みなさんこんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

平成27年から相続税の基礎控除が改正され、富裕層ではなくマイホームを保有していて若干の金融資産を所有しているだけのご家庭であっても相続税がかかる可能性が高くなってきました。では、この相続税申告は自分でやるべきでしょうか?それとも専門家である税理士に頼むべきでしょうか?

今回は、相続税申告の実態について解説したいと思います。

1.データ

相続税の申告件数は、平成26年度まで年間約7万件程度です。国税庁の統計データで56,239件(平成26年度)というデータがありますが、こちらは課税件数です。申告件数は特例を使って相続税がゼロになった人も含みます。課税件数はあくまで相続税を納税した件数となります。この課税件数は毎年発表されていますが、申告件数は発表されていません。国税庁が書面添付の割合を調査した時のデータとして見つけたものとなります。

なお、相続税が改正された27年度の件数はいつ発表されるのでしょうか?

予定では今年の年末と言われています。相続税ビジネスをしている人にとっては非常に興味深い発表となるでしょう。なお、発表されるのはあくまで課税件数であり、申告件数ではありませんのでご注意ください。

さて、この申告件数7万件に対して税理士に依頼している割合はどのくらいでしょうか?

約90%で、ほとんどの人が税理士に依頼しています。約10%は税理士に頼まずに、自分で申告しています。

2.自分でやるのに向いている案件

① 案件の状況

自分でやるのに向いている案件は、下記の要件を満たすような場合に限ります。

□ 小規模宅地の特例、配偶者の税額軽減などの各種特例により相続税がゼロになる場合

名義預金や生前贈与など過去に被相続人と親族の間で資金移動などがない場合

□ 相続人間で争いになることが絶対にない場合や相続人が1人の場合

まず、納税が発生するような案件は、税理士に頼んで少しでも相続税を下げてもらったほうがいいでしょう。相続税に詳しくない人が自分で申告をしてしまうと税理士報酬以上に過大に申告して逆に損をしてしまうこともあるからです。

次に、名義預金や生前贈与がある、又は、あるかもしれないという案件は、自分で相続税申告をすることはやめておいたほうが良いでしょう。数年後の税務調査で税務署から指摘をされて数十万円、数百万円もの余計な税金がかかることもあるためです。このような案件の場合には、最初から税理士に頼んで税務署に指摘されてない申告書を作ってももらいましょう。

最後に、相続人間で争いになる恐れがあるような案件は自分でやらずに、公明正大に第三者である専門家に依頼しちゃったほうが良いです。争いになっている、又は争いになりそうな案件で、相続人の1人が財産目録を作ろうものなら他の相続人が財産を隠しているのではないかと疑われたりしますので、第三者を入れたほうがスムーズに終わります。

② 相続人の状況

相続人の状況によっても自分でやるのに向いている場合、向いてない場合があります。
自分でやるのに向いている相続人は下記の要件を満たす人です。

□ 平日昼間に時間が取れる人

□ 相続税の基礎知識がある程度ある人

□ 数字が苦手ではない人

まず、相続税申告手続きは、資料収集や相談窓口とも平日昼間にしか開いていない機関が多いです。たとえば、残高証明書は銀行で取得しますが、平日夜間や土日はやっていません。また、資料を揃えて、いざ、財産の評価をしようとした時に、疑問が生じたとします。土地の評価などは非常にややこしいので建築指導課や都市計画課などの役所に確認しないといけないことも出てきます。この役所は平日昼間しかやっていません。さらに、相続税の申告書を作成する上で税務署に確認したいことも必ずでてきますが、こちらも平日のみの営業です。このように、自分で相続税申告書を作成する場合には、何日も潰すことになりますので、平日昼間に動けるということが必須となります。

次に、相続税は所得税など毎年計算する税目と異なり、一生に1回や2回程度しか身近に感じる機会はありません。また、他の税金に比べて計算が非常にややこしいです。したがって、ある程度相続税の素養がないと正確な申告書は作れないでしょう。亡くなってから10ヶ月というのは長いようであっという間です。自分でやろうとしている人は、相続が発生する前から相続税の勉強をしておいたいいでしょう。

最後に、相続税はあくまで税金のため数字が必ず絡んできます。したがって、数字が苦手な人はやめておいたほうがいいでしょう。

3.自分でやる場合の方法

上記2の要件を全て満たした人は、税理士に頼まずに、自分でやるべきです。

その場合には、まず、資料を収集します。戸籍、残高証明、不動産評価に関する資料等です。それぞれの取得先は、下記の通りです。

戸籍:市区町村役場

残高証明:銀行、証券会社等

路線価:インターネット(国税庁HP

全部事項証明書・公図・地積測量図:法務局

固定資産税評価証明書:市区町村役場(固定資産税課)

生命保険:生命保険会社

その他:葬儀費用の領収書、ゴルフ会員権、書画骨董などはその写真などを申告書に添付します。評価の必要な物は亡くなった時点の時価を調べてその資料も添付しましょう。

資料がすべて揃ったら財産評価に進みます。

財産評価は、税務署等に聞きながら進めます。財産評価が完成したら財産目録を作成し、相続人間で漏れがないか確認した後に遺産分割の話し合いです。

遺産分割が固まりましたら、相続税申告書の作成と遺産分割協議書の作成となります。

相続税申告書は、もし、余裕がある人は相続税申告ソフトを購入しても良いですし、税務署で用紙をもらってきて相談しながら記載しても良いでしょう。

遺産分割協議書は、ワードなどで雛型がネット上に落ちていると思うのでそれを加工して作成するといいでしょう。(提供:税理士法人トゥモローズ)