前日については、クラリダFRB副議長がハト派寄りの発言をしなかったことで、パウエルFRB議長も同じようにハト派寄りの発言を避けるのではないかとの思惑が強まっていましたが、蓋を開けてみれば、「政策に規定路線はない」「政策金利は中立レンジを若干下回る」などと市場予想よりもハト派寄りの発言を行ったことにより、ドル売りが強まりました。特に、「政策金利は中立レンジを若干下回る」との発言が、利上げサイクルの停止を連想させたこともあり、ドル円は上値の重い展開になりました。
ただ、利上げサイクルの停止の連想はドル売りに直結するものの、株価を押し上げる格好の材料になることから、NYダウについては一時620ドル超上昇するなど、リスクオンの地合いとなり、円安、ドル安という、珍しい動きとなりました。FF先物市場における来年のFRBの利上げ織り込み回数は1.4回→1.2回に低下しており、12月の利上げは既定路線ではあるものの、来年の利上げペースについては、1回程度と従来の予想よりは鈍化する可能性が高そうです。
BOE(英中銀)が公表した金融安定報告及び、ブレグジットに関する分析では、「合意なき離脱」になった場合のインパクトは大きく、来年第2四半期にGDP成長率は8~9%低下するとのとの見方を示しました。また、2023年までに英国経済は国民投票前の予想対比で10%以上縮小するとの見方を示しており、一部報道でも「合意なき離脱」になった場合のポンドドルは1.17ドルになるとの見解もあったことから、英国議会の採決までは、引き続きポンドの上値は抑制されそうです。
今後の見通し
本日は、FOMC議事要旨が公表予定であり、前日のパウエルFRB議長の発言との照合が重要になりそうです。足元では徐々にハト派寄りのスタンスに傾きかけていることもあり、議事要旨にて利上げサイクルの鈍化が示唆されれば、前日同様にドルが下落、株価上昇によりクロス円などは上昇する動きになりそうです。
FRBの政策金利への思惑もドルへの関心事になりますが、引き続き12/1に予定されている米中首脳会談もドルへの影響が大きなものになりそうです。トランプ米大統領は、米中首脳会談で習中国国家主席と合意できなかった場合は、中国からの輸入品の残る2,670億ドル相当に追加関税第4弾を課す用意があると既に発言しており、さらに、自動車関税25%の見直しも示唆しています。クドロー次期国家経済会議(NEC)委員長も、米中首脳会談で状況が打破されると期待しつつも、進展が見られなければ追加関税を賦課する用意もあると発言しています。交渉不調はドル売りに直結しますが、この場合は株安にも繋がるため、シンプルなリスクオフ、ドル円もクロス円も下落する展開になりそうです。本日の東京時間に、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が中国に対してネガティブは発言をしており、交渉不調を織り込む動きが強まれば、ドル売りが加速する可能性がありそうです。
ドル売り主導の動きになっていますが、トルコリラについては非常に堅調な推移になっています。株高がリスク選好の動きを後押ししたこともあり、トルコリラ円は一時21.773円まで上値を拡大しています。トランプ大統領とエルドアン大統領がG20で会談することで合意との報道もあり、米国・トルコの関係改善が明確に表面化しており、リラの買い安心感もリラ高をサポートしているものと考えられます。
ドル円114円レジスタンスはやはり意識された模様
114円台をワンタッチする動きにはなりましたが、この水準はレジスタンスとして意識されているラインであり、今回もやはり意識されたと考えることができそうです。113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。
海外時間からの流れ
クラリダFRB副議長がハト派寄りの発言をしなかったことで、パウエルFRB議長も同調するかに思われましたが、前回と同じハト派スタンスを維持しました。本日のFOMC議事要旨でパウエルFRB議長の発言内容に整合性がとれるようであれば、市場は来年度の利上げは1回だけだと判断し、ドル売りの流れを構築する可能性が高そうです。
今日の予定
本日の経済指標としては、独・雇用統計、独・11月消費者物価指数(速報値)、米・新規失業保険申請件数、米・10月PCEコア・デフレータ、米FOMC議事録などが予定されています。要人発言としては、ドラギ・ECB総裁、パウエル・FRB議長、エバンス・シカゴ連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。