既に織り込み済みの内容ではありましたが、週末に行われた臨時EU首脳会談にて英国のEU離脱条件について正式に合意しました。本来であればポンド買いの材料ではありますが、既知の情報であったことと、本当に大事なのはこれからの英議会の承認であるため、ポンドの反応は限定的になっています。状況によっては開催されない可能性も示唆されていたため、とりあえず最悪の状況は脱したと考えられそうです。

先行き不透明感が強まりばかりではありますが、一旦ポンドのイベントを消化したことにより、ペンディングになっていたユーロに再びスポットライトが当たりそうです。欧州委員会は、既にイタリアに剰財政赤字の是正措置(EDP)の勧告を行っており、焦点は制裁がどの程度になるかという点になっています。GDP比で0.5%の制裁金が最も重い制裁になりそうですが、サルビーニ伊副首相が「2019年の赤字は成長次第だが対GDP比で2.2%や2.6%になる可能性も」などと発言していることもあり、想定よりも厳しい内容が課される可能性がありそうです。現在は二週間の猶予期間であるものの、要人発言のヘッドライン一本でマーケットが大きく動きそうなため、注意したいところです。

今週は、久々にドルに注目が集まりそうです。パウエルFRB議長とクラリダFRB副議長がハト派寄りの発言をしたことにより、ドル円は上値が限定的になっています。焦点としては来年以降の利上げサイクルですが、マーケットがこの点に注目している以上、FRB高官からもこの点への言及がありそうです。奇しくも、今週は議長、副議長を含めたFRB高官の会見が非常に多いため、内容によってはマーケッツを活気づかせるかもしれませんが、基本的な見方はドル売り方面に偏っている可能性が高そうです。ただ、その前にショートポジションの手仕舞が入る可能性があるので、週初はドル円の買い戻しが強まりそうですが、113円半ば辺りでは戻り売りを提供する水準になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

ドルの動向はFRB高官のみならず、週末に予定されている米中首脳会談にも注目が集まっています。中国は米国に先週回答したリストでは、知的財産権の保護強化や外資規制の緩和をはじめとした142項目の対応策を列挙しました。巨額の対米貿易黒字を削減するため、米国産の天然ガスや農産物の輸入拡大も約束したと報道されています。トランプ大統領は一段の譲歩を迫りつつも、新たな追加関税を見合わせる可能性を示唆していますが、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において米中の対立激化が表面化していることもあり、楽観視はできない状況に変わりはないでしょう。

トランプ大統領が主導するかたちで、今回の会談を前に米中が通商交渉再開を合意するとのポジティブな見方が強まってはいますが、ペンス副大統領はAPECで中国批判を展開しており、首脳会談での追加関税の扱いが注目されています。余程のポジティブサプライズないない限りは、中国からの輸入品すべてに関税を課す動きとなり、リスク回避の円買い、株安という動きになると個人的には推測しています。

本日は、日米の祝日明けで比較的動きづらい展開になりそうですが、基本的にはイベント前のポジションの手仕舞がメインの一日になりそうです。特にクロス円は買い戻しが強まりそうですが、ドル円は113.50円付近が一旦レジスタンスとして意識されそうです。

欧州通貨は小休止、本日はドル円ショートがメイン戦略

ポンドドル、1.2830ドルに利食いの逆指値を設定していたことは、結果的には大正解でした。本日は欧州通貨の動向が一旦落ち着いているので、113.40円付近でのドル円の戻り売りを戦略とします。損切りは113.70円上抜け、利食いは112.80円付近を考えたいと思います。

海外時間からの流れ

22日が米国祝日、23日が日本の祝日に加え米国がブラックフライデーとなったため、一旦マーケットが落ち着きを取り戻しています。25日のEU首脳会議を終え、日中首脳会談までビックイベントは予定されていませんが、今週は要人発言が多数控えており、欧州通貨と違ったかたちのヘッドライン相場になりそうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、独・11月IFO景況指数が予定されています。要人発言としては、プラート・ECB専務理事、クーレ・ECB専務理事、ドラギ・ECB総裁、カーニー・英中銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。