国民の投資意欲を喚起すべく、2014年に「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」という制度が開始されました。しかし初心者が長期投資を行うのに、NISAが適しているとは言えないのです。今回は、NISAが長期投資向きではない理由をご説明するとともに、より長期投資に適したつみたてNISAおよびiDeCo(イデコ)についてご紹介します。
NISAの概要と長期投資に向かない3つの理由
NISAは、2014年1月にスタートした非課税制度です。最長5年間、毎年120万円まで株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益(売却によって得られる利益)が非課税となります。
本来であれば、配当金・分配金や譲渡益には所得税や住民税、復興特別所得税が合計で20.315%課せられます。ところが、NISAの枠内で投資を行えば、利益が出ても非課税となるのです。こうした税制優遇措置を設けることで、国民の投資意欲を高めることを目的としていました。
しかし長期投資をするという観点から考えると、NISAはあまり適していません。そもそも非課税投資期間は最長5年間に過ぎず、非課税での投資可能期間は2023年までと定められています。非課税期間が過ぎても、「ロールオーバー」という仕組みを利用することでさらに最大5年間は運用を続けられますが、新たにNISA枠で売買をすることはできません。期間満了後は、手続きしてNISA口座から特定口座ないし一般口座へ移動させることになります。
加えて、5年ほどの運用期間では元本(購入したときの価格)割れのリスクがあります。金融庁によれば、資産や地域を分散した積立投資を長期間続けるほど、元本割れする可能性は低くなる傾向にあります。運用期間5年では長期投資とは言いにくく、資産や地域を分散することでリスクを軽減できたとしても、リーマンショックのような経済危機が発生した場合には大きく元本割れする可能性もあるのです。
さらに損失が出た時に、「損益通算」を活用できないというデメリットもあります。損益通算とは、株式等の売却によって発生した損失を利子や配当金と相殺する仕組みです。5万円の譲渡損失と10万円の配当利益があった場合、10万円がそのまま課税対象となるのでなく、両者を相殺して残った5万円(10万円−5万円)が課税対象となるのです。
NISAではこの損益通算を活用できない決まりになっているので、非課税期間終了時に売却して損失が出てしまったら単なる損失で終わってしまうわけです。
まとめると、「非課税投資期間が短い」「5年だけでは元本割れのリスクがある」「損益通算ができない」という3つの理由により、NISAは20年や30年以上の長期投資には向いていないということになります。
つみたてNISAやiDeCoで20年以上の長期投資が可能
NISAよりも、つみたてNISAやiDeCoの方が20年以上の長期投資に向いていると考えられます。つみたてNISAはNISA(一般NISA)と併用はできませんが、最長で20年間、毎月40万円まで非課税で投資できます。初心者が長期投資を考えた場合、まずはつみたてNISAを利用するというのが最もやりやすいかもしれません。
ただし、つみたてNISAの非課税期間は2037年までとなっていますので、2019年に口座開設したら最長で19年間、2020年口座開設なら最長18年間……と少しずつ非課税期間は短くなっていきます。少しでも長い期間投資を続けたいなら、早めに口座開設を済ませた方がよいでしょう。
他方のiDeCoは、「個人型確定拠出年金」とも呼ばれる年金制度の一つです。NISAやつみたてNISAと同じく運用益が非課税となるのに加えて、積み立てた掛金が所得控除となるメリットがあります。60歳まで続けられますので、現在35歳であれば最長25年間、20歳であれば最長40年間が非課税期間となります。
NISAないしつみたてNISAと併用できるメリットもある一方で、運用中は原則としてお金を引き出すことができません。掛金は自由に決められますが、家計を圧迫しすぎない程度の金額にとどめた方がよいかもしれません。
長期投資によって将来的な資産形成や老後資金の準備を目指すのであれば、NISAよりもつみたてNISAやiDeCoを活用する方が目的に適していると言えるでしょう。
初心者が長期投資するなら積立投資がおすすめ
つみたてNISAとiDeCoに共通しているのは、どちらも長期投資であるとともに「積立投資」でもあるという点です。積立投資とは、定期的にお金を積み立てるタイプの投資です。いわば定期預金と似た形で定期的に口座からお金が引き落とされ、つみたてNISAやiDeCoの口座に移されるわけです。
積立投資のメリットは、最初に設定だけを済ませればよいという手軽さにあります。設定さえできれば、後は自動的に同じ金額が口座から引き落とされます。毎日株価のチャートに張りつくようにしてチェックする必要もありませんので、日々落ち着いて投資に向き合うことができます。
つみたてNISAやiDeCoのほうがNISAより長期投資に適しているのは、積立投資という側面があるからです。長期間にわたって投資を行うのであれば、ストレスの少ない積立投資が続けやすいでしょう。(提供:Incomepress )
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