米国株の割高感は薄らいでいる 日銀短観、中国指標などに注目
米国株市場の動揺が収まらない。しかし、S&P500の益利回りと10年債利回りの差をとったイールドスプレッドは3.7%を超え、年初来最高水準に拡大している。株式の割高感は完全に薄らいでいる。バリュエーションが機能する米国株市場ならば、早晩、底打ちするはずである。
市場の悲観心理は根強いが、新たな材料は出ていない。米中対立の激化というが、すべてこれまでに出た話である。例えば、金曜日のナバロ発言などは、従前からトランプ氏が言っていることの繰り返しだ。
米国株式市場が底打ちしないと世界の市場も安定しない。それには、やはりFRBの金融政策の方向性を巡る不透明感払拭が必要だろう。次回FOMCが大きなヤマ場である。利上げの打ち止め感がはっきり示されれば、上述の通り、すでに金利対比のバリュエーションは株式に魅力的な水準にあり、米国株相場の底入れにつながるだろう。
重要なイベントは11日に英議会でEU離脱合意案の採決がある。すでに否決が市場のコンセンサスだが、実際に否決されればそれなりの動揺があるかもしれない。
週末の14日はメジャーSQの算出日だが、この日は日銀短観の発表がある。DIが予想より下ぶれて市場のセンチメントが悪化することには警戒が必要だ。しかし、その後、中国で鉱工業生産や固定資産投資などの指標が発表になる。前月に続いて改善となれば、こちらは市場の好材料となる。
予想レンジは2万1200円~2万1800円とする。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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