2001年1月1日から介護休業制度における介護休業給付金が、休業前賃金の25%から40%に引き上げられた。介護休業制度とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1995年6月に成立)に基づき、家族の介護を行うために休業することができるというもので、1999年4月からすべての企業に義務づけられている。本稿では、このような介護休業制度の利用状況を概観し、今後の課題について考えてみよう。

介護休業制度の低い利用率と高い利用意向

 労働省「平成11年度女性雇用管理基本調査」(1999年11月調査)によれば、介護休業取得者の割合は、1999年4月からの半年間で0.06%である(図表1)。事業所の規模別に見ると、小規模事業所の方が取得割合が若干高い。男女別では、介護休業取得者のうち、女性は90.7%、男性は9.3%であり、圧倒的に女性の方が多い。男性の場合、休業しなくても、配偶者等にまかせることができるためであろう。しかし、未婚率の上昇や、兄弟姉妹数の減少等により、今後は「人まかせ」にはできにくい人が多くなると見込まれる。

 一方、総理府の「男女共同参画社会に関する世論調査」をみると、男性が介護休業を取ることについて、「取った方がよい」(「積極的に取った方がよい」と「どちらかといえば取った方がよい」の合計)と回答した割合は、男性でも77.0%(女性83.1%)に及んでいる(図表2)。このように、多くの人々がその価値を認めている介護休業制度を、もっと利用しやすくするためにはどうしたらいいのか。次にその改善点について考えてみよう。

介護休業制度の要改善点

 まず、介護休業制度の利用率の低さは、制度の内容に原因があると考えられる。冒頭で述べたように、休業前賃金の40%の給付金が休業期間中に支給されるとはいえ、社会保険料の自己負担分は支払わなくてはいけない。実際に、制度利用者からは、介護休業制度の改善点として、休業期間中の「経済的援助の増額」や「社会保険料の免除」といった経済面の指摘が多い(図表3)。

 さらに、育児と違って、介護の場合には先の見通しが立ちにくい。にもかかわらず、介護休業制度では、休業期間の上限が3カ月まで、しかも対象家族1人につき1回と限定されており、休業するタイミングに注意を要する。まさに介護の実情からかけ離れており、これでは安心して介護ができないといった不満の声もある。したがって、介護休業制度を利用しやすいものにするためには、経済的支援の拡大に加え、休業期間や取得機会において柔軟に対応できるような制度に改善していくことが必要であるといえる。

 以上のように、多くの人が安心して介護ができるよう、介護休業制度の改善が望まれているが、当然ながら介護サービス自体の充実や、円滑に復帰できるような職場環境づくりも求められよう。このようなことから、介護休業制度をさらに利用しやすいものにするためには、多角的に対応策を講じる必要もあると思われる。(提供:第一生命経済研究所

介護休業制度を利用しやすくするために
(画像=第一生命経済研究所)
介護休業制度を利用しやすくするために
(画像=第一生命経済研究所)
介護休業制度を利用しやすくするために
(画像=第一生命経済研究所)

研究開発部 的場康子