最近、大手保険会社が次々に参入している経営者向け「節税保険」。大きなメリットが見込めるため、短期間で契約者数を伸ばしているといわれます。しかし、2018年の春から夏にかけて金融庁がこの保険の実態を調査。保険業界を牽制する意味合いがあるのではと注目されています。この保険の何が問題なのかを解説します。

金融庁の牽制に対する世間の反応は?

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(写真=TeodorLazarev/Shutterstock.com)

まず、経営者向け節税保険を取り巻く、2018年春から夏にかけての状況を整理します。今、「節税保険 金融庁」のキーワードで検索すると、経営者向けの節税保険を金融庁が問題視していることを報じる数多くのニュースにヒットします。

例えば、節税効果をアピールする経営者向け保険に対して金融庁が実態調査に乗り出し、業界を牽制している可能性があることを、2度に渡って報じたメディアがありました。

それに対してネットのニュースメディアで、多くの有識者やブロガー、著名人が反応して大きな注目を集めました。その中には、商品への批判的な意見、企業と当局のいたちごっこを指摘する意見、正当な保険商品であるとする擁護の意見などさまざまなコメントが寄せられています。

問題視されているといわれる保険の内容を詳しく見てみると……

今回の報道で金融庁が問題視しているとされる保険商品の主な商品特徴は次の通りです。

  1. 払い込んだ保険料の全額、または2分の1の額を損金算入(経費)にできる
  2. 死亡保険金を事業保障資金等の財源にできる
  3. 経営者が退職するときに解約返戻金を退職金にあてられる
  4. 一時的に資金が必要になった時、貸付制度が使える

この保険に加入せず、会社の利益を「法人税」として払った場合と、保険に加入して「保険料」として払った場合を比べると、後者の方が得になるといわれます(ただし、2年目以降)。さらに保険に加入することで、上記の2〜4の項目のように経営安定にプラスになる面もあります。

ちなみに、今回問題視されている保険商品はこれに止まらず、競合他社の類似商品も対象と指摘する声もあります。

これまでにも似た保険商品はあったのになぜ問題に?

しかし、今回の金融庁の動きを見て不思議に感じる方もいるのではないでしょうか。なぜなら、死亡定期保険の保険料を払い込んで損金算入することで利益を圧縮し、その後、高い率の返戻金によって節税効果を高める保険商品は昔から存在するからです。

それにも関わらず、なぜ今回の保険商品は問題視されたのでしょうか?

理由の一つに、先行企業と競合他社の間での競争の激化が挙げられます。保険業界全体でこの分野の保険商品の新規顧客開拓が過熱し、万が一の保障という本来の保険の目的ではなく、節税商品の色合いが濃くなっていたことから、金融庁が牽制したという見方もあります。

教訓:長期契約する節税商品の契約は慎重に

今回の出来事から得られる教訓は、「将来、環境が変わることを意識しながら節税対策を行うのが望ましい」となるでしょうか。現時点で節税対策になったとしても、将来もその環境が変わらないとは限りません。

今回の件では、金融庁から具体的な通達は出ていませんが、過去には保険料の損金算入を厳格化する通達が出ています。保険商品に限らず、長期契約をすることによって節税効果が得られる商品は、長期的に環境が変わる可能性がないかを熟慮して加入すべきでしょう。(提供:Wealth Lounge


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