中小企業経営者が子どもに事業承継をする時、会社を永続的に繁栄させるためにどうすべきなのかを伝える事が重要です。後継者がいくら高い能力を持っていたとしても、従業員や取引先、協力先のことも考えたうえで経営を行わなければ会社の成長が止まる可能性もあるのです。そこで、経営者が子どもに事業承継をする時、経営者としての心構えをどのように伝えればよいのかを考えてみましょう。
なぜ事業承継では後継者に心構えを伝える必要があるのか
会社経営をする上で、経営者は幾多の苦難を乗り越えて現在のように会社を維持しています。しかし、後継者はそういった過去の事象を知らずに事業承継することになるのです。会社経営のノウハウや売上を上げることも大事ですが、これまでの会社の歴史や自分の思いや、一緒に働く従業員とその家族を養うという覚悟がどれだけ重要かを伝えなければ会社は成り立っていかないでしょう。
なぜなら、会社は経営者、株主、そして一緒に働く従業員のもとに成り立っています。経営者としての心構えや一緒に働く従業員たちの生活を守るという意志がなければ、どんなに経営者として優秀だとしても、従業員たちがついてこず、離職率が高くなったり、社内不和が起こりがちになります。目標に対する評価はシビアに行わなければなりませんが、働き方改革のもと、今の時流に沿った仕事と家族の両方を大事にするスタンスを持ち、経営にあたらなければなりません。
後継者に伝えるべき5つの心構え
それでは、事業承継する後継者に伝えるべき心構えとはどのようなものかを確認します。
●従業員とその家族の生活を第一優先に考える
会社は売上を上げ、利益を生み出さなければ存続していきません。ただし、その根幹には働く従業員たちがいます。いくら長時間労働を行ったとしても、それがもとで家族との生活がうまくいかなければ仕事にも悪い影響が出かねません。そのため、従業員とその家族の生活を最優先に考えましょう。お客様第一で従業員は二の次という会社もあるかもしれませんが、同じように大事なものだと考えましょう。
なぜなら、従業員とその家族の幸せは自社の製品・サービスを買ってくださるお客さまに幸せになっていただくために必要な要素です。従業員が幸せではないのにお客さまに良い接客・提案ができるわけがありません。幸せを感じていない従業員が説明する製品がお客さまを幸せにすることはないのです。
●公私混同をしない
会社は経営者だけのものではありません。従業員や株主、お客さま、取引先の人たちなど、多くの人の協力があって初めて成り立ちます。ですから、公私混同をして会社を私物化してはいけません。私物を会社に持ってくる、会社の経費で私物を購入して使用するなど、会社は自分のものだと豪語するような態度や行動は到底認められるものではありません。自分自身を従業員の立場に置き換えてみれば容易にわかることでしょう。
●社会や社内ルールを守る
社会のルールは必ず守らなければなりません。同じように社内ルールも遵守すべきです。経営者が率先してルールを破れば従業員もルールを簡単に考えてしまいます。従業員から不満が出るのは当然です。また、ルールだけを守ればよいのではありません。社会からの要請に応えられるよう、強い倫理観を持つことが重要です。
●感謝の気持ちを忘れない
経営者が驕ってしまってはいけません。人間は一人では何もできません。お客さま、一緒に働いてくれる従業員、育ててくれた父母、いつも支えてくれる配偶者、子どもなど、関わったすべての人への感謝の気持ちを持って経営する精神が大事です。周囲の人を大切にする気持ちは必ず自分に返ってきます。
●常に前を向き、努力する
世の中は変化し続けます。今流行っているものが1年後も流行っているかどうかは誰にも分かりません。社会に貢献するため、従業員やその家族の生活を支えるために、常に道を指し示し、精進し続けなければいけません。時には、困難に遭遇することもあります。しかし、従業員に苦しい気持ちを見せない確固とした覚悟が必要です。
事業承継時、心構えをどう伝えるべきか
では、事業承継にあたり、こういった心構えをどう伝えるのが大事なのでしょうか。それは、行動で示すのが一番です。いくら口で言ったところで自分が本当に思っていなければ意味がありません。後継者とともに仕事を行ない、ともに日々を過ごす中で経営者としてのあり方を自らが体現するのが、後継者には一番伝わります。
また、後継者も経営者と一緒に仕事をしていく中で経営者の会社に対する思いが伝わって、会社を承継するという思いが芽生えて来るのです。言葉で伝えることだけが全てではありません。行動することが、時には言葉以上に雄弁に物事を語る場合もあります。
会社の在り方や人々のライフスタイルや働き方は時代とともに変わっていきますが、「思いを伝える」ことは、一緒に行動して自らが示し、言葉にして伝えるのです。これが一番後継者に伝わる心構えだといえるでしょう。(提供:企業オーナーonline)
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