前週末に発表された米雇用統計については、焦点であった非農業部門雇用者数が20万人増には届かず15.5万人増となり、マーケットの失望を買うかたちでドル円は下落しました。ただ、112.90円付近から112.50円台に下落した程度となり、影響は限定的となりました。ただ、一時150ドルを超える上昇を見せていたNYダウが660ドル超下落する動きを見せるなど、本日の各国の株価動向によっては、ドル円は112円前半、さらには112円割れの動きになる可能性があります。

週末に行われたドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)党首選については、クランプカレンバウアー幹事長が選出されました。同氏については、基本的に現政権と同じ路線を継承すると事前に報道されていたこともあり、一旦市場は先行き不透明感が払拭できたとの考えから、ユーロドルは1.14ドル台を維持しています。また、イタリアの有力紙であるコリエレ誌が「EU、伊制裁手続き適用前に6か月の猶予を認める可能性」と報じており、ユーロについては、比較的落ち着いた動きになっています。

要人発言で気になる点をピックアップすると、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「FRBは12月の利上げ後、かなり長い間利上げを休止すると予想」と述べ、ブレイナードFRB理事は「漸進的な利上げは短期的に適切」「利上げペースはより経済指標次第になるだろう」などと発言しました。また、ブラード米セントルイス連銀総裁は「イールドカーブのフラット化を背景にFRBは12月利上げを1月に先送りする可能性がある」との見解を示すど、安定した利上げサイクルの動きが急停止しており、パウエルFRB議長のハト派寄りの見解にFRB高官が足並みを揃えてきていることも、ドル売りの材料として考えられそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

今週に関しては、ブレグジット法案に関するヘッドラインがマーケットの中心になるものと考えられます。まず、本日10日には、欧州司法裁判所が英国がリスボン条約第50条を一方的に撤回する事ができるか否かについて判断を下すと報じられています。英国が一方的にリスボン条約第50条を撤回する権利が認められれば、英国の交渉力は増す可能性が高く、「合意なき離脱」の可能性も著しく低下するでしょうが、可能性としては?非常に低いものになりそうです。

翌11日には、英下院がEU離脱協定案を巡り採決を行う見通しです。ただ、前週からちょくちょく報道されている案件ではありますが、本日もメイ英首相がEU離脱案採決の延期を発表する可能性があると報じられています。 13-14日にEU首脳会議が行われる予定であり、延期の度合に加え、延期した場合の影響度も不明ではありますが、延期が公表されるようであれば、現時点では大敗を喫するとメイ首相側が認めているとマーケットは判断するかもしれません。通常であればポンド売りに繋がりそうですが、もう少しで説得できそうなため目先延期のようなポジティブな内容であれば、それはそれでヘッドラインにて出てくるはずなので、どちらにせよヘッドライン相場は継続する見通しです。

日経平均株価が大幅安でスタートしており、引き続き中国通信機器大手ファーウェイのCFO逮捕の影響が、90日間の猶予期間に入った米中貿易摩擦への懸念材料になっています。ここにきてFRB高官が総じてハト派寄りのスタンスに切り替えてきていることもあり、これまで強いドルがマーケットを牽引してきましたが、ややトーンダウンしている感は否めません。基本的には小動きを継続するものと思われますが、112.80円付近では上値の重さが意識される展開になりそうです。

112.20-80円のコアレンジ、どちらかと言えば下抜けの可能性が高そうだ

ドル円は113円を割り込んでから、112.20-80円の非常に狭い値幅がコアレンジになっています。112.80円付近では上値の重さが意識されていることから、112.20円下抜けの可能性の方が高いと考えることができそうです。113.20円上抜けを撤退目途に、112.70-80円での戻り売り戦略。利食いについては、112円割れを想定し、111.50円をまずは週初の戦略とします。

海外時間からの流れ

パウエルFRB議長が発端となったFRBの利上げサイクル停止問題、前週末は「米国の労働市場は依然として極めて堅調である」と発言しています。ただ、雇用関連の指標は悪化しており、雇用増加数の3か月平均では17.0万人になっており、直近1年間で最も弱い数字になっています。また、2年債と3年債の利回りは引き続き5年債の利回りを上回っており、逆イールドの形状は解消されていません。この現象は、景気にとっては非常に悪い現象であり、年末に向けてドルへの不安視がクローズアップされそうです。

今日の予定

本日の経済指標としては、英・10月鉱工業生産、英・10月貿易収支、英・統計局10月度GDP月次推計発表などが予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。