「世界に羽ばたくグローバルビジネスリーダーの養成」を基本理念に2006年開校したのが、愛知県の全寮制中高一貫校・海陽学園です。海陽学園は「日本のイートン校」と呼ばれることもあるように、その教育システムは同校をモデルにしています。
設立後10年あまりたった現在、海陽学園はイートン校の域に近づきつつあるのでしょうか?ハード(カリキュラム・教師陣・施設)とソフト(学校文化・価値観)の両面から検証します。
企業が全面的に支援する「エリート養成校」
海陽学園はその設立を中京圏に拠点を置く企業が主導したことで、当時話題を呼びました。
初代理事長にはトヨタ自動車会長の豊田章一郎氏が収まった後、2代目の現理事長を葛西敬之氏(JR東海名誉会長)が継ぎ、ホームページのメッセージボードにもJR東海・中部電力・トヨタの人事担当役員が名を連ねています。
そして学園の特徴である全寮制の運営にも、参加企業が大きくかかわっています。寮生は、フロアマスターと呼ばれる大企業から派遣された20代社員と共に生活します。彼らはキャリアや進路に関する相談役であり、日々の寮生活を守らせる指導役でもあります。
実際に寮の規則は厳しく、スマホの部屋持ち込みはできず、漫画・ゲームは禁止です。夜8-10時はフロアマスター監視の元で全員が机に向かう時間です。
高いと言われる海陽学園の学費ですが、学費・施設維持費の合計は118万円ですから、慶應義塾(普通部109万円)などとほぼ同じ水準です。ただし寮費・食費は159万円で、あわせると年間277万円に達します。
実際、学園長自身も新聞インタビューで「やり繰りできずに退学する生徒もいる」と吐露しました。そんな事情もあり、学園では学費免除の特別給費生受験制度も設けています。
高い進学実績
設立当初はメディアを賑わした学園も、その後は話題の最前線からは消えていきました。再び大きく取り上げられたのは2012年、第1期生の進学実績です。なんと卒業生101名のうち21人が東大・一橋・京大へ、51名が早慶へ、17名が医科歯科系大学へ進学しています。
1期生からここまでの実績を出す学校はかつてなく、まさに驚異的です。有名大学への合格実績を尺度とするなら、「海陽メソッド」は文句なしに実を結んだと言えるでしょう。
その後も継続して結果を出し続け、2018年度の進学実績は卒業生115名に対し東大合格12名、早慶も併せて36名、医科歯科系には37名が進学しています。
イギリス名士はみなイートン校出身
数多くのエリートを輩出してきたイギリスのイートン校は、燕尾服とシルクハットという独特の制服でも有名なパブリックスクールです。「ハリーポッター」のホグワーツ魔法魔術学校を思い出すとイメージが付くと思います。
イートン校といえば、愛子さまが短期留学するなど話題性にも事欠きません。英国首相19名を輩出した名門中の名門であり、ウイリアム王子、カンタベリー大主教、ボリス・ジョンソン・ロンドン市長などイギリス各界の名士はみなイートン校出身です。
海陽学園も進路実績を続けていれば、やがてイートン校と肩を並べられるかもしれません。
全国にそして世界に
愛知出身の方ならよくご存じの名港トリトン、名古屋港湾上を横切る伊勢湾岸自動車道上に掛かる3つの大橋です。その名をギリシャ神話に登場する海神にちなむこの橋は、赤白青にデザインされ、夜は季節ごとに変わるライトアップで彩られる、地元では有名なインスタスポットです。
レインボーブリッジ(798m)や横浜ベイブリッジ(869m)を遥かに凌ぐ全長2.6km(3橋合計)と工業地帯に彩られた壮観な夜景を誇るトリトンですが、残念ながら地元以外ではほとんど知られていません。
レインボーブリッジにあってトリトンに足りないもの、それはストーリーであり、そして物語を全国に発信するプロモーション力でしょう。
さて中京発のボーディングスクール海陽学園は、全国区レベルでその名をとどろかせることができるでしょうか。それは、今後の実績だけでなく巧みなプロモーション戦略にかかっています。
文・J PRIME編集部
(提供:JPRIME)
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