シンカー:米国の景気後退は、まだ先で、あったとしても構造調整の深いものではなく、速度調整の浅いもの(2四半期連続の前期比マイナス成長となっても、通年ではプラス成長を維持)になると引き続き予想している。家計の貯蓄率がまだ上昇していることは減税効果の剥落まで時間がかかることを示し、FRBの利上げが引き締め水準にまだ達していない中で効果のラグも存在するからだ。一方、メインシナリオではないが、もし米国の景気後退が早く訪れ、しかも深いものであった場合の、日本へのインプリケーションはどうであろうか。まずは、1月に3兆円規模の2018年度の第二次補正予算案が国会を通過した後、更なる景気対策としての第三次補正予算案が出てくることになるであろう。更に、6月の大阪でのG20に向けて、日本の内需拡大に対するコミットメントを強くし、各国にも米国の需要に頼らない経済政策方針を促さなければならない。結果として、3月末までに2019年度の本予算が国会を通過した後、4・5月に消費税率引き上げを再び先送りするため、本予算を大幅に組みかえる補正予算案が出てくる可能性が高まるだろう。消費税率引き上げによる税収見込みの減少でも、歳出規模はそのままになる景気刺激型となる可能性もある。日銀も追加金融緩和に動くことになるだろう。株式市場の全般的なリスクプレミアムが上昇したと判断できるため、手段としてはETFの買い入れの大幅な増額が候補だろう。これまでとは違い、額は大きいが、追加的な部分の買い入れは短期間に集中的に行われるものになるかもしれない。FRBの利上げの継続が影響しているとみられる今回の株式市場の混乱は、これまでの利下げが緩和効果が小さかったとしても、利上げの引き締め効果も小さいとは言えないことを明らかにしたようだ。政策効果は上下に非対称的であるということだ。日銀が金利を引き上げた方が景気拡大を促進する、またはイールドカーブのスティープ化による緩和の副作用の軽減を主目的にするような議論はなくなっていくことだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

最新のSGグローバル・レポートと要約

●米国経済(12/20):12月FOMC:誰に対しても、何らかの意味がある内容

FRB発表の内容は総じて弊社見込み通りで、2019年の利上げ回数は(3回ではなく)2回と示され、中立金利の推定値も引下げられた。SEP(FOMC参加者の経済見通し要約)はハト派的な内容だが、声明はタカ派的な方向に動いた。FOMCは「多少の緩やかな追加利上げが」正当化されると述べていた。弊社は、2019年3月と6月に25BP利上げが実施される、という基本シナリオを変えない。

●欧州経済(12/21):欧州委、来春にイタリア(とフランス)との協議入りも

欧州委員会とイタリア政府は、熱の入った交渉を数週間続けた後に、イタリアの2019年予算で合意に達した。だが弊社の見たところでは、体面を繕ったという面もある(財政赤字を理由にフランスを制裁しないことに対する批判を避けるのではなく(参照)、イタリア政府の従来より協力的な姿勢を評価したとみられる)。実際、様々な対策を額面通り受取っても、イタリアが、財政赤字や構造的財政収支の変化に関する新目標に到達するとは(それどころか近づくことさえも)考えづらい。もっとも欧州委員会は、過剰赤字是正手続き(EDP)を勧告しないと決定した(このため、財政ルールが機能していると主張することもできる)。

だが、ストーリーはまだ終わっていない。まず、欧州委員会は来年2月まではEDPを勧告することができる。またイタリア議会で(財政是正策が)可決されない場合は実際にも勧告するとみられる。2点目に、欧州委員会は来年春の終わり(おそらく欧州議会選挙の数日後)に、イタリアへのEDP発動の勧告を再検討する可能性が非常に高い。またそのときには、フランス(とベルギー)も欧州委員会の警戒対象になるとみられる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司