訪日外国人旅行者の増加、2020年に開催される東京オリンピック、その後に誘致が期待される大阪万国博覧会などにより、インバウンドビジネスへの注目度は以然として高い。

そのような状況の中、外貨両替機への投資が注目されている。起業アイデアとして見た場合、外貨両替機はどのような特色のあるビジネスモデルかを考察してみたい。

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(写真=PIXTA)

外貨両替機は手ばなれの良いビジネス

外貨両替機は、繁華街の店先やホテルのロビー、観光地の駐車場などに設置され、訪日外国人が外貨の両替を行う機械である。缶ジュースなどの自動販売機と同様、設置すれば基本的にほったらかしで現金収入が得られる点から、外貨両替機は手ばなれの良いビジネスと言える。

もちろん、自動販売機でも飲料の補充や現金の回収などの作業が発生する。それと同じように、外貨両替機では紙幣や硬貨の補充、機器のメンテンスなどの作業が必要なのは言うまでもない。しかし、自動販売機でも外貨両替機でも、これらの作業は業者に委託できるため、手間はかからないと考えて問題はない。

そういう意味で、アパートやマンションなどの収益不動産、月極駐車場やコインパーキング、また、近年人気の高かったコインランドリー投資などと同様、不労所得を目指すための投資として注目されている。

外貨両替機の収支はどれくらい?

それでは、外貨両替機の収支はどれくらいになるのだろうか。外貨両替機を投資家向けに提供している業者はいくつかあるが、本体の購入価格は数百万円のところが多い。また、ビジネスの性質上、両替のための通貨を準備しておかなければならない。これには200万円程度を準備することが推奨されているようだ。仮に本体価格が400万円とすると、両替資金を合わせて600万円の投資額となる。

では、これに対して、売上はどの程度見込めるか。例えば、1人当たりの両替金額が2万円、1日平均10人が利用すると仮定した場合、1日の平均両替金額は20万円。その両替金額に対して8%の手数料を徴収するとすれば、1日の売上は1万6千円、つまり月商は約48万円と想定される。

通貨の補充や機器の警備およびメンテンスを業者に委託した場合、経費が月額20万円程度は発生しそうだ。これには本部のWEBシステム利用料や広告費、外貨を円転した場合の手数料も含まれる。両替機の設置場所を賃借する場合はこれに加えて数万円の家賃も必要となる。

仮に月額経費が24万円発生すると、月商48万円に対して利益が24万円という計算になる。つまり、年間利益は288万円である。これは投資額600万円に対して48%という高利回りといえる。

もちろん、利用者数は立地によって大きく左右されるだろう。また、外貨の種類により受け取る手数料率も変動する。上記のシミュレーションはかなり上手くいった場合の数値と考えるのが順当だ。

外貨両替機ビジネスの強みと弱み

外貨両替機のビジネスモデルは、今後も増加が見込まれる訪日外国人客の需要を取り込むことができる点では有望なものだ。反面、電子マネーやクレジットカードの普及により現金そのものが使用されなくなりつつある点から臨めば、これは斜陽ビジネスであるとも言える。

立地に関しては、外貨両替機の特性として移動可能であるため、仮に当初の立地選定を誤ったとしても、店舗ビジネスや収益不動産のように致命的な失敗にはならないというメリットがある。

訪日客がいる限り、両替機には需要がある

総じてみると、外貨両替機は不動産物件に近いところがある。投資を見込むのであれば、増加傾向にある国内におけるインバウンド層の推移に注意しつつ、観光地など、外国人からの需要の多い立地を選ぶことが求められる。併せて政府によるキャッシュレス化がどこまで推進されるのかについても注意する必要があるだろう。

2017年12月時点における、国内での外貨両替機の設置数はわずか800台に過ぎない。リスクはあるとはいえ、検討に値する投資手法ではあるだろう。