事業承継の最適な準備期間は10年前後といわれます。なぜここまでの期間を要するかというと、「お金の課題」と「人材の課題」を解決しながら、後継者に経営ノウハウをしっかり伝える必要があるからです。長期間かかるプロジェクトだけに、早めのスタートが成功の鍵。まずは、次に挙げる5つの対策から着手してみましょう。

事業承継の対策1「引退年齢の決定」

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(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

帝国データバンクの資料などにもとづくと、「高齢社長」に該当する年齢は60歳以上です。仮に引退年齢を65歳、準備期間を10年に設定すると、事業承継のスタートは55歳からになります。

引退年齢をあいまいにして社長の高齢化を放置すると、廃業リスクが高まります。具体的には、社長の体力の衰えや健康面の不安などによって、会社が弱体化する可能性があります。併せて、認知症の発症や突然死の懸念もあります。家族や従業員に負担をかけないために、老齢になり過ぎない年齢に引退を決める必要があります。

事業承継の対策2「後継者の決定」

引退年齢を決めるには、当然ながら後継者を決めなくてはなりません。しかし実際には、多くの中小企業で後継者が見つからず、廃業に追い込まれています。野村総合研究所の「中小企業の事業承継に関する調査」によれば、小規模事業者の廃業した理由では「後継者難」が半数以上を占めます。

それだけに、「後継者探し〜決定」のテーマは、逃げずに着実に進めていかなければなりません。具体的な後継者の選択としては「子などの親族」「信頼できる社内の人材」の他に、「知り合いに譲る」なども考えられます。

現在、子が会社員などをしていて「継いでくれるかはっきりしない」ケースも多いですが、そのまま放置するのはリスクがあります。早めに意思を確認してみましょう。

社内の人材に承継する場合は、「自社株譲渡の費用をどうするか」が障壁になりやすいポイントです。この部分で問題がある場合、後継者候補の待遇の見直しや、自社株引き下げ対策が必要となることもあります。

事業承継の対策3「相続に強いパートナー探し」

事業承継をリスクのない形で進めるには、専門家のサポートが不可欠です。核となるのは税理士、また状況によって、弁護士や不動産・保険のコンサルタントなどのメンバーを加えます。

顧問税理士や顧問弁護士が既にいる場合でも、事業承継に強いとは限りません。その場合は、セカンドオピニオン的に相談できる税理士などがいた方がよいでしょう。これらの専門家を探す方法としては「知り合いからの紹介」「ネット検索」「セミナー参加」などがあります。

事業承継を実行するには、専門家と定期的に対面コミュニケーションをとっていく必要もあるため、距離的に近い拠点の方にお願いするのが賢明です。

事業承継の対策4 「会社の資産状況の整理」

専門家に事業承継のことを相談しやすいよう、会社の資産状況を簡潔にまとめておきましょう。詳細資料の用意が難しい場合は、A4用紙1枚やメモ書き程度でも構いません。このような資料があると、「具体的にどのような対策が必要か」専門家がアドバイスしやすくなります。

事業承継の対策5「借入金の扱いをどうするかの検討」

運転資金を融資してもらっている場合は、「借入金の扱いをどうするか」が事業承継の障壁になることもあります。これについては、金融機関と粘り強くコミュニケーションしていく姿勢が求められます。特に現社長の自宅などを担保にしている状況では、慎重に進める必要があります。

冒頭でお話しした通り、「社長の引退年齢と後継者の決定」をワンセットで考えなければ、事業承継の準備はスタートできません。後継者が見つからない場合でも、この部分が明確になれば、M&Aなど他の手段への切り替えも早めにできます。日々の業務で多忙とは思いますが、まずはこの部分から手がけてみましょう。(提供:JPRIME


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