CAMPFIREやBASEなどを創業、エンジェル投資家として数十の起業家に投資をしてきた家入一真氏。2018年の終わりに10代の若者を対象にしたコミュニティ「やさしいかくめい(革命)ラボ」を立ち上げた。なぜ氏は若者の「居場所」をつくり続けるのか。(聞き手・構成=濱田 優、写真=森口新太郎)

ひきこもりだった自分を救ってくれたのがインターネットだった

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(画像=森口新太郎)

――2018年は新たにVCを立ち上げられました。家入さんといえば、特に学生など若い起業家の支援に力を入れてこられたイメージがありますが、それはご自身の経験が影響しているとか。

半年前ほどに「NOW」というベンチャーキャピタルを立ち上げて、第1号で50億ぐらいのファンドで組成しました。以前の分とあわせると100社近く出資してきました。投資先は大学生起業家がほとんどですが、高校生起業家にも何社か投資が集まることもありますね。みな本当に優秀で、社会課題にもちゃんと目を向けて、テクノロジーでどう解決するかなんていうことを考えている。ファイナンスも自分なりに勉強しているし、大人顔負けの高校生もいます。

僕自身がいじめをきっかけに中2から学校に行けなくなって、10代後半はひきこもりみたいな状況だったんですけど、インターネットに救われたんですよ。社会との接続点だった感じで。その後に起業して、運よく最初につくったpaperboy&co.(現GMOペパボ)が上場できて、今度は起業で救われた。

進学も大事で尊いと思うけど、一方で進学・就職だけじゃない選択肢が生まれていて、それは喜ばしいことですよね。チャレンジをしようとする子、これから声をあげようとしている若い世代に対して、どういった選択肢――お金なのかもしれないし、人とのつながり、考え方みたいなものかもしれない――を提示できるかがこの数年のテーマですね。

――その中で最近、10代から20代前半の若者だけを対象にした「やさしいかくめいラボ」をつくられて話題になりました。

これはいわゆるオンラインサロンみたいなもので、参加は無料です。基本的に10代の何か新しいことをやりたいとか、学校に通っているけどどうしたらいいか分からないとか、通信制の学校に通っています、不登校ですとかいう子も含めて、悩みを話し合ったり、自分はこういうことを勉強しているよという共有だったり、起業準備や仲間募集だったり、そういうことができる場をつくりたかった。(取材の)4日前の夕方ぐらいに「興味のある子は連絡ちょうだい」と募ったら数時間で1300人ぐらいの応募があった。

いったん締め切ったんですけど。Discord(編注:ボイスチャットシステムが特徴のフリーソフトウェア。SlackやSkypeのような機能を持つ)を使っていて、その中に社会起業とか哲学とか宗教とか、いろんなジャンルのルームができていてコミュニケーションが生まれています。

――10代以外の大人は家入さんだけですか?

各ジャンルの専門家に10人以下でメンターに入ってもらっています。East Venturesの松山大河さんやALL YOURSの木村昌史さんとかです。

リターンが目的ならエンジェル投資なんかやらない

――家入さんにとっては起業そのものより、「起業したい」「何かしたい」という若い子たちの活躍の場をつくることが最優先という感じでしょうか。

そうですね。それを僕は“居場所”と呼んでいるんですけど、学校か家か、会社か家かという、居場所が少ない世界の中では、学校に行けなくなったり、会社でパワハラに遭って会社に行けなくなったりしたら、途端に居場所を失ってしまう。この居場所の少なさが、あらゆる問題の根源なのかなと思っていて。10代でひきこもっていた頃の僕が「こういう場所があったらよかったな」「こういう大人がいたらもっと違ったかな」と思うことを、逆に言うとできる立場なので、それを提供しているというのが……楽しいっていうのはありますね。

――そこをもうちょっと具体的に、どういう意味で楽しいんでしょうか?

よく「なんでエンジェル投資やるんですか」と言われるんですけど、リターン目的ではエンジェル投資なんてやらないですよね。結果的に成功してリターンを得ているケースはあるんですけど、エンジェル投資の気持ちは参加料みたいな感じですね。

例えば葬儀業界に興味があって僕が葬儀のビジネスを今の立場で立ち上げたり、ゼロから知識を得たりするよりも、葬儀業界の中で新しくベンチャーを立ち上げて、革新を起こそうとしている若い子に出資をする形で、ステークホルダーになって、その世界の勉強をさせてもらうほうが僕は相性がいいんですよね。参加料を払う形で業界の現状と課題とこれからみたいなことを学ばせてもらうというか。僕の知らない世界って、まだまだたくさんあって、特に世代が変わっていくと、今どうなっているかって見えなくなってくる。そうすると、若い子たちが今何を考えてどういったところに課題を感じていて、どういうアクションを起こそうとしているのかを学ばせてもらうという感じです。

家入一真(いえいり・かずま)
1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役社長に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など。

構成・濱田 優/MONEY TIMES編集部

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