ペイオフとは、金融機関が破綻したときに預金者の預金を保護する制度のこと。決済用預金は全額が、一般預金等は一定額が保護される。証券会社が破綻した場合は、ペイオフの対象になるのだろうか?

ペイオフ――金融機関破綻時の預金者保護の手段

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(画像=bluebay/Shutterstock.com)

ペイオフが実施された場合、保護の対象となる預金等は2つに分類される。一つは「決済用預金」、もう一つが「一般預金等」だ。預金の種類によって保護される範囲が異なるので確認しておきたい。

決済用預金については、預金保険法第51条の2(決済用預金に係る保険料の額)に定められており、

1 決済サービスを提供できること
2 預金者が払戻しをいつでも請求できること
3 利息が付かないこと

という3要件を満たす預金を指す。当座預金や利息の付かない普通預金、別段預金の一部(一時的な資金を保管するために設けられる預金科目)などがこれに該当する。これらの決済用預金は、ペイオフの際に全額保護される。

一般預金等とは決済用預金以外の預金等であり、外貨預金・譲渡性預金・金融債(募集債および保護預かり契約が終了したもの)等を除いたもの(預金保険法第51条より)が対象だ。一般預金等には、利息の付く普通預金・定期預金・定期積金・元本補てん契約のある金銭信託などが含まれ、定額保護が定められている。ペイオフで一般預金等が保護される金額は、1金融機関ごとに合算して預金者1人につき元本1,000万円までと破綻日までの利息等だ。

預金保険で保護されない一般預金等の1,000万円を超える部分については、破綻した金融機関の倒産手続きによって弁済金・配当金として支払われることになる。そのため、破綻金融機関の財産の状況に応じて、全額もしくは一部が払い戻される、または払い戻されない可能性もある。

なお、上記の決済用預金と一般預金等以外の預金、つまり外貨預金・譲渡性預金・金融債(募集債および保護預かり契約が終了したもの)などは、この預金保険で保護されないことを覚えておきたい。

ペイオフ対象の金融機関は?

預金保険機構によって預金者の預金等が保護される金融機関は、預金保険法第2条に定められている。対象は、日本国内に本店がある銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫・信金中央金庫・全国信用協同組合連合会・労働金庫連合会・商工組合中央金庫である。上記の金融機関であっても、海外支店は保護の対象外だ。外国銀行の在日支店または政府系金融機関も、預金保険の対象外なので注意したい。

日本国内に本店がある銀行には、都市銀行や地方銀行、第二地方銀行、ゆうちょ銀行、店舗を持たない日本国内のネット銀行、整理回収機構、外国金融機関の日本法人なども含まれる。

証券会社の口座にある資産はペイオフで保護されるのか?

預金保険は預金者を保護するための制度であり、ペイオフの対象になるのは前述の金融機関だ。よって、証券会社はペイオフ対象の金融機関には該当しない。

証券会社の投資者(顧客)については、預金保険とは別に、その資産を保護する目的で金融商品取引法のもとに設けられた「投資者保護基金制度」がセーフティネットとして機能している。

金融商品取引法第43条の2において、証券会社を含む金融商品取引業者等には資産の分別管理が義務付けられている。分別管理によって、証券会社が保有する資産とは別に、顧客の金銭は信託銀行に信託され、有価証券は証券保管振替機構で管理されるため、証券会社が破綻した場合でも顧客の資産に影響が及ぶことはない。

万が一、分別管理を怠っていた証券会社が破綻し顧客の資産を返還できない場合でも、投資者保護基金によって顧客1人につき上限1,000万円まで補償される仕組みになっている。

なお、金融機関の「預金保険制度」や証券会社の「投資者保護基金制度」と同様に、保険会社も保険契約者を保護するための「保険契約者保護機構制度」に加入していることを覚えておくといいだろう。

ペイオフの注意点と証券会社の投資者保護

ペイオフでは、同一の金融機関に同じ預金者名義で複数の口座を保有している場合、「名寄せ」されて、すべての一般預金等が合算される。そのため、複数口座に1,000万円を大幅に上回る一般預金等があると、破綻金融機関の財産状態によっては資産が払い戻されないリスクがある。心配であれば、複数の金融機関に資産を分散する、または預金以外の金融商品に投資するなど、資産の管理・運用方法を見直すといいだろう。

一方、証券会社に預けた資産はペイオフの対象外だが、証券会社による「資産の分別管理」と「投資者保護基金制度」の2重の備えによって顧客の資産は保護される。破綻した際の資産保全について不安を感じることなく、安心して証券会社で取引してほしい。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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