前日に関しては、市場コンセンサス通りECBは政策金利を0.00%に据え置くことを発表しました。そして、こちらも予想通りQE(量的金融緩和政策 )の終了を決定しました。償還金再投資に関しては、利上げ開始後も長期にわたり続けるとの見方を示し、大きなサプライズはありませんでした。また、 政策金利に関するフォワードガイダンスに変更はなく 、「少なくとも2019年夏の終わりまで」据え置くとの見方が示されました。
四半期ごとに発表するECBスタッフの経済予測では、「2018年のユーロ圏GDP伸び率は1.9%(9月時点2.0%)、19年GDPは1.7%(9月時点1.8%)、20年GDPは1.7%(9月時点1.7%)、21年GDPは1.5%」「2018年のインフレ見通しは1.8%(9月時点1.7%)、19年は1.6%(9月時点1.7%)、20年は1.7%(9月時点1.7%)、21年は1.8%」との見解が示されました。ユーロ圏の経済成長は軟調さが続いていますが、ECBスタッフは見通しに関して、現在の状況と比較してポジティブな見方を維持しています。引き続きデータ次第の部分が大きいものの、経済成長の加速やインフレ率の上昇が見られれば、来年9月に利上げが行われるものと考えられます。
英国のブレグジット問題については、レッドソム英下院院内総務が発表した来週の下院審議予定に離脱案採決が含まれていなかったため、英EU離脱案に対する英下院での採決は年内に行われず、年明けとなることが明らかになりました。これにより、緊迫していた状況からは一歩後退することになりますが、本日は引き続きEU首脳会談が開催されます。これといった進捗は望めそうもないですが、アイルランド問題のバックストップ案に修正が加わるかどうかというところがポイントになりそうです。
今後の見通し
モスコビシ欧州委員が「イタリアは予算に対してかなりの努力をみせた」と発言しているように、コンテ伊首相が発言した「2019年予算案を巡り、財政赤字の対GDP比率を2.04%とする目標をEUに提案」の内容が前向きに捉えられている模様です。本日も、引き続きEUとの交渉が継続しているようですが、余程のことがない限りは、落ち着くべきところに落ち着くような動きになりそうです。ユーロドルでは1.13ドル半ばから後半での推移が続いていますが、イタリアの予算案問題に決着がつけば、100ポイント程度ユーロが上昇した1.14ドル半ばから後半がコアレンジになってきそうです。
保守党の不信任投票を乗り切ったメイ英首相ではありますが、保守党議員の三分の一に当たる117名が不信任という事実は、心中穏やかではないと推測されます。同首相はEU首脳会議に出席するものの、EU側から条件を引き出せる可能性は非常に低く、来年に持ち越しとなった議会採決は否決されるでしょう。今後のシナリオとしては、英国が単一市場に残ることや、ノルウェー方式の通関同盟を結ぶことが検討されるでしょうが、ユンケル委員長が「合意なき離脱」に至った場合の準備を加速すると述べていることもあり、ポンドの上値は引き続き意識される展開になりそうです。また、同委員長は「合意なき離脱の準備に向けて一般に有用なすべての情報」を今月19日に公表すると指摘しています。
本日公表された日銀の国債買い入れオペでは、5年超10年以下が4,300億円となり、前回の4,500億円から減額されました。これを受けて、マーケットは円買いの動きが強まっています。 日経平均株価が400円超の下落になっていることも、ドル円を筆頭としたクロス円の上値の重さに繋がっていると考えられます。また、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が民間エコノミスト60人を対象に実施した調査によると、来年のFRBによる利上げ回数の予想中央値は2回と、先月の調査の3回から減少し、FRBが2020年から利下げを始めるとの予想が多かったとの報道もあり、ドル円の上値がやや意識されています。翌週にFOMCを控え、本日は週末ということもあり、このような材料があることからドル円は一旦利食い先行の動きが強まるのではないでしょうか。
引き続き劣勢も、113.75円を明確に上抜けるまではショート維持
引き続き劣勢ではありますが、113.40円ショートの戦略は継続します。113.50円付近では一定の上値の重さが確認されるため、このラインが意識されれば、113円割れの動きがあってもおかしくはないのでしょう。週末要因で利食い先行の動きが強まりそうなことも、プラスの要因として捉えています。113.50円でのショートの積み増しでの平均値113.40円、損切り113.75円上抜け、利食い112.70円の戦略です。
海外時間からの流れ
トランプ大統領が「FOMCがこれ以上利上げしないように望む」と発言しているように、これまで順調な利上げが当然になっていたFRBの立ち位置が微妙になっています。来週の利上げは既定路線に乗っているものと思われますが、来年度の利上げについて鈍化の方向性が示されるようであれば、ドルの失望売りが出てくる可能性が十分考えられそうです。
今日の予定
本日の経済指標としては、独・12月製造業/サービス業PMI(速報値)、ユーロ圏・12月製造業/サービス業PMI(速報値)、米・11月小売売上高、米・11月鉱工業生産などが予定されています。また、要人発言では、デギンドス・ECB副総裁、ノボトニー・オーストリア中銀総裁、ラウテンシュレーガー・ECB専務理事、アンジェローニ・ECB銀行監督委員の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。