数の基本統計量は図表15にまとめた。

ファミリーフレンドリー企業と組合の役割(上)
(画像=第一生命経済研究所)

(3)分析
 組合の両立への取り組み得点を被説明変数とした重回帰分析の結果は図表16のようになった。まず「女性問題担当者がいるか」では、いる場合では、取り組み得点が6点以上あがることや、「組合の両立・活用重要課題得点」と「企業規模」も効いており、企業規模が大きくなると取り組みが強まることが分かる。さらに、「幹部の両立支援への意識」が肯定的であると取り組みも強まることが分かる。一方、女性管理職比率や女性組合員比率は効いていない。つまり管理職や組合員に女性が多くても、組合の取り組みには影響がないということになる。どうしてそうなるのかは、もう少し検討が必要だろう。また「組合の両立・活用重要課題得点」に関しては、やはり両立支援が重要だと考えているところほど、取り組みが熱心なことが分かる。

(4)分析結果のまとめ
 以上から組合の取り組みを左右するのは、「組合に女性問題担当者がいるか」どうかということである。これは大人数である必要はなく、まず女性問題を専門に担当する組合員が一人いることで取り組みがあがると考えられる。ゼンセン同盟でのヒアリング調査によっても、それが確認されている。つまり、II-(3)での組合の重要課題得点でみたように、一般的に組合にとって重要なのは労働条件の向上などであり、「両立条件の整備」や「改正均等法対応」の優先順位は低い。そのため、女性問題担当者がいなければ両立条件の整備は常に後回しにされてしまう。だが、一人でも担当者がいれば、組合の課題の優先順位にかかわりなく、自分の仕事として女性問題に対応するため、組合の取り組みが強まるという。そこで、ゼンセン同盟では各組合に対して、女性問題担当者を組合内に一人でもおくことを働きかけているという。また、組合が両立支援を重要課題としてとらえているほど取り組んでいることも分かった。

 さらに「企業規模」が大きい方が取り組みが熱心であり、規模が大きい方が両立支援に取り組む余裕があると考えられる。だが、この企業規模と取り組みの関係についてはもう少し検証が必要であろう。

 「幹部の両立支援への意識」も、組合の取り組みに影響を与えていることが確認された。両立支援制度の充実が職場にハンディを与えると否定的な考えを幹部がもっているとあまり取り組みには熱心でなく、制度整備を肯定的にとらえていると、取り組みが熱心になることが分かる。こう考えると、両立支援制度の整備のためには、組合幹部の意識づけも必要だということになる。(提供:第一生命経済研究所

【注釈】
*1  ファミリーフレンドリー企業とは旧労働省が1999年ごろから積極的に使い出した言葉で、「職場と家庭の両立」といった場合に、家庭にやさしく、両立しやすい職場条件を整えている企業という意味で使われている。さらにファミリーフレンドリー企業として4つの条件を挙げている。①法律を上回る基準の育児・介護休業の規定があり、実際に利用されている②仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方(短縮勤務制度など)が用意されており、実際に利用されている③仕事と家庭の両立を可能にするその他の制度(事業所内保育所など)があり、実際に利用されている④仕事と家庭の両立をしやすい企業文化であること、の4つである。

*2  今回調査協力を得たゼンセン同盟は、繊維産業を中心としてスタートし、現在7つの産業別部会を擁する産業別全国組織であり、連合に属している。全国47都道府県に支部があり、組合員数は約60万人。7つの部会は総合繊維部会、総合・化学繊維部会、衣料産業部会、流通・サービス部会、専門店部会、フード・サービス部会、地方産業部会となっている。さらに、ゼンセン同盟の女性組合員比率は44%と、自治労や商業労連、生保労連などに次いで高く、女性組合員の実数は自治労に次いで多い。

*3  この図表中の数値はプロビット係数ではなく、変化率に試算しなおしてある。

 参考文献は(下)に掲載予定

研究開発部 主任研究員 前田正子