前日は、ブッシュ元米大統領の追悼日で米国株式・債券市場が休場となったため、市場参加者が少なく大きな方向感は出ませんでした。ただ、ポジション調整の動きが強まったこともあり、ドル円については一時113.239円まで上値を拡大する場面がありました。しかし、あくまでポジション調整の動きの一環であり、マーケットへの影響はほぼ皆無だと考えられます。ただ、中国の通信機器大手ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダ当局により逮捕されたことを受けて、米国とイラン・中国との関係悪化懸念からNYダウ先物が大幅に下落しており、日経平均株価も400円超の下落幅となっていることから、ドル円は112.80円割れの水準になっています。
ブッシュ元米大統領の追悼日ということもあり、米国の経済指標やパウエルFRB議長の議会証言などが延期されましたが、米地区連銀経済報告(ベージュブック)だけは公表され、「米経済活動は緩やかもしくは穏やかなペースで拡大」「ほとんどの地区で物価上昇は緩やか」との見解が示されました。ほぼ市場コンセンサスに沿うような内容だったこともあり、マーケットへの影響は限定的になっています。やはり、本日はリスク回避の動きが主導しているため、株安の動きが強まるようであれば、ドル円を筆頭としたクロス円は下値を模索する動きになるのではないでしょうか。
BOC(カナダ中央銀行)は、政策金利を1.75%に据え置くことを決定しましたが、声明において「貿易摩擦が世界の需要の重しとなる兆しがある」「CPIは目標の2%を上回っているものの、ガソリン価格の下落でこの先は想定以上に和らぐと予想」と指摘しており、利上げペースの鈍化を示唆しました。この声明を受け、カナダドルは急落しており、カナダドル円では85.00円付近から84.50円付近まで下落、本日は株安の影響もあり84.20円付近まで下値を拡大しています。OPEC総会を控え、産油国は大幅減産でまとまるとの見方から強気の姿勢を維持してきましたが、100万バレルを大きく超える減産を打ち出すことが出来ないのであれば、再び50ドルの節目を大きく割り込む可能性があるため、その際は資源国通貨は上値の重い展開になりそうです。
今後の見通し
OPEC総会を翌日に控え、OPECやロシアなどの非OPEC産油国がどの程度の減産で合意できるのかが焦点になっています。OPEC総会直前にて、OPEC自体の減産量は100万バレルに満たないとの見方も浮上してきており、この場合は資源国通貨(豪ドルやカナダドル)の急落を示唆しています。原油価格下落に伴う石油収入減少に対する危機感から、産油国は大幅減産でまとまるとの楽観論が大方を占めてはいましたが、ここにきて100万バレルに満たない内容での合意の可能性がでてきたことは、リスク回避の動きがさらに強まる可能性がありそうです。
カナダドルについては、上述したOPEC総会に絡む報道もそうですが、米国の要請でファーウェイ幹部がカナダで逮捕されたことをうけ、中国とカナダ間の関係悪化も懸念されています。中国外交官が「G20での習近平・中国国家主席とトランプ米大統領の会談は友好的で率直だった」と発言しているように、米中首脳会談後にて猶予期間とされている90日後においても物別れにはならないかもしれないとの思惑が強まってきた矢先に、中国とカナダ間の関係悪化の材料がでてきたことは、株式市場にとっては大打撃となり、リスクオフの地合いに傾きやすい状況になっていると考えられます。
11日に英国議会にて採決されるブレグジット法案については、ほぼ離脱案が否決されるとの考えが強まっています。議会で離脱案が拒否されるためには、労働党のほか、わずか7名の保守党議員とDUP議員の反対票が必要なだけであるため、現在の報道によると90名程度の議員が反対票を投じる可能性があります。以上のことを考えると、ほぼ否決されると考えてよさそうです。労働党は、離脱案が議会で否決された場合には、メイ英首相の不信任動議を提出する見通しです。可能性は非常に低いですが、不信任動議が可決された場合には、総選挙の再実施となるため、こうなるとポンドは急落するでしょうが、不信任動議の提出までは事前予想にて織り込まれていると考えられるため、ポンドは緩やかな下落基調を維持すると考えられます。
ファーウェイ幹部の逮捕は、株安を牽引する材料になりそうだ
欧州の先行き不透明感がマーケットを牽引していましたが、ここにきて、ファーウェイ幹部の逮捕の報道により、いままでと違った視点で株安の動きが出てきています。ただ、方向性と戦略に相違はないため、引き続き、113.50円でのショート、損切りは114.10円上抜け、利食いは112.20円での戦略は変更なしです。
海外時間からの流れ
英国議会採決前の思惑により、ポンド軟調の動きが強まりそうですが、それ以上に資源国通貨の上値が重くなっています。OPEC総会後には、この動きがさらに強まっている可能性もあるため、十分注意する必要がありそうです。ただ、ユーロについては、イタリアのコンテ首相は来週11日にユンケル欧州委員長と会談し、新たな2019年度予算案を提出する予定と報道されていることもあり、制裁が小さなものになるとの見方が強まれば、徐々にユーロ買いになる可能性がありそうです。
今日の予定
本日の経済指標としては、米・11月ADP民間雇用者数、米・新規失業保険申請件数(前週分)、米・10月貿易収支、米・10月耐久財受注(確報値)、米・11月ISM非製造業景況指数などが予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。