一つの組織の中に閉じこもらず、会社の壁を越えて仕事をしよう

世界的な経営コンサルティング会社・A.T.カーニーで長年活躍する梅澤氏。個別のクライアント企業のビジョン策定や課題解決と並行して、50代になって新たな仕事のスタイルを始め、刺激を受けているという。その転機となった出来事とは?

仕事術,梅澤高明
(画像=THE21オンライン)

私は、2020年の先を見据えて東京の将来ビジョンを構想し、東京に必要な様々な仕掛けを実現していく「NEXTOKYOプロジェクト」のリーダーとしても活動しています。

このプロジェクトが生まれたきっかけは、51歳のときに参加した、2014年のG1サミットでした。

G1サミットは、経営者、政治家、学者、文化人などが参加して、年に1回開催されている、招待制のカンファレンスです。その中で、テーブルごとにテーマを決め、各自が興味のあるテーブルについて、同席した人たちと議論を交わす分科会が行なわれます。

その年、私は、「2020と東京」がテーマのテーブルにつきました。半年ほど前に、2020年のオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まり、デベロッパー各社が東京の再開発計画に続々と着手していた時期でした。

そこでの議論が刺激的だったので、カフェ・カンパニーの楠本修二郎さんと一緒に、他の同席者数人に声をかけて作ったのがNEXTOKYOプロジェクトの原型です。その後、メンバーを増やして、現在の12人から成るチームへと発展しました。

このチームは、デベロッパーや自治体との街づくりを中心に多岐にわたる活動を進めています。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アートと東京大学生産技術研究所の共同ラボ「RCA-IIS Tokyo Design Lab」の設立、風営法改正とナイトタイムエコノミー推進の作戦づくり、経済産業省・特許庁の「デザイン経営宣言」の草案作成なども、このチームが中心に推進してきました。

初期のビジョン策定の段階では定期的に全体会合を持ちましたが、今は個別の案件ごとにサブチームを組成し、サブチーム同士が有機的に連動して動いている形です。

NEXTOKYOでの動き方は、従来の仕事のスタイルとは違います。会社の壁を越え、「この人から学びたい」と思う人たちと一緒にプロジェクトを進めることで、大いに知的刺激を受けながら、結果として高い生産性を実現しています。

会社員として仕事をしている読者の皆さんにも、会社の壁を越えたチームで、様々なプロジェクトに取り組むことをお勧めします。

「人生100年時代」と盛んに言われ、職業人生も長くなっています。ずっと一つの仕事をしていればいいわけではなく、「多毛作」をしなければなりません。そのためには、いつまでも学習し続け、自分の幅を広げ続けなければならない。そうしたマインドを持ち、そのための行動を取ることは、一つの組織の中だけに閉じていては難しいでしょう。

お金にならなくても、社外の人と一緒に何かのプロジェクトに関わる。また、もし社内起業の機会があれば、社外の人たちと協力して仕事をするチャンスなので、積極的に手を挙げる。たとえ、そのプロジェクトがうまくいかなくても、そこでできた人脈は、長い人生のどこかで仕事の役に立ちますし、人生も楽しくなりますから。

梅澤高明(うめざわ・たかあき)A.T.カーニー日本法人会長
1962年生まれ。東京大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学経営学修士。日産自動車〔株〕を経て、A.T.カーニーに入社。日米で20年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)コメンテーター。デザイン、イノベーション、観光・ナイトタイムエコノミーなどのテーマで政府委員会の委員を務める。著書に『グローバルエリートの仕事作法』(プレジデント社)など。(『THE21オンライン』2018年10月号より)

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