かわいい孫の帰省を心待ちにする祖父母は多いはずだ。義次さん(63歳)も長男の孫二人をかわいがり、お正月にはついつい財布の紐も緩みがちだ。
そこで義次さんは、今年のお正月は、太っ腹で孫二人に100万円ずつをお年玉として渡すことを決めた。
すると孫よりも子である長男が喜びながらも、こんなにたくさん貰ったら、税金がかかるんじゃないか?と不安な顔を見せた。
年間110万円までならセーフ、ただし注意点も。。
結論からいうと、年間110万円以内の贈与であれば、たとえお年玉が100万円であっても、税務上は問題はない。これは、贈与税という税金に、年間110万円までなら税金を免除する非課税枠という控除が定められているためだ。
では田舎に親戚が多く、何十人という親族から数千円ずつもらったお年玉が110万円を超えた場合にはどうなるだろうか?
この場合にも、贈与税の心配はない。というのは、年末年始の贈答で「社会通念上相当」と認められるものは、そもそも贈与税の対象外であるという規定があるためだ。
一方でおじいちゃんから100万円、おばあちゃんから100万円で合計200万円といったように、社会通念上お年玉の額としては相当と認めにくい額をもらった場合には、贈与税のリスクが生じる。
しかし税務上、しばしば登場するこの「社会通念上相当」という言葉は、曖昧な表現であり、問題になることも多い。
生活費や教育費も非課税!?
お年玉に限らず、夫婦や親子、兄弟姉妹間といった間柄での生活費や教育費の贈与も、通常と必要と認められるものは贈与税の対象とならない。
例えば、自分の子が上手く定職に就けず、アルバイト収入のみで生計を立てているような場合に、子の生活費を親が援助することは問題ない。
具体的には、子の月のアルバイト収入が10万円の場合に、親が月15万円を援助し、年間で180万円(15万円×12ヵ月)の贈与を行った場合には、110万円を超えてはいるが、子に贈与税はかからない。
一方で、同居している独身の子の月の収入が30万円あるようなケースで、親が月に30万円をお小遣いで渡し、さらに外車を買ってあげるというような生活費の渡し方をしたような場合には、贈与税の課税リスクが生じる。
また孫が医学部に行くための入学金や授業料といった教育費に該当するものであれば、贈与税は生じない。医学部であれば、数千万円単位での教育費が必要となることもあるが、あくまで教育費であるため贈与税の対象外となるのだ。これは医学部に限らず、通常の大学や高校にかかるものであっても非課税となるため、相続税対策も兼ねるのであれば、孫のためにもなり、一石二鳥だ。
そうすると、昨今流行っている「1500万円までの教育資金贈与特例」は、何か?と疑問に持つかもしれないが、この特例は「将来の教育費を一括して前渡し」できる点が特徴である。都度の贈与を予定している方は、わざわざ利用しなくてもよいという見方もある。
しかし「社会通念上相当」「通常必要と認められるもの」の範囲を一律に定義付けすることは難しく、それぞれの家庭の財産事情により、その意味は異なると考えておいたほうがよい。
いずれにしても、年間110万円を超えるような資産を、誰かに渡しているような場合で、少し「渡し過ぎている」といった感覚があるような場合には、一度、税理士へ相談することが望まれる。そうしないと後で、税務署から思わぬ指摘を受ける可能性がある。
(提供:チェスターNEWS)