「自分は運が良い」と思い込むのも大事

メンタルを正常な状態に戻すためには、他責をしないことも重要だ。

「会社を引き継いでから1年間は、莫大な負債を作った父を恨んでいました。問題行動を起こす社員も責めましたし、母や妻にも八つ当たりをしていました。

でも、他人を責め、被害者意識を持ったところで、何も良いことは起こりません。会社の経営が良くならなければ、ストレスやプレッシャーから解放されることはありません。

メンタルを正常に保つためにも、自分がコントロールできることと、できないことを分けて、コントロールできることに集中することが大切です。他責をするということは、自分がコントロールできないことに注意が向いているということです。

対人関係のストレスを抱えている人は多いと思いますが、他責では、そのストレスを解消することもできません。他人は、自分が望むようには変わってくれないからです。

自分がコントロールできるのは、自分の行動だけ。ですから、相手に自分が望む行動をしてもらうには、自分が相手に対してどう接すればいいのかを考えるべきです」

飲食店を経営する湯澤氏には、接客態度など、従業員に行動を改めてもらわなければならない場面もある。そのときも、他責にならないようにしている。

「その人がどういう考え方をしているのかは、変えることができません。ですから、考え方について、どうこう言うことはありません。『お店にとって、こういう行動が必要なのだ』ということだけを説明しています。

それで行動が改まらない場合は、『頼むから、俺のためにやってくれ』と言っていますね(笑)」

さらに、「自分は運が良い」と思い込むことも大切だと話す。

「スーパーでレジに並んでいるとき、自分の列が他の列よりも早く進んだら『自分は運が良い』と思う。私は7という数字が好きなので、ナンバープレートが77-77のクルマを見つけたら『自分は運が良い』と思う。そういうクセをつけています。

結局、イヤなことはイヤだし、つらいことはつらいんです。それでも、『乗り越えられる』と思えるようにすることが、正常なメンタルを保つことにつながると思います」

湯澤剛(ゆざわ・つよし)〔株〕ユサワフードシステム代表取締役
1962年、神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、キリンビール〔株〕に入社。国内ビール営業を経て、人事部人材開発室ニューヨーク駐在、医薬品事業本部海外事業担当などに従事。99年、創業者であった父の急逝により、会社を引き継ぐ。現在、神奈川県下で鮮魚居酒屋などの飲食店を経営。経営学修士、認定レジリエンス・トレーニング講師、神奈川県中小企業家同友会会員。著書に『ある日突然40億円の借金を背負う――それでも人生はなんとかなる。』(PHP研究所)などがある。《写真撮影:まるやゆういち》(『THE21オンライン』2018年12月号より)

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