貿易収支(季節調整値)は5ヵ月連続の赤字
財務省が12月19日に公表した貿易統計によると、18年11月の貿易収支は▲7,373億円と2ヵ月連続の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲5,796億円、当社予想も▲5,796億円)を下回る結果となった。輸出が前年比0.1%(10月:同8.2%)とほぼ横ばいにとどまる一方、既往の原油高の影響などから輸入が前年比12.5%(10月:同19.9%)と二桁の伸びを維持したため、貿易収支は前年に比べ▲8,425億円の悪化となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.9%(10月:同3.8%)、輸出価格が前年比2.1%(10月:同4.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.2%(10月:同10.3%)、輸入価格が前年比7.9%(10月:同8.7%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲4,922億円と5ヵ月連続の赤字となり、赤字幅は10月の▲2,882億円から拡大した。輸出入ともに前月比で減少したが、輸出の減少幅(前月比▲3.0%)が輸入の減少幅(前月比▲0.1%)を上回ったことが貿易赤字の拡大につながった。
11月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=81.9ドル(当研究所による試算値)と、10月の79.3ドルから上昇したが、足もとのドバイ原油価格は50ドル台後半まで大きく下落している。通関ベースの原油価格は市場価格の動きが遅れて反映されるため、12月に60ドル台後半、19年1月には60ドル台前半まで低下することが見込まれる。足もとの貿易赤字拡大は既往の原油高の影響が大きいが、先行きは原油価格の下落が貿易収支の改善要因となる。その一方で、輸出は低調な推移が続くことが予想されるため、貿易収支が黒字に転じるまでには時間がかかるだろう。
輸出の減速傾向が一段と強まる
11月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比1.9%(10月:同10.1%)、EU向けが前年比6.3%(10月:同6.9%)、アジア向けが前年比▲4.5%(10月:同1.3%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比0.5%(10月:同3.8%)、EU向けが前月比▲0.8%(10月:同10.9%)、アジア向けが前月比▲1.9%(10月:同4.1%)、全体では前月比▲1.9%(10月:同3.8%)となった。
10月の輸出数量は自然災害に伴う供給制約が解消されたことから高い伸びとなったが、11月は再び前月比でマイナスとなった。10、11月の輸出数量指数(季節調整値)の平均は7-9月期を0.7%上回っているが、自然災害によって押し下げられる前の4-6月期の水準を▲2%程度下回っている。
製造業PMI(購買担当者指数)は17年末をピークに低下傾向が続き、日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)も18年入り後は緩やかに低下している。
すでに欧州、新興国経済の減速は明確となっていたが、好調が続いていた米国経済もここにきて拡大ペースが鈍化している。外部環境が厳しさを増す中、輸出の減速傾向は一段と強まっている。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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