日本では多くの企業が人材不足という問題を抱えています。帝国データバンクの発表によると、2018年上半期の人手不足倒産は、3年連続で前年同期に比べて増えているのです。

人材不足を解消する手段として人事評価制度の整備があるのですが、人事評価制度は、高度経済成長期以降に導入した日本型経営のスタンダードであった年功序列型と、バブル崩壊以降導入する企業が増えてきた成果主義型があります。

ここではそれぞれのメリットとデメリットを比べて、これからの日本企業に求められている人事評価制度のあり方について考えます。

年功序列型は「安心できるが、やる気がでない」

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(写真=Pressmaster/Shutterstock.com)

年功序列型の人事評価制度は「年功序列型賃金制度」とも呼ばれ、勤続年数が長いほど賃金水準が高くなるというシンプルな制度です。高度経済成長期以降の日本の経済発展を支えてきた伝統的な賃金体系です。

●年功序列型のメリット
・人材の定着率の向上
・会社への帰属意識の強化
・人事評価コストの削減

●年功序列型のデメリット
・チャレンジ精神やモチベーションの低下
・社員の高年齢化による人件費の高騰

年功序列型の人事評価では、若手で非常に優秀な社員がいたとしても、勤続年数の長い社員よりも高い賃金にはなりません。日本が右肩上がりの成長を続けていた頃は、「我慢して長く勤めれば、出世して賃金も上がる」という希望を持つことができました。

しかし年功序列型の前提である、終身雇用制度が崩壊している近年の日本においては、賃金が上がるどころか、賃金が下がったり会社そのものがなくなったりしてしまう可能性さえあるのです。その結果、自分よりも仕事のできない先輩や上司が、自分より高い賃金をもらっている場合に、不満や疑問を感じてチャレンジ精神やモチベーションを下げてしまうのです。

このことから年功序列型は、業績が安定している会社においては経済や心理の面から安心感があるものの、ひとたび業績の安定という前提が崩れれば、デメリットのほうが目立ってしまう人事評価制度と言えます。

成果主義型は「やる気は出るが、殺伐とする」

終身雇用制度の崩壊が始まった1990年代以降、日本の企業がこぞって導入した人事評価制度が、欧米発の成果主義型でした。この人事評価制度の目的は個人が出した成果を評価し、それを賃金に反映させることで、より大きな成果を生ませ、それを企業全体の業績改善につなげるというものです。

●成果主義型のメリット
・チャレンジ精神やモチベーションの向上
・年功序列型の人事制度から脱却できる
・人件費の無駄を削減できる

●成果主義型のデメリット
・個別評価による人事評価コストの拡大
・ノルマ達成重視で人関係が悪化
・ノウハウの囲い込みによる人材育成の鈍化

中小企業庁が行った「人材マネジメントに関する実態調査(2008年11月)」によると、年功序列型の人事評価を重視する理由として多い順に「長期間の勤務を促し、知識・技能の蓄積を図るため」「成果主義の場合、個々の従業員の成果を評価する必要があるが、そのような評価を公平に行うことが困難なため」「個々の従業員の成果よりも、従業員の調和やチームワークの尊重が重要であるため」と、回答しています。

このことから成果主義型は、正当な評価により仕事へのモチベーションは上がるものの、それによって会社内が殺伐とした雰囲気になってしまう人事評価制度と言えます。

今の時代にあった「真の成果主義型」の導入が必要

年功序列型から成果主義型に変更して失敗している企業もあります。それは、これまで日本の企業で導入されてきた成果主義が名ばかりのもので、真の成果主義ではなかったからです。

真の成果主義型は、企業の経営理念や経営戦略に基づいて評価基準が決まるため、人間関係の悪化やノウハウの囲い込みなどは起きにくいのです。むしろそうした行動は業績を悪化させる原因を作る行為としてマイナスに評価されます。真の成果主義型は「会社が求める成果」「会社が求める努力」「会社が求める人材」を社員に対して明確に提示することで社員を育成し、社員の能力を開発する人事評価制度なのです。

終身雇用制度が崩壊した現代の日本において、もはや年功序列型を維持できるのは一部の限られた企業だけです。これからの日本企業に求められるのは、真の成果主義型の導入だと言えるでしょう。(提供:あしたの人事online

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