前日については、イタリアの財政懸念を背景に同国国債利回りが1カ月ぶりの水準に大幅上昇したことにより、ユーロ売りが強まりました。また、ドイツ株式相場(DAX)が2016年12月上旬以来の安値を付けるなど、イタリアの予算案問題を警戒する動きがみられました。一部報道では、欧州委員会はイタリアの予算案について本日21日、もしくは明日22日にも回答するとの見方が強まっており、本日も引き続きユーロについては警戒が強まる可能性が強そうです。

ディマイオ副首相が「EUは予算を巡り、壁を築いており、イタリアはその影響を受けている」と述べているように、イタリア政府が2019年度予算案を修正する姿勢を全く示していないため、欧州委員会は債務が過度になる場合の対応策を進めることになりそうです。最も可能性の高い結末としては、欧州委員会がイタリア政府に対して修正を考える時間的余地を与えるパターンだと考えられますが、状況によっては制裁金が加えられるかもしれません。その場合は、ユーロの急落が待ち受けているでしょう。

ブレグジット交渉については、カーニーBOE総裁が「英国の合意なきEU離脱の可能性が心地悪いほど高くなっている。メイ首相のEU離脱合意案は円滑な離脱に資するものだ」と発言しており、合意案を支持する姿勢を見せました。本日は、メイ英首相とユンケル欧州委員長との会談が予定されていますが、事前報道ではこの協議で何かしらの方向感が出てくることはないと言われています。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

パウエル・FRB議長やクラリダ・FRB副議長のハト派よりの発言が意識され、一旦ドルの上値が重くなるかと思われましたが、前日については一定の底堅さを維持しました。経済指標(10月米住宅着工件数/建設許可件数)が予想よりも若干強い内容となったこともありますが、米長期金利が底堅い動きを見せたことが大きな要因だと考えられます。NYダウが一時640ドル超下落するなど、完全にリスクオフの展開ではありましたが、ドル円についてはそれほど影響を受けていません。

気になるのが資源国通貨です。WTI原油先物価格が7%超下落し、1年1カ月ぶりの安値(52.77ドル)を付けており、資源国通貨の上値が抑えられています。カナダドル円は、85円半ばから84円半ばまで、豪ドル円においても82円前半から81円前半まで下落しており、原油価格の下落の影響が出ています。アラブ首長国連邦(UAE)のアルカービ石油輸出国機構(OPEC)理事が、協調減産に対する合意は形成されたものの、規模など詳細はまだ決定していないと述べており、引き続き上値の重い地合いは継続する見通しです。

メイ英首相に対する保守党議員による不信任決議の要請は48名に達したと報じられていますが、不信任投票の公表まで残り2日(48時間)の猶予があるため、25日のEU首脳会議での合意署名までは一旦様子見地合いが続く見通しですが、状況によってはポンド売りの材料が出てくるかもしれません。基本的には、ポンドポジティブの状況は25日までは出てこないものを思われます。

やはりポンドを買い進める状況ではなかった

ポンドドルについては、持ち値付近である1.2850ドル付近で膠着状態になっていましたが、25日のEU首脳会議まではポンドにとってポジティブな材料が出てくるとは考えづらく、引き続きポンドショートは継続です。損切りについては、1.2920ドル、利食いについては1.2650ドル付近、戦略に変更はありません。

海外時間からの流れ

NYダウの連日の大幅安により、世界的な株安が強まるかと思われましたが、本日の日経平均株価などは安値圏から反発するなど影響は限定的になっています。22日には米国、23日には日本が祝日にあたるため、手仕舞が入りやすい地合いではあるものの、株価が大きく上昇することは難しそうですが、下値も限定的になりそうです。原油安による資源国通貨売りは引き続き継続しそうですが、ドル円については株価同様に底堅い動きになりそうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、米・10月耐久財受注、米・新規失業保険申請件数、米・11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)などが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。