前日は、G20に合わせて行われる12/1の米中首脳会談への思惑がマーケットの主役となりました。トランプ大統領が、習中国国家主席と合意できなかった場合は、中国からの輸入品に2,670億ドル相当の追加関税を課す用意があるとの見解を示し、クドロー次期国家経済会議(NEC)委員長も、トランプ米大統領は習中国国家主席との会談で状況が打破されると期待しつつも、進展が見られなければ追加関税を賦課する用意があると述べています。決別した際のリスクシナリオがマーケットの重要課題になりそうなため、この動きを織り込むようであれば、ドル円は上値が抑制されると考えられます。

これまでマーケットを牽引してきた欧州通貨については、ポンドは12/11の英国議会での離脱合意案の採決までは上値が重いながら様子見の展開がメインシナリオでしょうか。ユーロについても、イタリア政府が財政赤字目標の対GDP比を2.4%から2.2%-2.3%への引き下げを示唆しているなど、予断を許さない状況が継続するものの、是正措置を求める過剰財政赤字是正手続き(EDP)を勧告し、二週間の猶予期間に入っているため、制裁内容がはっきりするまでは、ユーロについてもポンド同様に様子見の展開になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、パウエルFRB議長の講演が予定されています。同議長は、先日の講演にて世界経済の減速への警戒感を示し、且つ、根拠となるデータも揃っている旨の発言を行いました。その後に、クラリダFRB副議長がパウエルFRB議長の見解をサポートするかのような発言をしたことで、ドルの上値が重くなった経緯があります。ただ、クラリダFRB副議長が前日発言した内容としては「米経済は強健。労働市場は健全」「漸進的な利上げを支持」「インフレが目標を上回れば政策を調整する」などハト派からは乖離した内容になっており、本日のパウエルFRB議長の発言内容もハト派寄りでなければドル円は114円台に乗せてきそうです。

ただ、今週は木曜にFOMC議事要旨が公表されるため、実際にはパウエルFRB議長が何を話しても、この議事要旨と内容を照らし合わせる必要があるため、マーケットを大きく動かすような展開にはならないと考えています。また、議事要旨があるため、同議長も強いメッセージは発信しないのではないかとも推測されます。ただ、強いメッセージを発せず、議事要旨の内容も従来通りであれば、マーケットは完全に12/1に予定されている米中首脳会談まで様子見姿勢を強めそうです。

ドル以外の材料としては、本日は英国で金融安定報告(FSR)、 ブレグジットに関する分析結果が発表されます。トランプ大統領が英国とEUが合意した離脱案について「米英貿易協定の障害になる可能性がある」との見解を示したことでポンドが売られたように、メイ政権の立ち位置が段々と四面楚歌になっています。ブレグジット分析にて、見通しが市場予想よりも悪化した内容であれば、ポンド売りが加速する可能性がありそうです。

ドル円114円のレジスタンスが機能するかどうか

114円のラインは上値抵抗として明確に意識されていることもあり、このラインが意識されれば、まだ下落方向への期待感はあると見ています。113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。

海外時間からの流れ

本日のパウエルFRB議長の講演、週末に予定されている米中首脳会談を控えている中で、ドル円ショートの買い戻しが強まったにせよ、113.80円台まで上昇する動きは想定外でした。ただ、既にドイツの有力機関誌が、トランプ米政権が早期の25%の自動車関税賦課を検討と報じていることもあり、米中首脳会談の決裂シナリオが意識されてくれば、再びドル売りの動きに回帰すると考えられます。

今日の予定

本日の経済指標としては、米・第3四半期GDP(改定値)が予定されています。要人発言としては、クーレ・ECB専務理事、デギンドス・ECB副総裁、プラート・ECB専務理事、パウエル・FRB議長の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。