知的財産権の侵害などへの対応で90日以内に合意できなければ、関税を引き上げるという前提条件があるものの、来年1月に引き上げる制裁措置を一時的に見送ることになった米中首脳会談ですが、前日はムニューシン米財務長官より楽観的な発言がありました。内容としては、「トランプ米大統領が対中通商交渉を主導」「中国は人民元の取り決めについてコミットしている」などと述べたほか、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が「米国車に対する中国の関税はいずれゼロになるだろう」「米中の通商交渉に対して慎重ながらも楽観的」などと発言しました。ただ、それでもドル円は113.80円付近で上値が抑制されていることもあり、114円への回帰よりは113円割れに向かう可能性の方が高そうです。
ユーロドルについては、コンテ伊首相が財政赤字目標を対GDP比で1.9-2.0%に設定する用意があるとの一部報道により、一時1.1380ドル付近までユーロ買いが進みましたが、その後は「コンテ伊首相は来年の財政赤字目標を対GDP比で2%以下にはしない意向を示した」との報道により、上昇幅を一気に打ち消す動きとなり、1.1320ドル付近まで下落しました。ユンケル欧州委員会委員長がイタリア財政赤字比率を1.9%に引き下げるよう要請していることもあり、この1.9%という数字は非常に重要なラインとなっています。1.9%まで引き下げることができなければ、ある程度の制裁はあると考えた方がよさそうです。
5日に予定されていたパウエルFRB議長の議会証言は、ブッシュ元大統領死去の葬儀のため、延期となりました。FOMC議事要旨とパウエルFRB議長のハト派寄りの発言の整合性がとれつつあり、同議長の証言が注目されていましたが、延期になったことにより、ドルにとっては買い戻す機会を逸した可能性があります。ドル円に関しては、小動きを継続しながらも、上値の重い動きになりそうです。
今後の見通し
本日より、英議会でEU離脱合意案を巡る審議が開始します。前日は、ポンドに関する報道はほぼなかったものの、それでも欧州時間にはポンド円が145.50円付近から144.20円付近まで下落するなど、ポンドについては非常にセンシティブな状況になっています。11日に予定されている同採決においては、一旦否決されることがコンセンサスになってはいるものの、ポンド下落に繋がるヘッドラインが出てくるようであれば、昨日同様にポンド売りの動きが見られそうです。
本日は、欧州時間にカーニー英中銀総裁を筆頭とした議会証言が予定されています。出席者は、カーニー英中銀総裁・金融政策担当としてブロードベント副総裁・金融安定担当としてカンリフ副総裁・ウッド金融監督機構副総裁の4名です。28日に英中銀が公表した金融政策、安定に関する報告とブレグジットの分析報告に対する証言になります。本日より審議が開始されているため、基本的にはあらゆるシナリオと影響を説明するかと思いますが、「合意なき離脱」シナリオにて将来の金利の話などになれば、ポンドは下落基調を強まることになりそうです。
本日の注目通貨としては、南アランドを挙げたいと思います。リスクオンの地合いが強まっていること、更には前週末行われた米中首脳会談への懸念からドル売りが出ていたことで南アランドが堅調な推移を維持し、ランド円で8.35円付近まで上値を拡大しています。ただ、本日第3四半期GDPが発表されます。南アランドについては、第2半期にリセッションに入っており、今回のGDPが改善しなかった場合は先行き不透明感に加え、経済状況悪化を織り込む動きでランドが売られることが想定されるため、その点には注意したいところです。
米中首脳会談を経て、114円レジスタンスがより際立っている
米中首脳会談後のドル円の動きを見ても、113.80円付近では上値が重くなっており、114円のラインがより明確なレジスタンスとして意識されそうです。引き続き、113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。
海外時間からの流れ
ムニューシン米財務長官、クドロー国家経済会議(NEC)委員長より米中の貿易戦争について、比較的楽観的な発言が出てきましたが、それでもドル円の上値は重くなっています。本日の東京時間では日経平均株価が軟調になっていることで、ドル円が113.30円付近まで下値を拡大していることを考えると、ドル円は下値を模索する動きが目先はメインテーマになるのではないかと考えられます。
今日の予定
本日の経済指標としては、英・11月建設業PMI、ユーロ圏・10月生産者物価指数などが予定されています。要人発言としては、カーニー・英中銀総裁、ブリハ・MPC委員の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。