インステック(InsTech)が保険の世界を大きく変え始めています。AIなどの新技術の台頭、スマートフォンの世界的な普及が、保険の世界に新たなイノベーションを起こしています。今回は、インステックについて解説します。
インステックとは
インステックとは、InsuranceとTechnologyを組み合わせた造語です。保険の分野における新しいテクノロジー・イノベーションを指す総称です。
インテックの中でも台頭著しいのがAI(人工知能)を使ったインステックです。保険の世界は従来、保険料などの複雑な計算はすべて人間が行ってきました。特にアクチュアリーと呼ばれる保険料率の計算は非常に複雑で、専門の人材が相当の時間をかけて行ってきました。
そうした複雑で時間のかかる作業を、AIにやらせるケースが増えて来ています。AIにやらせる事で正確に、より確実な保険料率の計算が可能になっています。
また、保険商品の選定なども、これまでは人間が利用者の目的や用途に応じて行ってきました。保険商品は複雑で、保険マンの経験とスキルがモノを言う世界です。そんな複雑な保険商品の選定を、チャットボットにやらせるケースも出てきています。
インステックは欧米が一歩リード?
なお、インステックのスタートアップでは欧米が日本を一歩リードしています。ニューヨークに拠点を置くレモネードというインステック・スタートアップがあります。レモネードは、モバイル・ウェブベースのオンラインP2P保険を提供する会社です。P2P保険とはピア・トゥ・ピア保険の略で、保険者から集めた保険料を財源に共同運営される保険の事です。
レモネードの説明によると、これまでの保険会社は、保険者から集めた保険料を運用する事で収益をあげてきました。巨大な機関投資家と化した保険会社の利害と保険者の利害は相反の関係となり、保険会社は保険金の支払いを渋る傾向にありました。一方、レモネードは、保険者から集めた保険料をあくまでも保険者のお金として扱い、自らは一定の手数料を保険者から徴収するというビジネスモデルを採用しています。
同社のローコスト経営を支えているのがAIなどの新技術です。レモネードは保険料の計算や、保険への加入手続きそのものにAIを活用し、コストを最低限に抑えています。AI技術の進化が、今日においてレモネードという会社のビジネスモデルを成立させているのです。
日本におけるインステック
一方、日本におけるインステックの状況ですが、欧米にリードされているとは言え、何もしていないわけではありません。
アメリカのインステック・スタートアップでTrovという会社があります。Trovはスマートフォン、カメラ、家電などの損害保険をオンデマンドで提供しています。保険の申し込みや保険金の請求はスマートフォンかウェブでチャットボットへ行うのですが、ここでもAIが活用されています。
ブランケット方式と呼ばれる従来型の保険と違い、Trovの保険は特定の物品を対象に、必要な分を必要な期間だけかける事が可能です。今後損害保険の世界を大きく変える可能性があるゲームチェンジャーです。
このTrovに、ある日本の大手保険会社が出資をしています。Trovは現在、オーストラリアとイギリスで事業を展開していますが、同社のウェブサイトでは、まもなくサービスが始まる国の中に日本が含まれています。今のところ時期は未定ですが、インステックの波は、今後確実に日本にもやって来るのです。
インステックは私たちの暮らしをより豊かにする
AI、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの進化が進むと予想される今後、さらに多くのインステック・スタートアップが生まれてくるでしょう。P2P保険の世界では、シングルマザー向け所得補償保険など、これまでは考えられなかったような新たな保険も生まれてきています。インステックが、今後の私たちの生活を大きく変える事になるのは間違いないでしょう。(提供:J.Score Style)
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