携帯やスマホでの決済やネット上での決済が当たり前になるにつれ、携帯キャリアやIT企業の発行するクレジットカードの存在感が高まってきた。ひと昔前は銀行や信販会社が発行しているイメージだったが、近年では小売・流通企業や鉄道会社などが続々と進出。最近では携帯キャリアや勢いのあるIT企業などもクレカを発行し、IT・通信系クレカと分類されている。
IT・通信系クレカの特徴は顧客囲い込みを狙った特典
IT系クレカでは楽天カードやヤフーカードなどが、通信系クレカではドコモのdカードなどが代表格と言える。楽天カードは「小売・流通系クレカ」として分類されることもあるが、ここではIT系とした。なお3大携帯キャリアのうち、ソフトバンクはクレカを発行していない。
IT・通信系クレカの最大の特徴は、自社サービスと連携した特典が付帯することにある。それらの特典は顧客の囲い込みを目的としたものだが、そこだけに特典内容を絞ってしまうと、自社サービスを利用していない人を遠ざけてしまうため、自社グループ以外の実店舗での優待を付けるなどして、各社とも新規会員の獲得を狙っている。
ドコモの「dカード」はケータイ補償付帯、ローソンで5%還元
ドコモが発行するdカードは初年度年会費無料、2年目以降は年会費1,250円(税別)となるが、前年度に1度でもショッピングで利用すれば無料となるので実質年会費無料と考えていいだろう。カードブランドはVisaとMasterCardから選べる。
注目したいのは、ドコモで購入した携帯端末に対して保証金額最大1万円、補償期間1年間のケータイ補償が付帯する特典だ。補償・保険に関しては、年間最大100万円のショッピング保険が付帯するが、海外旅行傷害保険などは付帯しない。
クレジット支払いで貯まるポイントはドコモの共通ポイント「dポイント」で、100円(税込)の利用につき1ポイント(1円相当)が貯まる(ポイント還元率1%)。
1%でも十分高還元だが、ローソンでクレジット支払いすると、通常のポイント1%分に加え、dカード提示によるポイント1%と、ローソンでのdカード決済に付与される3%オフ特典により、合計で最大5%分もお得になる。よって、dカードはローソンの常連なら持っていて損はないクレカと言える。
ローソンのほかにも、ENEOS(エッソ、モービル、ゼネラル)、オリックスレンタカー、JAL、JALパック、JTB、高島屋、伊勢丹、三越、マツモトキヨシ、タワーレコード、紀伊国屋書店、AOKI、洋服の青山、紳士服のコナカ、ビッグエコーなど、dカード特約店でクレジット支払いすると、付与ポイントがアップする。
また、実店舗でスマホを使ったQRコード決済を行う「d払い」の利用料金支払いをdカードに設定すると、dカードのポイント(還元率1%)とd払い利用ポイント(還元率0.5%)のポイントを二重取りできる。しかも、マクドナルドやマツモトキヨシ、高島屋、東急ハンズなど、dポイントクラブ加盟店でのd払いなら、dポイントカード提示による優待ポイント(店舗によりポイント付与率は異なる)もプラスされてポイントを三重取りできる。
このように、工夫次第でポイントを効率良く貯められるのがdカードの特徴といえる。さらに、毎月ドコモに支払っている料金が多い人なら、上位カードにあたるdカードゴールドも検討してみるといいだろう。
dカードゴールドは年会費1万円(税別)が必要だが、ドコモの携帯料金や「ドコモ光」の料金については1,000円(税別)ごとに100ポイントが付与される。つまり、最大約10%の超高還元であり、毎月1万円以上の料金を支払っているなら年会費以上のポイントが戻ってくることになる。
さらに、クレジットの年間利用料金が100万円(税込)を超えると、携帯端末の割引やショッピング、旅行などに使える1万800円相当のクーポンが、200万円(税込)を超えると2万1,600円相当のクーポンがプレゼントされる。
それに加え、空港ラウンジ無料利用特典(国内28空港)や、海外最大1億円・国内最大5,000万円の旅行傷害保険など、ゴールドカードにふさわしい特典が付帯する。また、ケータイ補償については最大10万円、補償期間3年間にグレードアップ、ショッピング保険も年間最大300万円に増額される。
ヤフーの「ヤフーカード」はヤフオクの中古品にもショッピング保険適用
次にIT系クレカのヤフーカード(Yahoo! JAPANカード)を紹介する。年会費無料で作れるこのカードはVisa、MasterCard、JCBの3つのカードブランドから選ぶことができ、そのままTカードとしても使える。もちろん、貯まるポイントはTポイントだ。
共通ポイントの草分け的存在であるTポイントは使える店舗が非常に多く、貯めるにも使うにも勝手のいいポイントサービスだ。また、もとはTSUTAYAが始めたサービスということもあり、ヤフーカードには同店のレンタルサービスを追加することもできる。
クレジット支払いでは100円につき1ポイント(1円相当)が付与され(還元率1%)、Yahoo!ショッピングやLOHACOの利用ではポイント3倍となる。ただし、その中には期間限定ポイントも含まれる。
また、Tポイント加盟店でクレジット支払いすると、Tカードとしての利用分とクレジット利用分のポイントがダブルで付与され、効率良くポイントを貯められる。
このカードには年間最高100万円のショッピング保険(税込1万円以上の商品に適用・自己負担額3,000円)が付帯しているが、ヤフオク!で購入した中古品などにも適用されるため、個人間の中古品売買に不安のある人にとって、非常にメリットのあるサービスとなっている。
楽天の「楽天カード」は楽天市場で最大3%還元
最後に、IT系クレカの代表格とも言える楽天カードを紹介する。いまや楽天カードは取扱高で銀行系カードを抜いて国内首位に立つカードであり、「IT系クレカ」という枠には収まり切らない存在となっている。
一般カードにあたる楽天カードは年会費無料で、カードブランドはVisa、MasterCard、JCB、アメリカン・エキスプレス(アメックス)の4つから選べる。このカードは、電子マネーの楽天Edyカードと楽天ポイントカードも兼ねている。
クレジット支払いで貯まるポイントは楽天スーパーポイントで、100円につき1ポイント(1円相当)の付与が基本となり(還元率1%)、楽天市場での利用でポイントが最大3倍、楽天トラベルでの利用でポイントが2倍、楽天カードポイント加盟店での利用でポイントが最大3倍、楽天のグルメ情報サービスRakoo(ラクー)掲載店でポイントが2倍となる。
貯めたポイントは楽天グループ内の支払いに充当できるのはもちろん、電子マネーの楽天Edyに交換して実店舗で使ったり、ANAのマイルに交換したりできる。なお、楽天カードから楽天Edyへのチャージでは、200円ごとに1ポイント(還元率0.5%)だが、楽天Edyの利用時に200円(税込)ごとに楽天スーパーポイントを1ポイント貯められるので、合計の還元率は1%となる。
ポイントサービス以外の特徴としては、最高2,000万円の海外旅行傷害保険の付帯、また楽天市場で購入した商品が万一届かない場合に請求を取り消してくれる仕組み、さらにハワイ・ワイキキのDFS内楽天カード会員専用ラウンジの無料利用などが挙げられる。ハワイのラウンジでは荷物の一時預かりのほか、傘やベビーカーの無料貸し出しなどのサービスが提供されるため、ハワイ観光では重宝しそうだ。
なお、上位カードにあたる楽天ゴールドは年会費2,160円(税込)となっており、Visa、MasterCard、JCBの3ブランドから選べる。ゴールド特典として国内主要空港ラウンジと海外2空港(ハワイ・韓国)のラウンジを年間2回まで無料で利用できるほか、楽天市場での利用ではポイントが最大5倍となる。また、車持ちには年会費540円(税込)のETCカードを無料で申し込みできる特典も大きなメリットと言えよう。
海外旅行傷害保険は一般カードと同じく最高2,000万円となっており、ゴールドカードとしては少々物足りない。だが、年会費の金額を考えれば相応とも言える。
IT系クレカに関しては、Tポイントの使い勝手の良さや海外旅行傷害保険の有無といった要素もからんでくるため、ヤフーユーザーならヤフーカードへ、楽天会員なら楽天カードへ……と単純に振り分けにくいところがある。
メインカードに位置づけるか、サブカードに位置づけるかによっても、最適な選択肢が変わるので、自身のニーズに合わせて選ぶといいだろう。
文・モリソウイチロウ(ライター)/MONEY TIMES
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