相続税対策というと、60代になってから取り組むイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、相続税対策は始める時期が遅くなるほど選択肢が狭くなります。財産を築いた人なら、30代や40代から相続税対策を始めたほうが有利です。

財産状況の整理と不動産の評価方法

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(写真= Mckyartstudio/Shutterstock.com)

努力して築いた財産を大切なご家族に遺すためには、早めに相続税対策を始めることが何より重要です。相続税対策は早く始めるほど選択肢が多く、リスクも小さくなります。60代や70代になってから慌てて相続税対策を始めても、大きな効果が得られない場合があります。先延ばしにせず、財産を築いたときから相続税対策を検討しましょう。

相続税対策の第一歩として、まずは財産状況を整理し、相続税のシミュレーションをしましょう。相続税の正確なシミュレーションは専門家に依頼する必要がありますが、財産状況の整理や相続税が発生するかどうかといった基本的なことは、相続税の仕組みを理解すれば自分でも確認することができます。

相続財産には、現預金・土地建物などの不動産・金や宝飾品などの現物・有価証券・美術品など、資産価値があるものはすべて含まれます。まずは種類ごとに現在所有している財産を洗い出し、一覧にまとめましょう。その後、それぞれの財産の相続税評価額を確認します。

現預金は、残高がそのまま相続税評価額となります。不動産は相続税法に定められた方法で評価します。建物の場合、毎年5月頃に送られてくる固定資産税の評価額をそのまま相続税評価額として用いることとされています。土地の場合、路線価に土地の面積を乗じて相続税評価額を計算します。路線価とは道路ごとに決められた価格で、国税庁のホームページで確認することができます。

相続税の基礎控除の計算の仕方

相続税は、相続や遺言で財産を取得したときにかかる税金です。ただし、相続財産の総額が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。そのため、まずは財産総額が基礎控除の範囲内に収まるかどうかを確認する必要があります。

基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出します。例えば、法定相続人が2人であれば基礎控除は4,200万円、法定相続人が3人であれば4,800万円です。

基礎控除の計算方法は、平成27年1月1日に現在のものに改正されました。平成26年12月31日以前は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で計算していました。税制改正によって基礎控除が大幅に引き下げられたため、以前は相続税対策が必要なかった人でも、対策が必要になるケースが増えています。

相続税が基礎控除を超える場合は、専門家に依頼して早めに相続税対策を始めましょう。相続税対策には生前贈与や養子縁組などさまざまな方法がありますが、安易に始めるとかえって遺族の間でトラブルが発生することがあります。家族の状況も含めて、親身になってアドバイスをしてくれる専門家を探しましょう。

法定相続人の考え方

基礎控除を計算する際に用いる法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。実際に財産を相続する人とは異なるため、注意しましょう。法定相続人には優先順位と法定相続分が定められています。

第一順位は配偶者と子で、法定相続分は2分の1ずつです。子が複数いる場合は、さらに子の法定相続分を分割します。第二順位は、配偶者と父母や祖父母などの直系尊属です。法定相続分は配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1です。第三順位は、配偶者と兄弟姉妹です。法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

法定相続分は相続税を計算や、遺留分と呼ばれる法定相続人の最低限の権利を守るために用いられる定めであり、法定相続分の通りに財産を分割しなければならないというわけではありません。

例えば、配偶者と子がいる人が、実際には父母や兄弟姉妹にも財産を相続したとしても、法定相続人はあくまで配偶者と子の2人です。基礎控除を計算する際は、たとえ財産を取得していても父母や兄弟姉妹を含めることはできません。

文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)

(提供:JPRIME

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