アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議、その中でも米中首脳会談が前週末の最大のイベントでした。結果としては、米国は中国からの輸入品の関税を来年1月に引き上げる制裁措置を一時的に見送ることを発表しました。ただ、知的財産権の侵害などへの対応で90日以内に合意できなければ、関税を引き上げるという条件の下での見送りになります。物別れになる可能性が指摘されていたこともあり、先行きは依然として不透明ながら、目先の懸念事項はクリアできたものと考えられます。ただ、オセアニア時間ではクロス円は大きく上昇していたものの、東京時間に入ってからはやや利食い優勢となっています。

G20においては、首脳宣言において「保護主義と闘う」との文言が削除されました。米国が受け入れなかったとのことが背景としてあり、依然としてトランプ大統領の中では貿易については何らかの制限を課すべきだという考えが頭にあることが改めて示されました。一長一短ある同政策ですが、長期的にはデメリットの多い政策でもあります。米中貿易戦争が穏便な結果に終わっても、将来的には保護主義の代償は払う必要がありそうです。

本日の東京時間において、堅調な推移を見せているのがメキシコペソです。1日に就任したロペスオブラドール・メキシコ大統領がメキシコシティ新空港の建設計画を継続するとの報道がペソ買いをサポートしている模様。もともと、この新空港問題でペソ売りが加速した経緯があるため、正式に継続となれば、再びメキシコペソ円で6円付近までの反発がありそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

上述したように、米中首脳会談は一時的な貿易戦争の鎮静化で幕を閉じました。ただ、90日間という先延ばし案であって、90日後には再度同じ状況に陥る可能性があります。気になる点としては、中国が輸入することで合意した農作物、工業製品等の金額が明記されなかったこと、薬品トレード規制などの重要な項目が公表されていないことです。最悪のシナリオは回避し、目先はポジティブな捉え方ができそうですが、年明けくらいには再度同じ問題に直前する可能性が個人的には高いと考えています。

今週は5日(水)にパウエルFRB議長が上院下院の合同経済委員会にて議会証言を行います。FOMC議事要旨とパウエルFRB議長の発言内容に整合性がとれていることもあり、FRBが2019年に行う利上げの回数は1回、どんなに多くても2回になるとの見方が強まっています。ただ、今回の議会証言にて「経済指標の内容によっては更なる利上げも検討」などの文言が出てくるようであれば、目先のドル買い意欲に繋がるのではないかと思われます。

米中首脳会談にて、最も警戒されていたのが中国との経済的結びつきが強い豪州、豪ドルですが、東京時間からのオープニングからは83.90円台を示現していますが、オセアニア時間では一時84円台まで上昇しています。米国と中国が物別れにならなかった影響は、豪ドルにとっては非常にプラスに働いたと考えられます。また、原油価格においては、OPEC総会で減産合意するとの見方が下支えとなっているものの、ロシアのエネルギー相が現在の原油価格水準に問題はないとの見解を示しており、今度は原油を巡っての綱引きになりそうですが、50ドルを維持している以上は、豪ドル高に振れやすい状況にあると考えられます。

米中首脳会談後の影響も、114円レジスタンスは継続

米中首脳会談では、90日後に延期されたものの、結果としては物別れにはなりませんでした。個人的な見解からははずれましたが、114円手前では上値の重さが意識されており、テクニカル的には特段影響がなかったように思います。113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。

海外時間からの流れ

米中首脳会談を経て、ドルの次なる材料は週末の雇用統計ですが、その前にポンドにとって大きなイベントが控えています。4日に予定されているカーニー英中銀総裁の議会証言です。これは、前回のブレグジットシナリオと金融政策安定に関する報告書の内容を踏まえ、カーニー英中銀総裁の他に、ブロードベント副総裁・カンリフ副総裁・ウッド金融監督機構副総裁が参加します。発言内容によってはポンドの動きに大きく影響することが想定されるため、注意が必要になりそうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、トルコ・11月消費者物価指数、英・11月製造業PMI、米・11月ISM製造業景況指数などが予定されています。要人発言としては、ホールデン・BOEチーフ・エコノミスト、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。