前日に関しては、ブレグジット問題で揺れに揺れている英国で、メイ首相に関する不信任投票が行われました。結果は支持200に対して不支持117でメイ首相の勝利となり、続投が決定しました。これで、保守党はメイ首相に対する不信任投票の申し立てを向こう1年間できなくなります。議会で内閣不信任案が提出される可能性はあるものの、メイ首相が同じポジションに一定期間留まるということは、現状を考えるとベストの選択だと思われます。

時期的に不明ではありますが、離脱協定の否決後に議会の内閣不信任案が労働党から提出される可能性が高いと考えられます。不信任案が可決されれば、14日以内に新しい首相を立てて組閣する、もしくは解散総選挙の二択になりますが、保守党及びDUPが議席数を減らす可能性が高い事を考慮すると、DUP、保守党から造反が出る可能性は低いと考えていいのではないでしょうか。

一点気になるのは、ポンドの動きです。メイ英首相勝利のヘッドラインは、本日早朝6時過ぎに流れましたが、マーケットの動きとしては事前にメイ首相の勝利の可能性を織り込む形でポンド買いが進んでいましたが、発表直後はポンド円で143円付近から143.40円付近まで上昇しましたが、その後、すぐさま142.60円付近まで急落しています。事前に買われたポンドの利食いと考えることもできますが、やはり勝利は勝利でも117の不支持という数字は決して楽観できない数字であると考えられているのでしょう。目先の懸念は払拭されたものの、まだまだ乗り越えるべき壁は残っているという感じでしょうか。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

イタリアの予算案問題については、かなり進捗があったと考えられます。イタリアは欧州連合(EU)に対して2%の財政赤字目標を提案するとの報道で一時ユーロ買いが強まりましたが、イタリア当局がこれを否定したため、一時リスク回避の動きが強まりましたが、蓋を開けてみれば、コンテ伊首相が「2019年予算案を巡り、財政赤字の対GDP比率を2.04%とする目標をEUに提案」と発言すると、ユーロドルは1.1320ドル台から1.1380ドル台まで上値を拡大しました。1.9%という数字には届いていないものの、2.04%であればEU側も十分妥協できるラインであるとマーケットは判断しているのだと思われます。

本日より、ブリュッセルにてEU首脳会議が開催されます。メイ英首相は、アイルランド問題のバックストップについてEUと再度話し合う意向を表明しているものの、トゥスクEU大統領は再交渉の可能性を否定していることもあり、こちらの進展に関してはあまり期待できないと思われます。「バックストップ案なくしてブレグジットは不可能」、これはメイ英首相が発言した内容ですが、バックストップへの執着が非常に強いことが読み取れます。EU首脳会議後に、バックストップが厳しいとの判断になれば、「政府は合意なき離脱の準備を加速させる」という同じく同首相の発言がさらに意識されるかもしれません。

米中貿易摩擦については、ここにきて大きくポジティブな展開になっています。中国の国家戦略であり『中国製造2025』に関して、中国政府が10年延期して2035年を目処とする可能性が報じられたことで、米中貿易協議が一気に進展する可能性が示唆されています。また、既に劉鶴中国副首相とライトハイザー米通商代表部代表とムニューシン米財務長官による貿易協議が行われており、中国が米国からの農産物を大量に購入し、米国製自動車関税を40%から15%へ引き下げる可能性が報道されていることからも、本案件についてはマーケットの懸念事項から除外されそうです。

引き続き劣勢も、113.50円を明確に上抜けるまではショート維持

引き続き劣勢ではありますが、113.40円ショートの戦略は継続します。113.50円付近では一定の上値の重さが確認されるため、このラインが意識されれば、113円割れの動きがあってもおかしくはないのではないでしょうか。113.50円でのショートの積み増しでの平均値113.40円、損切り113.75円上抜け、利食い112.70円の戦略です。

海外時間からの流れ

英国では、とんとん拍子で保守党がメイ党首の不信任投票を実施する展開となりました。先行き不透明感が強まったことでポンドは当初売られていたものの、メイ党首が信任される見通しが強いとの観測を受けて、ポンドの買い戻しが強まりました。結果は上述した通りですが、最大の焦点としては英国議会での採決であり、こちらについては現状何も進展していない状況です。引き続き、ポンドについてはヘッドライン中心のマーケットになるのではないでしょうか。

今日の予定

本日の経済指標としては、独・11月消費者物価指数(確報値)、スイス国立銀行政策金利、トルコ中銀(TCMB)政策金利、欧州中銀(ECB)政策金利、米・新規失業保険申請件数(前週分)などが予定されています。また、ドラギ・ECB総裁の定例会見にも注目が集まります。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。