子どもや孫に財産を残すために、彼らの名義で銀行口座を作り、そこにお金を入れるというのはどの親、祖父母でも経験があることでしょう。しかし、善意で行ったその行為が、相続の際にトラブルを生むかもしれません。借名口座で気をつけるべきポイントと、安全に資産を残す方法について解説します。

借名口座は、そもそもは「違法行為」である

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(写真= Titipong Chumsung/shutterstock.com)

まず、頭に入れておきたいのは、借名口座は、そもそもは違法行為であるということです。借名取引全体を見ると、家族や親族など、自分以外の名義を使って取引すること全般を指しています。こういった取引は、脱税やマネーロンダリングの温床になる危険性があるとして、法令により禁止されているのです。

多くの場合、金融機関も子どもの口座を親権者が作ることは認めていますし、一般的に犯罪性のないものは見逃してくれることも多いですが、家族の口座だから良い、子どもの口座だから良い、というのはケースによっては通らないということです。子どもの口座や孫の口座を作る場合は、まずこのことを頭に入れておくとよいでしょう。

借名口座で摘発されるケースとは?

では、どういう場合であれば、「借名口座」として、税務署から摘発を受けるケースがあるのでしょうか。税務署が税金逃れだとして摘発するのは、「名義人の口座として取引実態があったかどうか」です。具体的に注意すべきポイントは以下の3点です。

1つ目は、「その口座の存在を、名義人が知っていたかどうか」です。例えば、孫にその存在を知らせることなく、祖父母が口座を作っていたとします。その場合、実態的には祖父母の口座だったということで、その口座の預金に対し相続税が発生するケースがあります。

2つ目は、「口座管理をだれがしていたか」という点です。上記のケースを見てみましょう。仮に、孫が口座の存在を知っていたとします。しかし、孫がその通帳や印鑑を一切持っておらず、口座の管理を祖父母が行っていたとします。この場合であっても、実態的に口座を管理していたのが祖父母のため、祖父母の口座と実質的には見なされる可能性があります。

3つ目は、「そのお金がだれのものであるか」というケースです。もちろん上記のケースの場合、お金は祖父母から出ています。裁判等では、この「お金が元々だれのものか」というのもポイントになることが多いのです。

子ども、孫の口座に安全に資産を残す方法とは?

では、どうすればこういった摘発を避けて安全に子ども、孫に資産を預けることができるのでしょうか。

1つは、まずは、口座の名義人である子ども・孫にその事実を伝え、贈与契約書をきちんと作ることです。結局のところ、争点というのは、この口座のお金が相続の対象になるかどうかだからです。きちんと贈与契約書を作っておいて、その事実を子どもに伝えることです。これは、子どもや孫が複数人いた場合に、子ども同士、孫同士で争わないためにも重要です。

もう1つは、あえて年間110万円以上その口座に入れ、贈与税を支払うことです。贈与税を払っていれば、そのお金は贈与したものとみなされます。贈与税は、110万円までは基礎控除の対象になります。なので、110万円以上を数年に一度口座に入れ、きちんとその分の贈与税を払うことで、逆に、「このお金は贈与した、名義人そのもののお金だ」ということを明確にするのです。

きちんと証拠をそろえることで、次世代に資産を安全に渡そう

借名口座は税務調査の対象になることが多くあります。もちろん、贈与契約書や贈与税の納税で完全に税務調査がなくなるかというとそうではありません。ただこういった証拠は、仮に摘発されても確かな証拠になり税金逃れとされることは避けられるでしょう。多少手間はかかりますが、大事な資産を安全に次の世代に渡すために、常日ごろから準備をしておくことが重要です。

文・J PRIME編集部

(提供:JPRIME

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