iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、個人が任意で加入するかしないかを決められる年金制度の一つです。必ずしも加入する必要はないのですが、加入して積み立てを続けることで所得控除をはじめとする税制上の優遇措置を活用することができます。

iDeCoの税制優遇策のうち、所得控除が2種類、それ以外にも1種類あるため少し理解しにくいかもしれません。ここでは、合計3種類の税制優遇策の概要について簡単にご説明します。

掛金が全額控除!毎年の節税効果の計算法

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(写真=Dean Drobot/Shutterstock.com)

iDeCoの掛金は、所得から控除されます。iDeCoは定期預金やつみたてNISAなどと同じように、毎月決まった掛金を積み立てていく「積立投資」の一種といえます。この決まった掛金が自分の所得から差し引かれるのです。

例えば、iDeCoに毎月2万円、年換算で24万円を積み立てているとします。この24万円は、年末調整や確定申告の際に所得から控除されるため、所得税や住民税の課税対象とはなりません。控除された24万円の分だけ課税所得が目減りするため、節税になります。

実際の節税金額は、自分の所得や毎月の掛金によって変動します。同じ24万円の所得控除でも、年収300万円の人なら約3万6,000円の節税となるのに対し、年収1,000万円の人なら約7万2,000円の節税となる計算です。これは、所得税が累進課税であり所得が高いほど税率も上昇する構造だからです。所得が高いほど、iDeCoによる節税額も大きくなります。

自分がどれくらい節税できるか大まかに知りたい場合は、iDeCoの各種ポータルサイトのシミュレーション機能を利用して計算してみるとよいでしょう。ただし、住宅ローン控除やふるさと納税、配偶者控除など多くの要素が関連してくるため、実際の節税額はシミュレーションに表示された額と異なる可能性があります。

退職一時金か年金か?受け取り方法で控除内容が変わる

60歳を過ぎると、iDeCoで積み立ててきたお金を「老齢給付金」として受け取ることができます。この受け取り方には2種類あります。まとめて受け取る退職一時金形式、そして毎年少しずつ受け取る年金形式です。iDeCoでは、受け取り方によって受け取る時の所得控除内容が変わります。

退職一時金形式では、「退職所得控除」が適用されて退職所得に対する課税額を減らすことができます。退職所得控除額は勤続年数(iDeCoなら「加入年数」)に応じて増える仕組みとなっており、たとえば加入15年なら600万円、30年なら1,500万円まで控除されます。仮にiDeCoの積立金額がこの金額を下回れば、完全に非課税でお金を受け取れることになります。

一方の年金形式だと、「公的年金等控除」を受け取った額から差し引くことができます。公的年金等控除額は年齢と公的年金合計額に応じて異なっており、たとえば65歳未満で200万円の受け取りだと87万5,000円、65歳以上で400万円の受け取りだと137万5,000円がそれぞれ控除されます。

注意したいのは、どちらも「受け取った退職金/年金の合計額」に対して所得控除が適用される点です。退職所得控除は、iDeCoの退職一時金だけでなく、確定給付型の企業年金を始めとした退職金まで含めて適用されます。公的年金等控除も、国民年金や厚生年金まで含めた合計額に対して適用されます。手厚い給付額を受け取れるようにしていると、控除額を上回るケースが多いでしょう。

以上のように、iDeCoでは将来の受け取り時にも所得控除を適用する仕組みを採用しています。勤めている企業の加入する年金制度によって控除額が変わってきますから、よりお得にお金を受け取りたい人はそちらの制度をチェックしてみましょう。

iDeCoの3つ目の税制優遇「運用益の非課税」

iDeCoには、2種類の所得控除以外にも税制上の優遇策が設けられています。それが、「運用益の非課税」です。iDeCoで積み立てた掛金を運用している間に出た利益には、税を課せられないのです。

本来、資産を運用している間に得られる利息や値上がり益などについては、所得税や住民税、復興特別所得税が課せられます。たとえば、金融機関の普通預金に預けていると利息に対して20.315%の源泉税が徴収され、株式の売却時や投資信託の解約時に利益が出た場合でも20.315%の税金が差し引かれます。

しかしiDeCoであれば、税金として差し引かれるはずの分まで再投資に回せるため、より効率的な運用が可能となります。毎月2万3,000円を30年間積み立てて年利3%で運用したとすると、20.315%の税金を含んで考えれば約1,206万円となります。それに対して非課税で計算すると約1,334万円となり、税金を考慮したケースと比べて約128万円もの差が生じます。同じ積立額、同じ運用成績でも税金の有無でこれだけの差が生じることを考えると、iDeCoの優位性が理解できるでしょう。

このように、国の用意した制度であるiDeCoには手厚い税制優遇策が3つも設けられています。将来の年金額に不安を感じている人は、iDeCoで積立を始めることが有力な老後資金対策の一つとなるかもしれません。(提供:Incomepress

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