前日の注目材料であったFOMC議事要旨については、「ほぼ全ての参加者がFF金利誘導目標レンジのもう一段の引き上げがかなり早期に妥当になる可能性が高い」との見解を表明したことにより、12月の利上げはほぼ間違いないだろうとの思惑が強まりました。ただ、声明文については、「さらなる漸進的な引き上げ」という文言が削除されたことにより、利上げサイクルの停止が現実味を帯びてきたことにより、ドルの上値が抑制されています。また、数人のFRBメンバーが政策金利は中立的な水準に近いとの見方を示しており、パウエルFRB議長の見解と整合性がとれるため、ドル売り優勢のマーケットになりました。

経済指標においても、新規失業保険申請件数が市場コンセンサスよりも悪化、米・10月PCEコア・デフレータも悪化、米・10月中古住宅販売保留指数も悪化になるなど、これまで常に強い数字を叩き出してきた米国の経済指標についても変化が見られます。直近のFRBメンバーの発言などからも、今後の利上げはよりデータ次第の側面が強くなる事が示唆されていた事から、パウエルFRB議長を筆頭にややFRBのスタンスがややハト派よりに傾いている状況下では、経済指標の悪化はドル売りに結び付きやすいと考えられそうです。

米国との関係改善期待により、上昇基調が強まっているトルコリラについては、一時トルコリラ円22.023円を示現しました。当然トルコリラ単体での買い戻しが強まっていることもありますが、FRBの利上げサイクルの停滞観測により、株価が堅調に推移している点が好感されていると考えられます。ただ、G20開催中にトランプ大統領とエルドアン大統領が会談との報道がありましたが、トルコがロシアからミサイルシステムを購入することに米国は以前から難色を示しており、警告の意味合いがあるのではないかとの思惑もあるため、一応警戒はしておいた方がいいかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

注目は、12/1に予定されている米中首脳会談になりそうです。ここにきてライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が中国に対してネガティブな発言を行い、且つ、対中強硬派で有名なナバロ通商製造政策局長がG20に参加、米中首脳会談にも同席するとの報道があることから、交渉決裂の可能性が意識されていることも、ドルの上値を抑える要因になっています。

プラスの材料としては、トランプ大統領が「中国と何かすることで極めて近い状況にある。はっきりとは分からないが、中国は取引を望んでいると思う。取引する可能性は否定しないが、正直なところ私は現時点での取引が気に入っている」と楽観的なスタンスをとっていること、WSJ誌が「中国の経済政策の変更を検討する新たな協議を設けるのと引き替えに、米国が追加の関税賦課を春まで保留するという内容の合意を米中が模索している」と報道していることです。ただ、各報道様々な見解が飛び交っており、現時点ではどちらに傾いてもおかしくありません。

12/1の米中首脳会談で貿易交渉再開を決定し、米国が関税率引き上げや新たな関税導入を先送りになるのか、または話し合いが物別れに終わり、貿易戦争が激化するかで大きく来週の局面は変わります。現在の状況では50/50と考えるのが妥当ですが、ナバロ通商製造政策局長が会合に出席するとのことで、個人的な見解では物別れに終わる可能性の方が高いと推測しています。その場合は、翌月曜の早朝は大きくギャップを開けてのスタートになると考えられます。

FOMC議事要旨を経てもドル売り基調変わらず

12/1の米中首脳会談次第で翌週の動きに大きく影響を与えそうですが、現状はドル円についてはショート戦略で問題なさそうです。113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。

海外時間からの流れ

FOMC議事要旨の内容とパウエルFRB議長の見解の整合性がとれたことで、ドルが積極的に買い戻される展開は考えづらそうです。本日については、米中首脳会談の展望待ち姿勢が強まりそうなため、大きく流れが変わるとは考えにくいため、本日もドル円の上値は重くなる可能性が高そうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、独・10月小売売上高指数、ユーロ圏・11月消費者物価指数、ユーロ圏・10月失業率、加・第3四半期GDP、米・11月シカゴ購買部協会景気指数などが予定されています。要人発言としては、メルシュ・ECB専務理事、クーレ・ECB専務理事の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。