株式投資の熱心な支持者であるウォーレン・バフェット氏は、バークシャー・ハサウェイを世界最大の持ち株企業に成長させた類まれな才覚の持ち主です。長年にわたり株式投資に積極的な反面、金(ゴールド)に消極的な理由を、バフェット氏が自ら明かしています。

初の株式投資は苦い思い出?

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(写真=aradaphotography/Shutterstock.com)

バフェット氏が初めて株券を購入したのは1942年、11歳の時です。第二次世界大戦最中の不安感から多数の投資家が安全資産である金に投資していたにも関わらず、株式投資の将来性を見抜いたバフェット氏は、姉のドリスとともに石油サービス企業シティーズ・サービスの株を1株38ドルで6株購入しました。

ところが購入後わずか数週間で、株価はほぼ3分の1値下がりしてしまいます。ドリスは何度も売却を提案しますが、バフェット氏は株価が40ドルに値上がりするまで辛抱強く待ち、結果的に合計12ドルの利益を出しました。

この話には後日談があります。売却後、株価はさらに値を上げ、最終的に200ドルを超えたのです。バフェット氏にとっては「もう少し待っていれば、さらに大きな利益を得られたのに」という苦い経験となりました。

しかし「投資はタイミングが重要」という貴重なレッスンを学んだといいます。投資を成功させ最大限の利益を得るためには、正確な市場予想と適切なタイミングが重要なカギを握ります。この経験は、長期的な利益を重視するバフェット氏の投資スタイルの原点となっています。

「金はなにも生みださない」

株式投資の魅力や利点について、機会あるごとに自らの見解を示してきたバフェット氏ですが、安定資産として人気の金はまったく保有していません。銀(シルバー)には10億ドル相当を投資しているので、貴金属への投資が嫌いという理由ではなさそうです。

同氏の「投資原則」のひとつに、「有用であり、なんらかの目的を果たし、実用的な必要性を提供するものに投資すべき」というものがあります。この原則に基づいて考えると、銀は工業や医療分野での用途が多数ありますが、金にはそれほど頻繁に実用化される機会がありません。

企業がより多くの工場や新たな発明に再投資することで社会に貢献しているのに対し、金は貸金庫で眠っているだけです。例えば1942年から現在まで、企業は様々な商品やサービスを世の中に送りだしましたが、金は形を変えることすらありませんでした。

金銭的な利益に関しても、バフェット氏いわく、1942年に当時はまだ存在しなかったS&P 500 インデックスファンドに1万ドル投資していれば、現在は5100万ドルに増えているそうですが、金に投資していた場合は40万ドルにしか増えていません。

「金を眺めたり、なでたりできるが、そこからはなにも生まれなかった」という言葉は、そこに起因します。バフェット氏の投資理念に基づくと、金は非生産的な投資といったところでしょうか。

MMFや債券も「高リスクな資産」?

また、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、債券、住宅ローン、銀行預金など、一般的には「安全」と見なされている資産が、実は「最もリスクの高い資産」である点をバフェット氏は指摘しています。

「投資リスクはベータ値で測定するものではなく、その商品を保有することで生じる購買力を失う可能性で測るべき」と考えおり、「ベータ値(個別証券と市場の連動性を示すリスク指標)がゼロであっても、リスクは高い」というのがその理由です。

投資で将来的なリターンを期待するのは当然ですが、同じ投資するのであれば、長期的に様々な意味で利益を生みだす商品を選ぶべき--ということを、バフェット氏は伝えようとしているのでしょう。

文・アレン琴子(英国在住フリーランスライター)

(提供:JPRIME


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