20年かけてお金を増やす意識を持つこと

また、45歳になったら、定年後のことをしっかりと考えるべきとも話す。

「45歳くらいになると会社でのある程度のポジションもわかり、住まいや教育費など大きなお金の動きも算段がついてくる人が大半でしょう。家をどうするか、いつまで働くのかなど、将来のことを家族で話し合い、まずは現在の家計を整理することから始めてください。定年後の生活費の見積もりを立てることに加え、現状のムダが見えてくれば定年までの15~20年くらいで改善をする余地があります。

また、老後資金を作るという意味でも、これ以上、先延ばしにすると大変です。30、40年の定年後の生活を支える資金は一朝一夕ではできません。家計を見直し、節約したところでたかが知れています。20年くらいかけて“お金を育てる”意識を持つことです。

資産運用の世界では、最も大切なことの一つとして“時間”が挙げられます。元手(収入)が多くなくても、時間をかけて運用に回していくことで、まとまった資産に育てていくことができるのです。まだまだ教育費やローンなど目先の出費もあるでしょうから、収入の15~20 %程度を目安にコツコツ積み立てていくといいでしょう」

では、定年後の支出とはどんなイメージだろう。井戸氏は、定年後は現役時代とは様変わりすると説明する。

「まず、生命保険料や教育費、住宅ローンがなくなり、『日常生活費』はスリム化されます。生活費がかからなくなるのは予想されるので支出のボリュームは下がりそうですが、そのぶん、住宅のリフォームや子供への資金援助などの『イベント費用』が意外とお財布に響いてきます。

また、家電は12~13年ほどが寿命と言われているので、その買い替えなども発生する。これらを予測して、一時的なイベント費用は年間50~100万円以内で収めたいものです。

さらに定年後の話になりますが、その都度『ミニマム化』していくのがお勧めです。子供が独立したら家をコンパクトにする。マイカーの買い替えのときに小型車にするなど意識的に小さな暮らしを心がけてください」

さらに忘れてはならないのが、医療・介護費の準備だ。

「生命保険文化センターのデータによると、80代前半で約3割、80代後半では6割超の人に、介護や支援が必要になるようです。介護期間は平均約5年で、自宅介護の場合、費用は550万円程度。また、医療費に関しては、『高額療養費』という制度があり、自己負担は年間数万円です。しかし30年、40年となると合計金額は相当。250万円は見積もっておきたいものです。

このように試算すると、一人約800万円は用意しておいたほうがよい計算になります」