前日の海外時間においては、欧州時間序盤にディマイオ伊副首相が「政府は予算を削減出来る」と発言したことにより、イタリア政府の方向性に変化があったのではとの思惑もあり、ユーロドルは1.13ドル後半まで買い戻されました。ただ、独・11月IFO景況指数が市場予想102.2に対して102.0の結果となり、まずは上値が抑制され、その後の欧州議会でのドラギECB総裁の発言が「最近の経済データは予想よりも弱い」「大規模な金融緩和政策が依然として必要」「資産買い入れは最後まで継続すると予想」などと終始ハト派寄りの発言を繰り返したことにより、1.1320ドル台まで下落する動きとなりました。
ドラECB総裁以外にも、プラートECB専務理事がユーロ圏経済の失速に言及し、タカ派として有名なラウテンシュレーガーECB専務理事についても、ECBが来年利上げを開始するとの見方自体は引き続き維持するものの、経済指標へ依存していると発言しており、経済指標が悪化傾向にあるユーロ圏の状況を鑑みると、タカ派寄りのスタンスは継続しつつもユーロ圏の経済悪化については認めざるを得ないと発言しているように感じられます。
本日の早朝に、WSJ誌が「トランプ大統領は対中関税の25%への引き上げを進めると予想」と報道したことにより、米中首脳会談の先行き不透明感が増したものの、マーケットへの影響は限定的となりました。あくまで見解に留まっていることで、週末に予定されている首脳会談待ちという流れになっていますが、トランプ大統領は「EUが25日の緊急首脳会議で英国のEU離脱案を正式承認したことを受け、米英間の貿易がより困難になる可能性がある」との見解を示しています。こちらも影響は限定的になってはいますが、米国の登場により英国が八方塞がりになる可能性があり、この点には注意が必要になりそうです。
今後の見通し
メイ英首相が、EU各国首脳との間で合意に至った協定案を、12月11日に議会採決を行うと発表しました。同案については、英議員からの猛反発を受けていることもあり、議会通過の可能性は極めて低いと考えられそうです。また、バークレーEU離脱担当相が、「現在の票読みを考慮すれば、議会通過が難しくないなどと装うつもりはまったくない」と発言しており、議会通過は無理という内容を徐々に織り込む動きになりそうです。12月11日に議会承認を得られないパターンだと、来年1月21日が英議会のブレグジット合意最終期限となるため、直前に再度採決を行う見通しです。一部報道では、12月11日前の9日にメイ英首相とコービン労働党党首がTV討論を行うともいわれており、11日の結果はほぼわかっているので、ポンドが売られるとすれば9日の討論後になるかもしれません。
色々と材料が出てきつつあるものの、今週はFRB高官の発言が相次ぐ週であり、マーケットを動意づかせるのも要人発言ではないかと考えています。本日は、クラリダFRB副議長の講演が予定されています。前回の発言では、「金利は中立水準に近づいている」とFRBの利上げサイクルについて鈍化を示唆し、パウエルFRB議長が指摘している米国が来年直面する経済悪化を裏付けました。海外の需要鈍化、米財政刺激策の効果減退、これまでの米利上げの影響が経済に時間差をもって生じる可能性がパウエルFRB議長が指摘している項目ですが、この指摘事項に具体性を持たせる発言をするのであれば、ドル売りが強まりそうです。
多少のスパイクはあるものの、ドル円113.50円付近は上値が重そうだ
週初はポジション調整がメインのマーケットになる展開までは想定通りでしたが、一時的とはいえ113.50円のラインを上抜けたのは想定外でした。ただ、このラインは何度もドル円の上昇基調を阻んだラインです。114円が大きなレジスタンスラインになっていることから、ショートであればある程度長いスパン様子見ができる水準だと思われます。損切り、利食い幅を拡大し、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円を考えたいと思います。
海外時間からの流れ
上述した内容以外では、国連安保理が、ウクライナ南部にあるクリミア半島周辺の海域でロシア当局がウクライナ艦船を拿捕した問題をめぐり緊急会合を開いたと報道されています。米国のヘイリー国連大使は「ウクライナの独立した領地を侵す言語道断の行為だ」と激しく非難しており、地政学的リスクが意識されだすと年末に向けてリスクオフのマーケットになることも想定されるため、注意が必要になりそうです。
今日の予定
本日の経済指標としては、米・11月CB消費者信頼感指数が予定されています。要人発言としては、クラリダ・FRB副議長、メルシュ・ECB専務理事、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。