会社は何を求めているのか

人事評価
(画像= takasu/Fotolia)

なぜ、結果を出しているのに評価が低いのか?』の著者、西尾太さんは、人事コンサルントとして300社、1万人以上のビジネスパーソンと面談した「人事の超プロ」です。西尾さんによると、成果を出しているのに適切な評価を得られていない、「もったいない人」がたくさんいるとのこと。そんな人たちの共通点をひとつだけあげるとしたら……。

評価には好き嫌いがつきまとう

「売上目標を達成しているのに、なぜ評価が低いんだろう?」
「同僚より仕事をたくさんこなしているはず、もっと評価されるべきだ……」

程度の差こそあれ、人事評価に対して不満を抱いている人は少なくありません。

しっかりとした評価制度を持つ企業も多いはずですが、こうした不満がなくなることはありません。なぜなのでしょう?

それは、どのような制度設計をしたとしても、人事評価にはどうしても評価者の主観や好き嫌いが影響してしまい、100%客観的な評価をすることが難しいからです。西尾さんは多くの企業に対して「評価者研修」を行っていて、その際、できるだけ主観や印象を排するようにアドバイスするそうですが、人間が感情で動く動物である以上、それはとても困難なことなのです。

評価が低い人に共通する特徴とは

良し悪しは別として「人事評価は評価者の主観を完全には排除できない」という前提に立ったとき、評価が低い人というのは、評価者にマイナスの印象を与えている、といえそうです。西尾さんは著書の中で、評価が低い人たちのもっとも典型的な特徴をあげています。

それは、「自己評価が高い」ということ。

西尾さんの経験上、多くの会社の「人事評価会議」で問題になるタイプだそうです。このタイプは「自分は優秀だ」と思い込んでいて、周囲の評価とのギャップに気づこうとしません。

自分自身を客観的にとらえることができず、主観的な理解にとどまっている。周囲の雰囲気を察しない、空気が読めない。相手の反応を見極められない言動をとり続け、受け入れない。これらはすべて評価が低くなるNGな行動です。

(91ページより)

そのあげく「自分を評価しない上司が悪い、会社が悪い、制度が悪い」と責任転嫁します。

もちろん会社や上司に問題がある場合もあるでしょうが、完璧な人間なんてこの世にいないのも事実。どんな人にも苦手なことや改善すべき点があります。そこに気づくことができる人が、評価されるのです。

実際、多くの会社で高く評価されているのは、「自己評価の低い謙虚な人」や「適切な自己評価ができる人」だそうです。「自己評価が低すぎる人」は、やる気なし、と見られることがあるため注意が必要ですが、基本的に謙虚に自己評価できる人は好感を持たれます。

会社が社員に求めること

正しい自己評価ができない人の人事評価が低くなる理由が、もう一つあります。

西尾さんによれば、会社は社員に「変化」と「成長」を求めています。しかし、自己評価が正しくできず、自分の現状がわからない人は、何をどう変えていけばいいのかがわかるはずもないため成長する可能性が低い。したがって評価も低くなるのです。

なぜ、会社は「変化」と「成長」を求めるのでしょうか? それは会社が、給与とは、「社員が会社や世の中に提供した価値(=成果や行動)の対価」だと考えているからです。

会社は、年収300万円の人と1000万円の人に対して、まったく違う価値の提供を求めます。当然、昇給するごとに、会社が要求するレベルは上がっていくのです。それを表すのがコンピテンシー(成果につながる行動特性)です。コンピテンシーは評価基準そのものといえます。

たとえば、新人クラスに求められる重要なコンピテンシーの1つは「協調性」です。自分の意見が異なっていても、チームワークを重視する姿勢が評価されます。しかし、チーフクラスになると「主体性」が重視されるようになります。周囲に合わせるだけでなく、やるべきことを自ら考えて動くことが求められるからです。さらにマネージャークラスには、計画立案や人材育成など、組織レベルのマネジメント能力が問われることになります。

つまり、要求レベルに応じて「変化」することができず「成長」しない人は、昇給できないしくみになっているわけです。

変わることができるのは、自分の得意なことや苦手なことをよく理解して、行動を変えることができる人です。だから「正しく自己評価できる」ということが非常に大事なのです。

欠点や弱みも武器にできる

もし自己評価と人事評価にギャップがあると少しでも感じたら、たとえ不満であっても、いま一度自分と向き合い、客観視する努力をしてみましょう。自分のダメな面を認めるのはつらいことですが、直視しなければ変わることはできません。

西尾さんは、「一般的には欠点や弱みとされる性格的特徴も、視点を変えれば武器になる」といいます。

たとえば、「自分には決断力がない」と思っている人も、多くの選択肢のなかから答えを選び取れるように情報収集力や分析力を磨いていけば、「熟慮のうえ正しい意思決定ができるマネージャー」として頼りにされる存在になるかもしれません。

「頑固」であることは若いときには低い評価になりがちな特性ですが、自分を理解して仕事を続けていけば、妥協しない仕事ぶりを高く評価する人も現れるでしょう。

企業が敬遠しがちな「ストレスに弱い」という弱点は、人の気持ちが敏感にわかることの裏返しです。気配りが必要なヒューマンマネジメントに力を発揮できるはずです。

そもそも完璧な人間などいないのです。どんなに高く評価されている人でも、弱みや欠点は必ずあります。そこから逃げることなく、自分と向き合っているから、仕事の質が向上し、ますます高く評価されるのです。

なんでもできるスーパーマンになる必要なんてありません。会社もそんなことは求めていません。苦手なことがあっても、それに対処する方法を考えればいいのです。

(126ページより)

(提供:日本実業出版社)

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