1.相続放棄と自己破産

相続放棄,税金
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このコラムでは、相続放棄をした場合に免除される主な税金について解説します。相続放棄をした場合には、被相続人が残した借金の返済義務は免除されます。それでは、所得税や市民税のような国などに対する未払いについても免除されるのでしょうか。自己破産の場合には、原則として税金などの公租公課については免除されませんが、相続放棄については、公租公課であっても支払いが免除されます。

相続放棄と聞くと、「借金がある場合だけ」に行う手続きのように思う方が多くいますが、このように借金以外の「税金」の支払いも免除されるため、借金がない場合でも、相続放棄をした方が余計なコストを支払わなくてもすむケースがありますので、確認するとよいでしょう。

2.所得税

相続放棄をした場合には、被相続人に係る所得税の未払い分を支払う必要はありません。被相続人の死亡した年の所得税は、死亡日から4ヶ月以内に相続人が、申告、納付をする必要がありますが、相続放棄をした場合には、この手続をする必要もありません。また、被相続人が数年分の所得税を滞納していたとしてもその支払いを国から要求されることもないのです。

3.市民税

市民税は、1月1日現在のその市区町村の居住者に対して、その前年分の所得を基準として課税される地方税です。27年度の住民税については、26年度の所得を基準として税額が計算されます。賦課期日が1月1日であるため、1月1日より前に死亡していた場合には市民税はかかりません。

例えば26年12月20日に死亡した場合には27年度の住民税はかかりません。この点が所得税との大きな違いです。なお、27年1月20日に死亡した場合には、27年度の市民税は課税されます。既に課税対象者が死亡しているためその相続人に対して納税通知書を送りますが、相続放棄をした場合にはその支払が免除されます。

4.固定資産税

固定資産税についても所得税、市民税と同様、相続放棄をした場合には、原則としてその支払いが免除されます。ただし、固定資産税については、放棄のタイミングによっては支払わなければならなくなった判例も存在するので注意が必要です。固定資産税には、台帳課税主義という考え方があります。台帳課税主義とは、1月1日現在の登記上の所有者に形式的に固定資産税を課税するという考え方をいいます。賦課期日現在に登記上の所有者が死亡している場合には、賦課期日においてその固定資産を現に所有している者が納税義務者となります。

例えば、11月20日に死亡した者に係る相続放棄の手続を翌年1月30日に実施したとします。固定資産税の賦課期日は1月1日であり、1月1日現在の所有者に納税通知書が送られてきます。このケースでは1月1日現在において相続放棄の手続が済んでいないため、納税通知書は送られてきてしまうのです。相続放棄については相続開始日において相続人でなかったものとみなすと考えますので、この固定資産税についても1月1日時点も相続放棄の手続は済んでいませんが、その後相続放棄が認められれば相続開始日(11月20日)に遡及して相続人ではなくなるはずです。ただし、過去の判例では、このようなケースでも台帳課税主義による考え方を重視して相続放棄があったとしてもその放棄をした者に固定資産税が課税されているケースがあるのです。

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