京セラと第二電電(現KDDI)を設立し巨大企業へと育て上げたほか、日本航空(JAL)の再生も果たした稲盛和夫氏。偉大な功績を残している稲盛氏は、人生や仕事、そして経営に関する書籍を数多く世に送り出している。稲盛氏の書籍の中から、人生や仕事について考え直すきっかけをくれる4冊を紹介する(価格は紙版・単行、税抜き)。
人生を豊かにすることの教え
『生き方―人間として一番大切なこと』(サンマーク出版、1,700円)
本書は人間の生き方だけでなく、企業や国家、そして文明や人類全体まで視野に入れた「生き方」を述べている。
自分の思いを実現させるには、熱意を持って心で求める必要があること。運命は自分の心次第で良くも悪くもなること。人生も仕事も、「人間として何が正しいのか」をシンプルに考えること。社会の役に立つことがビジネスの原点であり、社会のためを考えていれば広い視野を持つことができること。これらをはじめとした、人間として大切なことがたくさん綴られている。
稲盛氏の成功の理由は、「人間として正しいこと」を追及したことにあるという。この本は、仕事を成功させ人生を豊かにするために、どのような考え方を持てばいいのかを教えてくれる。
労働を考え、幸せな人生へと導く
『働き方―「なぜ働くのか」「いかに働くのか」』(三笠書房、1,400円)
働き方についての体験と考えを通し、働くことが人生に与える素晴らしい可能性を説いた本である。稲盛氏の言葉に、「働くということは試練を克服し、運命を好転させてくれる、まさに万病に効く薬」とある。
働くことは、人の心を高め、人をつくり、人生を好転させることができる。「心の持ち方」を変え、仕事を好きになるように働くことが大切である。努力を重ね、高い目標を掲げ、創意工夫を重ね、継続して一生懸命に働き、「できない仕事」を「できる仕事」に変える。仕事の厳しさは人を鍛えてくれる。
日々の仕事に追われ、働くことの意義を見失うことがあるかもしれない。そんなときは本書を手に取り、仕事と人生について改めて考えてみるといいだろう。
会計学からビジネスのあり方を説く
『稲盛和夫の実学―経営と会計』(日本経済新聞社、1,200円。文庫は524円)
本書には稲盛氏が京セラを経営していく過程で、一から学んだ経営のための会計学が綴られている。根本にある考え方は、「原理原則に則って物事の本質を追及して、人間として何が正しいかで判断する」である。
お金の動きに焦点をあて、物事の本質に基づいたシンプルな経営を行う「キャッシュベースの経営」や、モノ・お金の動きと伝票を対応させる「一対一の対応」、虚栄心などの贅肉を排除した「筋肉質の経営に徹する」など、ビジネスの原則となる教えがある。
この本は、経営と会計に限定されることなく、一般のビジネスマンにとっても非常に有益な「仕事はどうあるべきか」を教えてくれる。
ビジネスには激しい闘争心が必要だという提言
『燃える闘魂』(毎日新聞社、1,481円)
本書には、稲盛氏のビジネスに関する経験談と提言が綴られている。オイルショックで受注が10分の1にまで減るという厳しい状況を耐え、逆風の中で新規事業を手掛け多角化を果たした経験から、不況は成長のチャンスであると教えている。
稲盛氏は「燃える闘魂」を持ってビジネスを推進し、「世のため人のため」にビジネスの舵取りをしてきた。2010年2月には、負債総額2兆3,000億円で会社更生法の適用を受けた日本航空の再建のため会長に就任。日本航空の再建は、日本経済への影響、社員の雇用継続、国民の航空便の利便性確保という3つの意義を考え引き受けたそうだ。
ビジネスに対する心構えだけでなく、日本経済の再生シナリオについても提言している。稲盛氏の経験から導かれる「燃える闘魂」は、仕事への向き合い方を考え直すきっかけとなるだろう。
文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES
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