前日については、前週末のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において、米中の貿易をめぐる意見の対立により、1993年に首脳会議が始まって以来、初めて首脳宣言を断念、この影響が思いのほか強く、今月末に控えている米中首脳会議への不安が高まっていること、さらには、実需面でもドル売りに傾きやすい地合いになっているため、ドル円は上値を抑えられ、一時112.422円まで下値を拡大しました。

今週は、22日に米国のサンクスギビングが控えており、この祝日前は市場参加者が減少し、ボラティリティが低下するのが通例です。その中で、唯一買い安心感のあったドルの上値が抑えられている状況は、よりマーケットの鈍化を招く結果になっています。ウィリアムズ・NY連銀総裁が「金利はまだ非常に低い」との見解を示し、今後も緩やかな利上げを支持したものの、やはりパウエル・FRB議長やクラリダ・FRB副議長のハト派よりのスタンスを崩すことはできませんでした。コアレンジと考えられていた112.80-113.20円の水準が、引き続き上値抵抗として意識されそうです。

注目のブレグジット交渉については、メイ英首相がブレグジット延長について否定的な発言をしたとの報道により、ポンドドルは1.2870ドル付近から1.2800ドル割れの水準まで急落する場面がありました。ただ、本日の東京時間にはEU離脱強硬派が強く反対している「バックストップ」案をメイ英首相が一旦破棄するのではという観測記事が流れ、1.2860ドル付近まで買い戻されています。ポンドについては、25日の英国を含めた28カ国での首脳会合までは、ヘッドラインに一喜一憂する動きが継続しそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ドルの材料がようやく出てきているものの、やはりマーケットの中心は引き続きポンドにあると考えられます。25日のEU首脳会議前に、現状はメイ英首相が袋小路に迷い込んでいる状況になっています。保守党内部から信任投票を実施するように迫られているとのことですが、実施のためには48人の賛成が必要であり、現時点では信任投票の実施に賛成しているのは42名になっている模様です。党首選が実施されるかどうかについては、25日までが極めて重要であり、保守党の信任投票が実施されるとすれば、かなり早い段階で実施され、もしメイ英首相が保守党党首の座を失うようであれば、完全にブレグジットの行方は不透明となり、ポンドは急落することが想定されます。

ポンド同様に、上値の重さが意識されているのがユーロです。トリア伊財務相が再度予算案を変更しない意向を示したため、来年度予算案を巡り、コンテ伊首相が制裁回避のために欧州委員会と取り組む姿勢を示し、民営化や公共投資などについては一部修正、不動産の売却などの歳入拡大策を提示したプラス面の影響を一気に掻き消しています。EU側は制裁手続きの発動も視野にイタリアへの対応を見極める方向にあると市場が織り込むようであれば、更にユーロ売りに拍車がかかりそうです。また、どんなにユーロ悪化を織り込んでも国内総生産(GDP)比0.5%相当の制裁金を科すようなことがあれば、ユーロは再度急落する見通しです。

株式市場においては、受注減少が伝わったアップルが大きく売られており、ハイテク株が下落を主導しています。本日においても、カルロス・ゴーン氏の逮捕を受けて日産自動車と三菱自動車が大幅安になっており、日経平均株価の下落を牽引しています。前日の欧州市場では、ルノー株が急落していることもあり、堅調な株価がリスクオンを演出していたものの、雲行きが怪しくなってきており、リスクオン一辺倒の動きは一旦小休止になりそうです。

一旦は膠着も、ポンドショートの見方は変わらず

ポンドドルについては、一旦持ち値付近である1.2850ドル付近で膠着状態です。25日のEU首脳会議の動向を見極めたい考えと信任投票があるのかどうかを見極めたい考えが交錯していることもあり、目先は様子見になりそうですが、損切りについては、1.2920ドル、利食いについては1.2650ドル付近と、戦略に変更はありません。

海外時間からの流れ

ブレグジット交渉に揺れるポンド、EU側がイタリアに制裁があるのかどうかが注目のユーロ、そして米中首脳会談が焦点となるドルと、主要通貨のイベントまで時間があることで、株価動向が再度クローズアップされています。基本的にネガティブ要因が株価を牽引している以上、クロス円などは下落方向への警戒が必要になりそうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、米・10月耐久財受注、米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)、米・10月景気先行指数などが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。